枕草子 (My Favorite Things)

【第703回】 気まぐれな雨(2001年11月6日)

気まぐれな雨なんて言ってみたくなるのだが,もちろん雨に意思があるわけではないから,人の意などとは無関係な雨という方が正しい。しかし主観的には,昨夜も長野駅についたときは止んでいたので自転車に乗ったら途中から降りだすとか,今朝も家を出たときは止んでいたので自転車に乗ったら途中から降りだすとか,どうもぼくに意地悪をしているんじゃないかとしか思われない降り方をする。困った雨である。

雨が降ってきたとき,傘を開きながらふと山の方をみると,いつの間にか長野市内もすっかり紅葉・黄葉していることに気がついた。深緑の針葉樹とのコントラストもいい感じなのだが,やはりその背景は突き抜けるような青空であって欲しいものである。本当はあさま2号に乗りたかったのだが,雨で徐行を余儀なくされたため,往路は,あさま504号になった。

今日は火曜日なので,例によって解剖学講義の出席を取るのと,見学実習参加の希望を取るのと,ミーティングという3つの仕事がある。最近やってなくて反省しているのだが,ミーティングで紹介される論文は事前にわかっていて,東京大学にいる限りたいていの場合webサイトからpdfで取れるのだから,やはり原文を打ち出しておくべきだろう。そう考えると,あまり自由な時間はない。

ミーティングは砒素曝露が脳内のモノアミン濃度と行動に与える影響をラットで調べた実験研究と,イトゥリの森のエフェの人々で子守りはどのように行われているかという調査研究だった。原文を打ち出して持っていったおかげで,説明を聞いているだけでは納得がいかなかったところを参照しながら聞くことができた。いや,単に英語を聞きとりながら理解するよりも読みながら理解する方が楽だし速いからなんだが。

帰りは終電1本前……のつもりだったが,結局終電となった。今野敏「惣角流浪」(集英社文庫)を読了した。合気道の創始者だということも本書を読んで初めて知ったが,武田惣角という武芸者の,ただひたすらに強くなることだけを目指して生きた前半生を描ききった正統派の伝記である。空手とか古武道を描かせたら,今野敏の描写力の右に出る作家はあまりいないのではないかと思う。


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