枕草子 (My Favorite Things)

【第465回】 虫愛ずる心(2001年1月12日)

往路あさま504号がいつになく混んでいる。雪のせいか,それとも金曜日だからか? 昨夜は入浴後に眠ろうとしたら娘が目覚めて痒がるので薬を塗ってやったが,それ以外のinterruptionはなく熟睡できたので6:40に起床できた。これなら目標のあさま2号に乗れるかと思ったが,外に出てみたら雪がひどくて自転車の利用を断念せざるを得なかったので,長野電鉄を利用し,結局504号になったのである。

書評掲示板のスクリプトへの機能追加をちょっとやりかけたが,眠くなったので中断し,ハミルトン追悼の本「虫を愛し,虫に愛された人」を読んだ。名著である。「インセクタリウム」から再掲された自伝だけでもワクワクする面白さと情景描写の美しさは圧倒的だし,前にも触れた佐々木さんによるHIVのポリオワクチン起源説の紹介部分も価値があると思うので,締め切りが近づいてきた森山和道さんのベストサイエンスブックに投票する候補の1つとなることは間違いない(現在の得票の中でも,青空MLの管理人を一緒にやっている大塚公雄さんがこれに投票していたが,さすがだと思った。しかし得票が1票しかないというのは寂しい。もっと上位に来るべき本だと思う)。

自伝中,ハミルトンは西洋に比べて日本は虫に親しみやすい環境にあり,たいていの日本人は虫に対して好意的な気持ちを抱いているのではないかと指摘していて,なるほど長野の子どもたちをみるとそうだなあと思いながらも,現在の文京区では東京大学みたいなところを除けばほとんど昆虫採集なんか不可能だし,とくに大型甲虫なんかデパートで買うものだと思い込んでいる子どもが多いとかいう話を聞くと,そういう環境も東京では得にくくなってきているのかもしれない,とふと寂しく思った。風土がヒトを作ると考えると,都市部と農村部では昆虫への親しみにも自ずから違いがでてくるだろうと思われ,虫愛ずる心があったほうが環境認識としては豊かなんじゃないか,世界の豊穣を感じられるのではないか,と考えを進めると,やはり大都会は居住環境としては失敗なんじゃないかと思えてきてならない。やはり各地の学校給食の自給自足化(子どもたちと地域ボランティアで農作業をするという)を進めて,日本総田舎化計画を進めてほしいなあと思うのである。ま,机上の空論だけど。

今日の仕事は,竹内君と一緒に文京保健所にデータを見せてもらいに行くこと(論文を投稿するときの許可とかも聞いておくべきだろう)の他は,主として月曜の講義準備の予定。

研究室に着いてさっきのスクリプトを走らせたら,試行錯誤1回で成功してしまったので,CGI開発室を更新し,これから文京保健所に出かけるところである。

帰ってきてから人口学の講義準備。研究室に新規導入した液晶プロジェクタを使うために,去年はOHPで提示した資料をPower Pointに取り込んで体裁を整えることと,配布資料を印刷することが主な作業だったのだが,思いのほか時間がかかって,帰りは終電1本前となった。西澤保彦「転・送・密・室」を読了。現実感はまったくないのだが,限定された仮定の下に演繹的論理展開をするというSFミステリとしかいいようのない作品となっている。シリーズものの途中だとわかって一作目から読むのだったとやや後悔した。教養小説としては家事に関する蘊蓄,とくに料理についてのそれがなかなか楽しい。現実に日常の料理のレシピとして使うにはレベルが高すぎて使えないと思うけれど,参考にはなりそうだ。それにしても,何故このシリーズの登場人物名はどいつもこいつも難読漢字なのだろう。ちっとも覚えられないじゃないか。いや,別に音読する訳じゃないからいいんだが。


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