枕草子 (My Favorite Things)

【第388回】 環境学（2000年9月20日）

• 今朝は子どもたちがコーンフレークだったので味噌汁を作る必要がなく，洗い物だけ。最近のニュースで気になるのは，浅間山近辺で地震が増えているということだ。三宅島なみの噴火が起こったら，ぼくの通勤路は大打撃をうけるだろう。大噴火に至らないことを祈るのみである。往路，あさま２号に乗って，そんなことを考えた。
• 研究室に着いてメールをチェックしたら，外務省によるソロモン諸島の危険度判定が変わったという知らせがあった。他州の危険度は４のままなのに，ホニアラの危険度が５から３に下がったということである。実情はといえば，空き巣狙いが横行していて決して安全ではないらしいのだが，一応GRA (IFM)とMEFの間では停戦が続いているので危険度を下げたのだろう。今後どうなるかについては油断できないが，良い方向には向かっているように思う。
• 午前中は東京都水質センターに伺って学生実習での見学の相談をしてきた。いろいろ面倒くさいお願いをしたのに，快く引き受けていただけて感謝している。教育内容というのは年々良くなっていくことが望ましいので，去年よりも今年の方が充実するのは当然だが，あれだけいろいろな機器を見られる機会は滅多にないと思うので，学生諸君にも真剣に見学して欲しいと思うのである。
• キッチンジローで弁当を買ってから，龍岡門を目指して自転車を漕いでいたら，途中の魚屋の店頭で店主らしい人物が魚をさばいていた。実演販売か？　ほか弁でご飯を買って，ここで鯵のタタキをつくってもらって買えば，キッチンジローの弁当よりも得かもしれないなあ，などとふと思う。
• 龍岡門の前にある広報センターのところにポスターが貼ってあって，今日の16:00から農学部に新しくできた弥生講堂一条ホールで，環境学絡みの講演会があるらしいことが目に付いた。もともと人口大事典編集委員会に出席する予定が入っていたのだが，先日メールで連絡があって，ヒラ幹事は出席しなくても良くなったので，今日の午後なら，聞きに行くのは不可能ではない。これで行かないという法はあるまい。
• 行ってみたら，新領域創成科学研究科環境学専攻による第３回ＦＳフォーラム「21世紀のあるべき環境を目指して-環境学の構築と役割-」というものだった。広報もほとんどなかったし（専攻のWEBサイトにも情報がなかった），予想通り内輪の人が多いようだった。つまり，専攻内部での意思疎通を目指したフォーラムのようである。あわよくば関心をもった一般の人にも何を考えているのかをわかってもらおう，という意味合いで公開されているのだろう。しかし，なんというか，ここで語られた程度のことは，環境自由大学　青空メーリングリストみたいな場を作って専攻内部で煮詰めておくべきなのではなかろうか（ていうか，あれで全部なら，青空ＭＬの方がずっと「環境学」というフレームとして進んでいると思うぞ）。そこから先の一歩を期待したくて聞きに行ったのに，ちょっと期待はずれだった。最後の発表者が，人文社会科学の自然科学とのつきあい方なんていうものだから，学生がフロアから，使われる言語が不統一であるのはどうするのかと，たぶん「知の欺瞞」的な問題を意識した質問をしたのに，明確な答えがなかったのにも不満が残った。循環型社会のフレームとしては先端研の安井至さんの方がずっと進んでいるし，人文社会系の話も，ぼくも参加している未来開拓大塚プロジェクトの方が体系ができているように思った。本当にあれだけだったら，新専攻としての存在意義が問われるのではないか？　もちろん，本来の個別分野では優れた業績をあげて，学問として認められているのだろうが，「環境学の構築」とぶちあげる以上は，体系ができていませんでは済まないと思うのだ。アンケートをとっていたので，広報が足りないということと，「今日の発表内容では，フレームとして島津康男さんが提唱された国土学から一歩も出ていないように感じた」といった意味のことをコメントしてきた。メールアドレスも書き残してきたので，喧嘩を売ってしまったことになるのかもしれない。しかし，厳しいコメントは期待が大きいからこそするので，まともに受け止めて欲しいと思うのである。
• 帰りは終電１本前の予定。
• 予定通り乗れたあさま535号は，例によってがら空きである。快適。読み直してみると，上の文章はかなり傲慢な物言いをしているように感じて恥ずかしい。それに，翻って，じゃあ健康科学・看護学科に独自の理念はあるのか，国際保健学専攻に統一理念はあるのか，と問うてみれば，創立当時はともかく，教授が替わる都度変遷していってずいぶん怪しくなっているように思うから，東京大学のような形で設置される新しい「専攻」にdisciplineを期待するのが間違いなのかもしれない。よくよく考えてみれば，環境学専攻に必要なのに欠けている人口学と，相対的に手薄なヒト絡みの部分が，自分なら補えるという自負があって歯噛みする思いが，上の発言の根底にあるような気がする。決して喧嘩を売っているのではなく，発展して欲しいと思っているのだということだけはご理解願いたい。

  人類生態学研究を志す学生にとって，国際保健学専攻と環境学専攻を比べて，どちらが魅力的かというと，おそらく修士課程レベルでは環境学専攻の方だと思う。うーん，そう考えてみると，人類生態学という学問は，既存の修士２年，博士３年というスタイルには馴染みにくいのだな。やはり人類生態学研究所とか，地域研究センター人類生態学部門とかいった形で独立した方がいいんじゃないだろうか？　（この部分，暴言かもしれない。まあ，独り言なので気にしないでいただきたい）

• それにしても，定年延長なんてくだらないことじゃなくて，こういうフォーラムとかの動きをきちんと（フォローすることも含めて）報道してくれるマスコミはないのだろうか？　もちろん，ただ定年延長するのではなく，PSUにあったDistinguished Professor制度みたいに，優れた教授だけを，事務や教務から解放して研究と大学院教育に専念する期間として定年延長する方が役に立つとか，ぼくも意見がないわけではないが，あんなのは基本的に大学自治事項だろう。それをこぞって同じように取り上げるマスコミ各社には見識というものが感じられないのだ。悲しいなあ。

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