枕草子 (My Favorite Things)

【第108回】 出生力研究と忘年会(1998年12月16日;1999年10月22日追加)

昨日は論文抄読会のあと忘年会があった。昨日紹介された研究は,カリフォルニアにおける人口増加の大気汚染への影響というものと,モロッコのベルベル族集団における高い出生力が維持されてきたメカニズムを進化的な視点から探るというものだった。前者は今年のDemographyに載った研究なのだが,二次資料だけだし全部で数千の数値しか使っていないので,着眼点と結果はそれなりに面白いにしてもお手軽研究といえよう。日本でも同じような手口で検証することは容易だと思うので,業績を増やすにはいいかもしれない(やらないけど)。

後者は聞き取り結果だが,著者自身が聞き取りをしたのかどうかが不明でありデータの質はわからない(というのは,現地のアシスタントが使われる場合が多いのだが,出産に関わる要因などという微妙なことを聞き取るにはアシスタント間の違い,つまりinter-rater variationが問題になってくるからである)。ベルベル族といえば,サン=テグジュペリがアフリカで飛行場長だったときに,その酋長と友達になったために周辺諸部族からの襲撃に遭わずに済んだというエピソードが思い出されるが,この論文によると閉経後の女性の平均出産経験数は8人を超える高出生集団だそうだ。データは面白かったのだが,進化的な視点と言って生存時間解析での地域間差を見るだけというのは如何にも解析不足の感が否めない。

忘年会は門前仲町の「魚三」という店であった。この店は営団地下鉄東西線の門前仲町駅2番出口を右に出て徒歩30メートルくらいのところにあり,比較的便利なのにもかかわらず,異様に安かったので感心した。3階の座敷で行われたのだが,マグロ,タイ,ハマチ,アマエビなどの刺身類,タラバガニの煮たやつ,サザエの壺焼き,蛤汁,エビフライ,トマトとキュウリの切ったやつ,などなど食べきれないほどの料理と,ビールと日本酒が十分にあって(ちなみに当研究室の人々のアルコール消費量はかなり高い方であると思う),有給者6000円,学生3000円で充分だったという話だ。これから忘年会を企画している人にお薦めしたい店である。幹事の修士課程1年生2人に感謝! 

ところで,さっき懸案事項だった書評掲示板のバージョンアップを完了し,掲示板開発室(1999年10月よりCGI開発室と改称)に開発経過を掲載した。しかし最近忙しくて全然本が読めないので,なかなか書評を追加できないのが辛いところだ。システムが内容に先行するのは本末転倒というべきか,あるいは用意周到というべきか。ちなみに忙しいのは,来週の講義の準備と,原稿の執筆締め切りと,年明け早々に広島で行われる予定の英語での発表準備(感染症の確率モデルのセッション)による。論文も書き進めなくてはいけないのだが,なかなかそこまで手が回らないのはストレスたまるなあ。


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