枕草子 (My Favorite Things)

【第569回】 ほたる祭り(2001年6月24日;26日追記)

辰野ほたる童謡公園案内板

朝食をとってから,なんやかやと家事をしたり,朝風呂に入ったりしているうちに雨が止んだので,どこか外にでかけよう,と子どもたちが騒ぎ出した。せっかく信州に住んでいるのだから,思い立ったが吉日とばかりに,最近は午後からだろうがなんだろうが,電車と徒歩,あるいは自転車で行けるところには,さっと出かけることにしている。

手元の情報を集めると,ちょうどピークらしいということで,辰野ほたる祭りに行くことにした。長野市内でも見られないことはないのだが,せっかく近いのだし,噂に聞く蛍の乱舞を見てみたいと思ったのだ。

早速vaio-c1をダイアルアップ接続し,WEBでこのところの目撃数の変化を見ると,去年より若干早いようで,既にピークは過ぎかけているようにも思ったが,手元のガイドブックによれば「ほたる童謡公園」(案内図が右写真)という親水公園もあるようなので,夕方からそこで遊んで,蛍を見て帰ってくればちょうどいいと思われた。

長野駅に着いたのは13:00頃だった。みどりの窓口で信州ホリデーパスを買い,13:11発の松本行きの各駅停車に乗った。この切符は,1日しか有効期限がないのが欠点だがかなり広い区間を乗り降り自由で2340円という優れものである。松本での最短の乗り継ぎには間に合わなかったので,15:05発上諏訪行きの各駅停車が出るまで,30分以上の待ち時間ができてしまった。昼飯がまだだったので,改札を出て駅ビル地下の京樽で巻き寿司を何本か買った。早めにホームに戻ると,ちょうど上諏訪行きのドアが開いたばかりだったので,4人がけの席に座って昼食をとった。

次の乗り換えを塩尻にするか,岡谷にするかが問題だったが,ちょうど通りかかった乗務員に聞いてみたら,岡谷で乗り換えた方が5分ほど早く着くという。塩尻で7分も停車していたのはなぜだか知らないが,岡谷で乗り換えて辰野に着いたのは,松本駅で乗務員から聞いたとおり,15:55だった。地図では近いのに何で50分もかかるのかと思ったが,停車時間が長いのだった。

松尾峡ほたる観察地全景

辰野駅からは,普通に歩けば10分もかからずに「ほたる童謡公園」に着く。しかし,途中の道の両脇が田んぼで,オタマジャクシがたくさんいたり,ウキクサが漂ったりしていたので,いちいち息子が立ち止まって覗き込むので,着くだけで30分近くかかった。ほたる童謡公園に着いたら着いたで大騒ぎで,水路に入ってトノサマガエルを追いかけたり,走り回ったりと,無尽蔵のエネルギーを全開にしてはしゃいでいた。色とりどりの菖蒲が咲き乱れる湿地帯も整備されていて,ごく近くまで寄って見ることができる。折から射しはじめた柔らかな陽光の下で,夢でも見てるんじゃないかというような美しさである。ひょうたん池の周りには,ビニールシートを敷いて既に宴会モードに突入している中高年のグループがあったりして,ああ,お祭りなんだな,と思えてくるのだが,一方,対岸の松尾峡に整備されたほたる観察地(右写真)は,まだ人影も少なく,ほたる見物が夜のイベントであることを思い出させる。

とてもいい環境だったのに,一つ残念だったことは,ゴミを燃やすような臭いが18:00頃まで漂っていたことである。市街地の方で煙があがっていたので,ゴミ処分でもしていたのだろうか。ほたる観察地としてここを整備するために30億円という金がかかったという話を耳にしたが,そこまで金をかけたのなら,ついでに大気環境対策もしたら良かったのにと思った。(26日追記:しっぽさんという方からメールを頂き,南信パルプ工場からの廃気のせいらしいことがわかった。地元でも嫌がられているという話だ。あの臭いでは嫌がられて当然だと思う。情報ありがとうございます>しっぽさん)

18:30頃に薄暗くなってきたのに合わせて対岸に移動し,蛍観察に備えた。ほたる保護地のようなところの周りにずらっとカメラの列が並ぶ。ところどころに,フラッシュは焚かないでください,と夜光塗料で書かれた看板があるが,時折フラッシュを焚く阿呆がいて,周りの人から注意されていた。中心部には,許可を受けた人以外は撮影できない(正確な文言は忘れた)という看板もあり,そこはごつい三脚が林立し,高級そうな一眼レフの展覧会のような雰囲気だった。19:30頃すっかり暗くなると,最初のうちは草の間でゆっくり点滅を繰り返していたゲンジボタルたちが,空中を舞い踊りだした。やや緑っぽい光が,時折強くなる。何千という蛍たちは,時間が経つに従って動きが活発になるようだった(マルチーズで撮った動画=640x480, 15秒=hotarudance.mpg,2348056バイト静止画1360x1024,37068バイト)。息子の指に2回もとまってくれたのは,最高のプレゼントだったと思う(娘が,何でおにいちゃんにだけ来るの? と怒っていたが,こればかりは仕方あるまい)。

夢中になって,だんだん増えてくる蛍の光を追っていたのだが,ふと時計をみると20:30近かったので,慌てて帰途に着いた。光の舞はだんだん高く広くなってきていたところだったので,後ろ髪を引かれるような思いだったが,20:59辰野発長野行きの快速に乗らないと家まで帰り着けないので仕方なかった。地元の人たちや自動車で来た人たちは,これから蛍を見に行くようなのが羨ましかった。

駅前でローメンという名のソース焼きそばとラーメンの中間的な不思議な食べものを買い,電車の中で食べた。やたらに途中駅での停車時間が長く,長野駅に着いたのは22:50だったが,途中ずっと眠っていけたので,この電車は正解だった。長野電鉄に乗って家に帰り着いたのは23:30近く,疲れたといえば疲れたのだが,楽しい休日だった。



前【568】(同窓会(2001年6月23日) ) ▲次【570】(無駄(2001年6月25日) ) ●枕草子トップへ