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個別メモ

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【第1468回】 システムとしての整合性(2009年11月26日)

日常
6:00起床。ゴミ処理・ゴミ出しを含む様々な家事を1時間ほどしたので,往路あさま510号にはギリギリ間に合った。
「ポメラ」DM20
/.Jのスレッド。うーん,工人舎PMより重いからなあ。もちろん,電池駆動という点で,長期フィールドワークには最適なわけだが,長期出張が不可能な勤務形態であってみれば,ポメラよりもむしろPM(2に期待中)と折り畳みBTキーボードという組み合わせに魅力を感じてしまう今日この頃なのである。
インフルエンザウイルスの分類
このところ,三中信宏『分類思考の世界:なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』講談社現代新書,ISBN 978-4-06-288014-5(Amazon | bk1 | e-hon)を読んでいる。相変わらず古今東西縦横無尽に話がつながっていくのは凄いと思うが,前著『系統樹思考の世界』よりは,つながりを追いやすいように感じるのは慣れか? 各章のタイトルのリズムが良いのと,日常から非日常を経て形而上へというジャンプの仕方もこなれているように思うので,そのおかげかもしれない。本書の結論というか着地点は,「種」を発見するとか「分類」を構築することが「パターン認識」である(p.299)と喝破し(注:中澤の趣味としては,patternは「パターン」でなくて「パタン」と表記したいが),「種の実在」に引導を渡したことだと思うし,その点は得心がいく。
ただ,「分類」がヒトに備わった本能のようなものであるとしても,それがヒトの世界認識のために役に立つことは確かだろう。1つ1つの事象が個物としてしか認識できなければ,我々はまともに他人とコミュニケーションできないはずだ。そこで思うに,ある分類体系が多くのヒトに共通するパタン認識として意味をもつためには,同じところに分類されたものは,できるだけ同じ性質をもっている必要があるのではないか。
この視点からすると,インフルエンザウイルスの分類はまともに機能していないと思う。つまり,「季節性」のA型インフルエンザウイルスと「新型」のA型インフルエンザウイルスが,同じH1N1という分類に属していながらも感染力や病原性などに大きな違いがあるというのなら,HA(hemagglutinin)が16亜型,NA(neuraminidase)が9亜型あって,それぞれ1番目の亜型からなるというH1N1という分類は,機能に関して内部の共通性を欠いた分類だと言わざるを得ない。
そもそも,HAはホスト細胞表面の受容体であるシアル酸に結合することによって細胞内への侵入の最初の段階を果たし,NAは細胞内で増えたインフルエンザウイルスを細胞表面のシアル酸から切り離して次の細胞へ送り出すところで主に働いていて,ともにウイルスvirionの表面にあり,そのうちHAがホストの抗体の主な標的となるため,感染力は主にHAの亜型によって決まると考えられている。HAとNAの亜型によってインフルエンザウイルスを分類することは,その意味では妥当なのだろう。
問題は,同じH1なのにヒト由来と豚由来で大きく異なり,しかも同じヒト由来のH1でも多様性があるという点にある。「新型」は,『PB2とPA分節は北米の鳥ウイルス由来,PB1分節はヒトのH3N2亜型ウイルス由来,HA(H1),NP,NS分節は古くから豚で蔓延していたウイルス由来,NA(N1)とM分節はユーラシアの鳥インフルエンザウイルスが豚に適合し蔓延していたウイルス由来,という四種類のウイルスが遺伝子再集合を起こして生まれたもの』(出典:河岡義裕,堀本研子『インフルエンザ パンデミック:新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-257647-5(Amazon | bk1 | e-hon),pp.81)であって,豚のH1とヒトのH1は大きく異なっているとのことだ。素人考えだが,それなら,HAの亜型を16種類に限らず,もっと増やせばいいのではないだろうかと思う。少なくとも,豚のH1の主なタイプをH1s,ヒトのH1の主なタイプをH1hと書くことにするだけでも,「新型」などという一時的にしか通用しない表記にする必要がなくなり,分類体系として有用になるだろう。難しいのは,先に書いたように,ヒトのH1と言っても毎年のantigenic driftがあって,細かく見れば多様だという点である。つまり,どこまで細かく分類すれば効率的なコミュニケーションができるかということだ。
Deem MW, Pan K (2009) The epitope regions of HI-subtype influenza A, with application to vaccine efficacy. Protein Engineering, Design & Selection, pp. 1-4. [doi:10.1093/protein/gzp027]によると,ヒトの免疫系はHAタンパクの5つのエピトープ部位(AからE)に主に反応し,より古く抗体マッピングが行われたH1のエピトープ(AからE)が認識するアミノ酸配列は,H3のエピトープ(AからE)が認識するアミノ酸配列よりずっと短くて不完全であって,「1918年から2009年のH1配列は,元々同定に使われたエピトープの外側に多くの変異部位があることを示している(Alignment of H1 strains in 1918-2009 indicates many mutation positions outside the originally identified epitopes.)」とのことである。このことからDeem and Panは,H3のエピトープを使ってH1のエピトープをマッピングし,豚H1の多くのstrainの系統樹を描いて,これまでの抗体マッピングによって同定されたものと概ね一致すると書いているけれども,むしろ,もっと長いエピトープを使ってH1の下位分類を作ってしまう方が,分類体系としては合理的ではないかと思う。practicalには,ワクチンの交差反応性がある基準値より低いものは別の亜型とみなすとしたらいいかもしれない。この辺り,ウイルス学の専門家はどう考えているのだろう?
来週の統計演習準備完了
地域保健実習の相談に来た学生への対応をしたり,オセアニア学会の新入会員のアドレス登録作業をしたり,教室セミナーでインドネシアからのvisiting researcherであるアジェン先生の話を聞いたりといったことで何度か中断したが,基本的にずっと補足資料(かつてweb上にメモした,multcompライブラリを使ってDunnettの多重比較をする方法の説明に加筆修正してLaTeX化してpdfにした)と課題を作り続け,終わってみたら20:00を過ぎていた。ばてたので帰ろうと思う。
タワレコ
高崎に20:55頃着いたので,次のあさま号が出る21:27まで暫く待ち時間があって,久々にタワーレコードに寄ってみた。実はSaintVoxとWinter CelebrationとSwimming Dancingはずっと購入予定だったのだが(で,SAWAのCDは,LABI1には置いてないので,タワーレコードに行かないと買えないのだ),ChatmonchyのDVD第4弾であるRestaurant Dessertがあるのを見つけてしまったので,ついこれも衝動買いしてしまった。SaintVoxは美人アーティストということを前面に押し出していて,狙いすぎな気もするが,たぶん悪くはないだろう。復路あさま549号。

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