枕草子 (My Favorite Things)

【第410回】 リンゴの葉摘み(2000年10月21日〜23日)

土曜日はリンゴの葉摘みのために牟礼のふるさと農園に出かけた。収穫目的でなく,手入れ目的で行くのは摘果以来2度目である。第3土曜なので小学校があるため,息子は行けず,妻も東京に出張だったので欠席だった。前夜の激しい雨も上がったので,一念発起して娘を自転車の後ろに乗せて,サイクリングで行くことに挑戦してみた。

8:00過ぎに家を出た。途中,若槻大通りが大きく右にカーヴして東長野病院入り口を過ぎてから坂を下るまでは楽勝だったが,そこからの登りはきつかった。とくに牟礼村に入ってからの坂道は,果てしなく続く気がして,とうとう自転車を降りて押すという堕落を自らに許さざるを得なくなってしまった。それでも,汗だくになりながら9:30にはふるさと農場に着いたから,いいことにしよう。

MURE hometown farm

葉摘みは,実を陽射しから隠している葉をとって,同時に実を回すことによってそれまで日陰側だったところに十分に日が当たるようにするという作業である。日が当たらないと色づきが悪いのだ。農家の方の出荷用のリンゴ園では,下側にも光を当てるために反射シートが地面に敷かれているほどだが,ぼくらが契約している「ふるさと農園」ではそこまではやらない。それでも無数のリンゴの1つ1つが十分に日光を浴びられるようにずっと上を向いて,脚立に上ったり降りたりしながら作業をするのは大変だった(4歳の娘はリンゴの根元で跳ねているカエルを追うのに熱中していたので,ちょっと心配だったが,邪魔にはならなかった)。店先で買うだけだと,こういう苦労はなかなか実感できないが,実際にやってみると,赤いリンゴの向こうに農家の方の手仕事が見えるような気がしてくる。これだけでも作業をやった意味はあったと思う。摘果のときに随分実を減らしたつもりだったのだが取りきれていなくて,大きな実が3つも固まっているところがいくつもあったのは反省点。これを教訓として来年はもっとうまくやろうと思った。

リンゴにもいくつも品種があって,「王林」(右上写真手前)とか「紅玉」とか「陽光」はちょうど収穫期なのだが,ぼくらが契約している「ふじ」が収穫できるのは,まだ1ヶ月も後だということだ。結構色づいているようにも見えるし,葉摘み作業中に間違って落とした実を食べてみたらそれなりに美味だったのだが,「助っ人隊」の方によると,これからどんどん甘くなっていくとのこと。最終的にはどれほど美味しくなるのか楽しみである。

葉摘み作業終了後,「助っ人隊」の方々が作ってくださったキノコ汁に舌鼓をうった。寒風吹く中,アツアツの汁をふぅふぅ言いながら食べるのは至福である。娘も2杯もおかわりしたほどである。キノコ汁自体のうまさもさることながら,雰囲気が最高だった。食後,大きな「陽光」や「王林」が1個100円でもぎ放題だったのだが,自転車で運ぶ都合上,「陽光」10個しか買えなかったのがちょっと残念である。まあ仕方ないか。帰り道は,ジェットコースターのように坂道を下ったので気分が良かった。


日曜日は冬に備えて窓用エアコンを取り付けたり,子どもたちの靴洗いをしたり,某所でコンピュータのヘルプ作業をしたり,と過ごしているうちに夜になってしまった。これが日常というものである。この一週間,ほとんど論文ができていないので,夕食後,東京行きの最終あさま号に乗って大学へ来た(車内で「不平等社会日本」を読了。最後まで我田引水と牽強付会だらけの本だった)。しかし疲れがたまっていて非常に眠いので,論文どころかオセアニア学会(メールで届いていた)/人口学会関係の雑用すら全然捗らない。一旦眠ることにした今は3:19である。

目が覚めたら7:30だった。今にも泣き出しそうな曇天なのだが,朝の空気がひんやりと心地よい。今日も一日頑張ろう。

午前中は学科のBulletin編集委員会で終わった。昼食後,来月に予定されているIPアドレス割り当て変更手続きを見ていたら,「サブドメイン名に現在使っているものは使わないように」という恐ろしい一文があったので,使わせてくれるよう許可を求めるメールを打ったり,「使っても良い」という返事を受けてほっとしたりしながら,オセアニア学会雑用は完了。人口学会関係雑用も完了。やっと論文にとりかかれる,と思ったら15:30を回っていた。

いつものように16:00からミーティングが始まった。最初の論文紹介は,Friedlaenderのグループが1990年にAJPAで特集号を組んで発表したSolomon Islands Projectの1つで,近代化が遅れているマライタ島のBaeguという集団の方では,ブーゲンビル島の3集団に比べて,年をとっても最大酸素摂取量が高くあり続けるという話。古い論文だし,記述を省略しているところも多いのだが,それなりに面白さがあるのは,やはりプロジェクトの力か。2番目の論文は,今年のBiochem. Biophys. Actaに載ったもので,Se-Pというタンパクが脳内の神経細胞でも星状細胞でも作られていて,肝臓で作られるものと同じ57 kDaの分子だったというラットの動物実験。セレン関係では注目されているタンパクとのことだし,新しい研究なのだが,今ひとつ面白さがピンとこないのは,ぼくの興味のあり方が個体レベル以上の現象に向いているからだろう。ミーティングに続けて客員研究員の方の博士論文の第2回発表練習があったので,先週の学生実習の後片づけは明日に回すことにした。それでも,発表練習が終わったら20:00近かったので,帰りは21:30上野発あさま535号となった。1号車に座れたので,萩原君から預かっている博士論文原稿を読み始めた。


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