Index

Handout for the Department Meeting 19991206


Marlowe, Frank (1999) Male care and mating effort among Hadza foragers. Behavioral Ecology and Sociobiology, 46: 57-64.

*Hadzaはタンザニア北部に住む人口約750人(1997年)の狩猟採集民で,ユタ大のHawkesとO'Connell,UCLAのBlurton-Jonesによって長い間調査されてきた。Marloweはハーヴァード大学人類学教室でBlurton-Jonesの弟子。

背景(1):
進化生態学的「父性」〜Trivers(1972)「育児と婚姻のトレードオフ」
背景(2):
狩猟採集民Hadzaの研究:1966-67にIBPの一環としてWoodburnらが研究開始。Blurton-Jones,Hawkes,O'Connellらの総合的研究によってフォローされている。
目的:
Hadza男性(生業は蜂蜜集めと弓矢狩猟)の繁殖戦略として,子どもへのケア(直接,間接)と婚姻(一夫多妻婚は稀だが,離婚が多くserial monogamyが普通)を検討。
仮説(1):
年齢や居住関係が同じなら養子よりも実子のケアに時間をかける
仮説(2):
婚姻機会【[1]キャンプ内の再生産年齢(15-45)女性全員の人数,[2]未婚のそれ,[3]再生産年齢(18-60)男性1人当たり】が増加するほど実子へのケアが薄くなる
対象:
狩猟採集生活を続けているHadzaほぼ全員である223人(表1)。実子養子の区別は何通りもの方法で確認(DNAチェックは未実施)し,一致しなかったのは1例のみ。
方法(1):
日の出から日没まで1時間ごとの走査サンプリング(=スポットチェック)を1年間,34312オブザーベイション。その間,12人から108人と集団サイズは変動。主に,キャンプの在不在,子どもとの近接性,採集時の行動に適用し,キャンプ内での行動の詳細には適用しない。
方法(2):
8歳以下の子どもと同居する男性全員32人について,30分間の追跡調査をして毎分ごとの1-0サンプリング。日中を4時間ずつ3区分,日没後夜間4時間を第4区分として,各区分少なくとも1回の追跡を実施。全オブザーベイション数は14820。
ケア行動の評価:
直接ケア行動は,予備調査の行動カタログから(1)面倒をみる(運ぶ,抱く,きれいにしてやる,食べさせる,宥める),(2)遊ぶ(弾ませる,追いかけっこをする,取っ組み合う),(3)意思の疎通(話す,聴く,食物以外の交換),(4)近くにいる(3メートル以内で他のことをしていない),(5)接触,を選択。1分以内に複数の行動がありうるので排反ではない。間接ケア行動として資源の獲得は,男がキャンプに持ち込む資源を秤量し,8歳以下の子どもの人数で割って評価。肉の分配は世帯を超えて行われるので別扱い。
結果:
他の狩猟採集民との比較(表2),子どもの傍で眠るので親密性は高い。直接ケアは生物学的父性故か?(図1) 年齢と子ども数をコントロールしても実子と養子の間に有意差あり。婚姻機会と実子への直接ケア(従属変数としては,子の年齢からの直接ケアへの回帰の残差を合計して実子の人数から回帰した残差「per unit investment」を採用)には負の相関(図2)。資源獲得については,養子のない男の方が1人当たり総カロリーについても肉によるカロリーについても有意に多く持ち帰っていたし(但し,資源の減少を反映してHawkes et al., 1991の報告値よりずっと低い),養子数と獲得カロリーは負の相関(子どもの年齢と世帯内総子ども数をコントロールしても,実子の得るカロリーの方が養子が得るそれより有意に多い)。資源獲得と直接ケアには正の相関が見られる場合すらあったので,間接ケアと直接ケアにはトレードオフはない。