枕草子 (My Favorite Things)

【第671回】 朝起きると雨が降っていたので(2001年10月5日)

本来なら保育園の親子遠足で高山村の「You You ランド」に行くはずだったのだが,朝起きると雨が降っていたので中止になった。普通保育になったので,8:00頃まで時間をつぶしてから,皮肉にも雨が上がった曇天の下,ずっと肩車で娘を連れて行って保育園に預け,長野電鉄の駅まで歩いた。長野駅に着いたのは8:50だったので,9:02発あさま508号に乗った。

東京に行けることになったからには,いろいろと仕事が待っている。14:00からは年に一度か二度しかない,重要な人口学会の研究企画委員会(とはいっても,親子遠足があったら欠席していたはずだが)があるので内幸町に行かねばならない。薬理・毒性学の採点の締め切りとか人口大事典の校正の締め切りも間近い。書くことになっているテキストの原稿の締め切りに至っては,実はもう過ぎている。それでいて,明日は環境美化活動で小学校で掃除をしなくてはならないので,仕事ができない。まずいなあ。

久々に寝過ごして,目が覚めたら東京駅だった。隣のホームのなすの号に乗り換えて,一駅戻る途中である。研究室に電話したら,昼食を兼ねてインドネシアからの留学生Ninoさんの送別会があるということを知ったが,社人研に行くことを考えると時間的に参加はきつそうだ。

テクニカルなメモ。音楽からヴォーカルだけを消す方法について相談を受けた。専用のソフトがあるかもしれないから検索してみようとは思うが,そうでなかったらグライコを使えば手作業でできると思う。ヒトの音声の周波数帯域だけ消せばいいはずだ。完璧にアカペラで歌ったものがあれば,逆位相にして足せばいいのではないかとも思うが,そんなものを作る方が大変だと思うので,その案は却下だ。

人口大事典の校正をやりかけた状態で社人研に行き,2時間みっちりと人口学研究と教育の将来について会議をした後(かなり生々しい話もあった),研究室に戻ってきて,校正を続けながら,コンピュータにヴォーカル消しを試させているところである。

調べた結果,ひとことで言えば,「ソースを選ぶ」ことがわかった。ちなみに,グライコでヒトの声だけを弱めるということは,あまり効果がない。中音域だけを弱めることは,確かにヒトの声も弱めるが,他の音も消してしまうのだ。では,どうするか? ぼくはWindows95の頃からGoldWaveというシェアウェアを愛用しているのだが,このソフトには,メニューバーのEffectsのStereoの中にRemove vocalsというメニューがあるので,これを試してみたのだ。このメニューを選ぶと「いくつかのステレオ録音のものからしかボーカルは消せないし,ステレオイメージも失われます」といった感じの注意メッセージが出てくるのだが,強行すると意外にうまくボーカルだけが消えてくれた。例えば,川本真琴とかABBAとかモーニング娘。とかPrincess Princessなんかは,かなりきれいにメインのボーカルだけが消えて(ただし大抵の場合,微かに残響みたいなものは残る),バックの演奏やコーラスは残っている状態になった。これは,バックの演奏の音やコーラスは左右のチャンネルに違う情報が入っているのに対して,メインのボーカルは左右同じようにミキシングされているので,左右のチャンネルから共通する成分を取り去れば,ちょうどメインのボーカルだけが消えてくれるという仕組みのようだ。なお,たぶん同じような仕組みで実行していると思うのだが,森川浩さんのフリーソフトWave Masterの「モノラル成分除去」でも同じような結果が得られた。GoldWaveはMP3やMPGが直接読めるのと,変換が高速なのが利点だが,除去性能自体はWave Masterの方が上かもしれない。

さて,ソースを選ぶということの意味だが,まず,ライブ録音だと全然無効なのは,仕組みからいって当然なので諦めるしかない。問題は,カーペンターズである。カレンの声が,この操作ではほとんど消えないのだ。ひょっとして,左右違うレベルでミキシングされているのだろうか? それとも,試したソースがテレビ用に録音したというRainbow Connectionsだったからか? それとも,カーペンターズの録音はスタジオライブ? スタジオライブにしても,カレンが使っていたマイクが1本だったら,ボーカルは消せそうな気がするのだが,実際には消えないというのが実に不思議だ。とりあえず他の曲でも試してみようとは思うが。

ちょっと試した後でちゃんと聞いてみたら,上記が早とちりであることがわかった。Rainbow Connectionsも途中からはちゃんとボーカルが消えていた。つまり,最初の方は,メインのボーカルにかぶせて,それよりやや小さな音で,同じメロディーラインのコーラスをカレンが歌ったトラックがあるということだったのだ。これがたまたまRainbow Connectionsだけでなく,Top of the Worldも同じように出だしだけそうなっていたので,すっかり消えないと思い込んでしまったのだった。わかってしまえば何ということはないので,このやり方を教えることにしよう。

帰りは終電1本前。天藤真「犯罪は二人で」(創元推理文庫)を読了。こういうのはたぶん,ユーモア・ミステリというのだろう。そこそこ楽しめる短編集。弱者に向ける暖かい視線が特徴的だと思った。


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