先週末はずっと日本人口学会に出席していた。場所は,中央大学駿河台会館であった。美しい建物で,整備も行き届いていた。メインの会場である281号室は,東京大学山上会館の大会議室に比べて設備は劣ると思うが,広さと美しさは勝っていた。自転車で行ったのだが,周りは全部公道だし,前には自転車を停められなかったので,地下駐車場の隅に置かせてもらった。すぐそばにドトールがあって,学会中何度かアイスコーヒーを買いに行った。本屋街も近いし,買い物の利便性は東大より遥かに優れている。
さて,自分の発表があったセッションで人類学的集団の調査報告が増えてきて嬉しかったのもさることながら,今回の学会の目玉は,第11回出生動向基本調査であった。6日には一般にも報道されたが,この学会では5日に3題の発表があり,満員の聴衆を集めた。裏番組の歴史人口学のセッションも聞きたかったのだけれど,まあ目玉を聞き逃すわけにはいくまい。
一般報道で多かったのは,「姉さん女房の増加」と「女の子を希望するカップルの増加」を強調するものだったが,人口学的に面白い結果は,むしろ,「結婚後15〜19年夫婦の平均出生児数は最近25年間にわたって約2.2人で変化ない」ことと,「晩婚化・非婚化は進行中」である。つまり,日本における出生力低下は,やはり晩婚化によるのであって,出生力そのものが低下したのではないということが確認されたということである。前回(5年前)にもわかっていたことではあるが,その傾向が続いているというのが面白い。そのせいか,最近の女性タレントの早婚をもてはやす報道には政策的意図を感じてしまう。厚生省としては,やはり少子化を食い止めねばという意識が強いようだから。
なぜ少子化が国にとって困るかといえば,高齢化社会につながって生産的活動に従事する人の割合が相対的に低くなってしまうということと,総人口が減少して国力が低下するということが二大理由であろう。国力なんて低下してもいいではないかとも思うし,人口減少によって高齢化がひどく進行するのは一時的現象だから問題無いような気もするが,まあ不景気にはなるだろうし,政策担当者が不評を恐れて苦慮するのはわかる。
話を戻すと,結婚後15〜19年の夫婦の平均出生児数が変化ないといっても,実はそれより結婚期間の短い夫婦の出生児数は下がっているし,子ども数0の夫婦の割合も増えてきている(1982年の第8回では,結婚持続期間0〜4年の夫婦で38.9%,5〜9年の夫婦で4.3%だったのが,第11回ではそれぞれ42.6%,10.3%)。結婚後15〜19年の夫婦の平均出生児数が落ちないのは,出生児数3人の夫婦が増えたからであるが,結婚後10年未満の夫婦の理想子ども数の聞き取り結果では,2人の夫婦が増えて,3人の夫婦が減っていることを考えると,次回の調査ではおそらく有配偶出生力も下がるのではないだろうか。
他に面白かった結果は,「出会いのきっかけによって結婚時期は大きく異なる」である。学校で出会った夫婦では交際期間が長く,平均初婚年齢も若い。見合いの場合,出会いの時期はもっとも遅く,初婚年齢も高いが,交際期間は平均1年と最短である。注釈の,「妻の結婚年齢不詳,不整合を除く」というのが面白い。こんなアンケートでもさばを読む人っているのだなぁ。でも,たしかにこの項目おもしろいのだけれど,今回の分類には「ネットで」というのが無いのが不備だと思う(あ,ぼくは違うけど)。次回にはできるだろうか?