枕草子 (My Favorite Things)

【第163回】 Windows2000の憂鬱(1999年9月17日)

いつの間にか,不忍池のハスの花もほとんど散ってしまい,後には平べったい逆円錐型の子房(だろうか?)が残っているだけである。秋はいつもこうして知らぬ間に訪れている。

去年の冬,コアタイムを午後に取るという宣言をしていたのだが,どうも思ったように能率があがらない。午後だとインタラプトがかかるのは避けがたく,また,昼食後の眠気というものもある。人類生態の人口密度の経時変化も勘案し,午前中をコアタイムにして論文を書くことにした。

ところで,今日の主題は,またもコンピュータにはまったということである。振り返ってみれば9月に入って間もない頃,Windows2000 β3 Corporate Preview Programなどといって,2000円でWindows2000のβ版を試用できるという記事を見つけてしまったのが運の尽きだった。以前から雑誌記事などではWindows2000について「サーバはカスだが従来のNT WorkstationにあたるProfessionalは使える」「Windows98より速くて安定している」などと書かれていたので,早く使ってみたかったのだ。ぼくの常用デスクトップマシンはメモリを256 MB積んでいるAMD/K6-2の400MHzマシンであり,Windows98ではメモリがもったいないなあと常々思っていた,ということもある。もちろん,これはMSの罠である。例えば,Officeなんてものは機能的には4.2くらいで十分だったのに,罠にはまった人たちがバージョンをあげて添付ファイルを送ってくるし,罠にはまったハードウェアメーカがPower Point 95からでないと出力がきちんとできないようなプリンタドライバしか提供しなかったりするもので,しかたなく95にはしたものの,断じて97や2000にはせずに徹底抗戦してきたのである。しかし,OSは違う。他人と交換するものは何もないので,より高速で安定したものを求めるのはしかたのないところなのだ(サーバはセキュリティの問題があるから別だけれど,クライアントマシンのOSだし)。早速WEBで注文(カード決済)して,待つこと10日ほど,14日の夜に届いたのである。

15日は休みだったので,昨日16日,午前中は上記のごとく論文を書き,午後,カリキュラム委員会なるものが終わってからWindows2000へのアップグレードを始めるに至った。もちろん,アップグレードの前には,データファイルのバックアップをとるのは常識である。ところで,バックアップといっても,こうファイルが多量になるとただごとではない。WORKディレクトリやMAILディレクトリは640 MBを超えていたので分割しなくてはいけなかったし,Cドライブに入っているWWWCの設定なんてものもある。WORKディレクトリは,いつもVAIOと二重化しているのだが,こういうときは,安全のため静的なメディアにも取っておくのだ(もっとも,後にして思えば,全部tar.gz圧縮してsv1のRAIDドライブにぶちこむという手もあったし,その方が早かったかもしれない)。手持ちのCD-RWとMOをフルに使ってバックアップが完了したのは21:00近かった。それからインストールを始めたのだから,研究室泊まりになったのは当然といえよう。

最初,ドライブにCD-ROMを入れると,「すべて自動で30-45分かかります。3回再起動されます」という感じのメッセージが出てくるのだが,もちろん全自動のわけがないのだった。なにせ正式リリースでもバグが多いMSのソフトのβ版なのだから。一度目の再起動でいきなり引っ掛かる。どうやら,SCSIのCD-ROMからbootしようとして引っ掛かっているらしい。SCSIのBIOS設定が,メディアが入っているとそこからブートを試みるとなっていたのが悪いのだろう。再起動のたびに一旦CD-ROMを抜き差しすることでこれは解決し,2時間くらいで一通りのインストールは完了した。

しかし,自動で認識されないデバイスがたくさんあるのだ。USB経由のコンピュータ接続ケーブル,EZ-Linkはマイナーだから仕方ないとして,CanonのCanoScan 300DXなんていう,わりと普通のスキャナまでドライバが無くて使えないのだ。痛かったのは,I.O.DATAのグラフィックカード/TVチューナカードGA-ZXTV8がnVIDIAのRIVA128ZXとしてしか認識されなかったことである。これではテレビのキャプチャができないが,まあ研究には実害がないので良しとしよう。以上3つはどんなに探してもドライバがなくて諦めたものたちだが,プリンタの設定にも手間取った。ぼくの常用デスクトップはローカルでもLBP-310がつながっているが,それは厚紙に印刷するとき専用で,いつもはPC-UNIXのsamba経由でLBP-A309GIIに出力しているのである。これまでのsamba2.0.0では駄目で,結局sambaを2.0.5aにアップグレードする必要があった。もちろん,パスワード関係も面倒であるが,この辺を書き出すと際限ないのでやめる。

ともかく,明け方までかかって,一応使える状態にはなった。スキャナとEZ-Linkは,そのうちドライバが出るであろうから,それまでは待とうと思う。しかし,考えてみると,何日か前には,Compaq C for Linux on Alphaのインストールなんてこともしたのだし,そのほかにも,学生実習の水のテキストの全面的改定とか,Yahooから来る人が多いので人口学のページに大幅な加筆をした,なんてことを思い起こせば,相変わらずコンピュータに使われているような気がするのだ。いかんなあ。


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