Top

個別メモ

Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.

【第1347回】 長旅1日目(2009年6月12日)

フェーズ6宣言
5:30起床。朝刊トップ記事は,WHOのフェーズ6宣言だった。南半球での広まり方を受けて,香港flu以来のパンデミックを宣言したのは定義から当然だけれども,2007/2008冬にはごくわずかだったのに2008/2009冬には日本での流行の大半を占めるに至ったタミフル耐性のAソ連型だって,あるいはワクチン株として使われていたA/Brisbane/59/2007(H1N1)類似株とか,A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)とかA/New Caledonia/20/99だってH1N1だったわけで,もちろんantigenic driftで生じた株だったから定義から言って新型ではないわけだが,広まり方という意味では大陸を越えて広まったには違いないので,例えばあれらに比べて,現在感染拡大中の新型株の広まり方はどれくらい速くて広いのか(20世紀のパンデミックが6〜9ヶ月かかって全世界に広まったのに比べて速いということは示されているが,交通網の発達が前世紀の比ではないので,むしろ欲しいのは,季節性株との比較だと思う。先日聞いた話だと2.5倍程度?)を示してくれると,なぜWHOが事態を重く見ているのかがわかると思うが,そういう情報は新聞記事にはなかった。また,押谷先生が先月と同じく,若者に重症例が多いので季節性インフルエンザとはまったく違う病気だという主旨のコメントをされていたが,一般の人は,なぜ約500例に至った国内感染者の中で重症例が皆無なのか,納得しがたいのではないだろうか。確率0.2%の現象であっても,500例の中では1例も起きない可能性は0.998の500乗で,約37%はあることだから,偶然まだ重症例が出ていないだけであっても不思議はないことは知っておくべきだろう。しかし例えば重症化率が1%もあるのに500例中重症例が0である可能性は0.7%未満(0.99の500乗は0.00657)なので,絶対値としてそれほど重症化しやすくはないらしいといえるだろう。押谷先生も,せっかくコメントするなら,リスクコミュニケーションとしては,海外データでいいので(ただし発生当初のメキシコは除いて),若者の重症化率が季節性インフルエンザに比べて何倍だから注意が必要なんだとコメントしてくれれば誰でも納得がいくだろうに(調べてもよくわからないのだが,これも先日聞いた話からすると1.5倍程度か?)。そうした納得の上で,公衆衛生的な政策をどうするかということを考えるべきであって,なし崩し的に物事が進んでいくのは気持ち悪い(と多くの人が感じていると思うのだが,どうだろうか)。なお,WHOの声明の中では,

We know that the novel H1N1 virus preferentially infects younger people. In nearly all areas with large and sustained outbreaks, the majority of cases have occurred in people under the age of 25 years.

In some of these countries, around 2% of cases have developed severe illness, often with very rapid progression to life-threatening pneumonia.

Most cases of severe and fatal infections have been in adults between the ages of 30 and 50 years.

の部分が季節性インフルエンザとの違いを説明していると思うが,せっかく数字は出していても,これだけでは一般の人は納得しがたいと思う。最初の点は,若者の相対的なmobilityの高さによる初期感染機会の多さで説明がつくかもしれない。2番目の点は日本には当たらないし(500例中0と100例中2の頻度は有意に異なる)その理由もわからない。3番目の点は,日本ではまだ症例不足でわからない。そういう意味で,日本での報道は,むしろ上記2点を説明してくれた方がいいと思う。
その他朝刊記事から
朝刊の中では,駒大苫小牧で田中将大投手(昨日ドラゴンズに勝ったのは憎たらしいのだが,やはり凄い投手だと思う)と同学年で外野のレギュラーで,米国のCollegeに留学していた鷲谷修也選手がワシントンナショナルズからドラフト指名されたという記事も目を引いた。ご本人のブログにも書かれていたが,米国のCollegeの卒業式でスピーチをしたそうだから,きっと充実した留学生活だったのだろう。応援したいと思う。
今後の予定
これから日曜深夜まで帰宅しないので,自転車でなく長野電鉄に乗ろうと思ったが,待ち長かったので歩いているうちに長野駅に着いてしまった。往路あさま510号。昨夜カバーした式服は,長野駅のコインロッカーに入れた。今夜長野駅に着いてから夜行バスに乗るときに取り忘れないように気をつけねば。ともかく,明日が日本人口学会で関西大学,日曜が義弟の結婚式などで東京と,完全に土日の予定が詰まっているので,講義準備は確実に今日中に終わらせておく必要がある。歯科受診もあるし,このボサボサの髪で結婚式に参列するのも気まずい(それ以前に,学会参加にも気まずいくらいだ)から,歯科受診後に直接さんたくに寄って散髪してから新前橋に向かうことにしようと思う。
某査読
講義資料作りよりも先にしなくてはいけない仕事ができてしまった。メールで某査読の催促が届いたのだ。丁寧に読むといくらでも細かく指摘したい点はあるのだが,前回の査読で指摘した本筋には答えてくれたのでまあいいか,と思いつつ,英文で回答を打って送信した。

前【1346】(講義資料作りの続き(2009年6月11日) ) ▲次【1348】(旅路の果て(2009年6月15日) ) ●Top

Read/Write COMMENTS

Notice to cite or link here | [TOP PAGE]