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社会調査第7回
「インタビュー」(2001年5月31日)

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最終更新: 2001年7月26日 木曜日 18時29分


講義概要

インタビューとは?
●日本語で言えば面接聞き取り調査。
●人間は常に他の人々と会話をしている。 日常の経験として他人から情報を得ているし,協力的な応答を得るために,(意識しているかいないかによらず)多くの有効な技巧を使っている。 インタビューとは,それを一層専門化して,求めようとしている特別なデータを,会話を通じて効果的に獲得しようとする技術である。
インタビューの種類
●自由なインタビュー:主に実態調査に用いられる
●指示的インタビュー,あるいは質問紙インタビュー:主に統計調査に用いられる
●集団インタビューと個人インタビュー
インタビューの本質
●面接者と被面接者の間に社会的状況が作られ,社会関係が形成される。 「らせん形の相互作用」が必要。
●自由面接では,予め質問の順序を追い,イエス・ノーを問うようなのはダメ 面接者と被面接者は,ある意味で共同研究者となる
●ラポール(rapport=被面接者との友好的な人間関係)の形成が重要:スプラドレー(Spradley, 1979)によれば,(1)面接者が何に興味をもっているかを面接開始時に,あるいは面接中,おりに触れて,また面接の終わり頃に繰り返し相手に伝える,(2)被面接者が言ったことをもう一度繰り返すことで,相手の話をちゃんと理解していること,相手の話が面接者にとって価値があることを伝えること(価値判断抜きに繰り返すことが大事),(3)意味を聞かずに,コトバの使用例を聞くこと,が,良好なラポールを築くためのい3つのコツと言われている。
インタビューの技術
●面接への準備:企画=時間とテーマ,下調べ=テーマについて+インフォーマント(情報提供者=被面接者)について
●最初の接触:挨拶+目的(相手に合わせて)
●面接の前半:相手に喋らせる
●面接の後半:質問・検討・確認(この際,数と固有名詞についてはメモが必須と思う)
●面接の終結:友好的に
●面接の記録:1時間くらいの面接なら,直後にメモすれば大丈夫。面接中にはなるべくノートしないで済むことはしない方が良い。

フォロー

自由面接でイエス・ノーを問うのは何故ダメか? いったんイエス・ノーを聞いて,そこをまた詳しく聞くという技法はありでは?
ありだと思います。予め決めた項目について機械的にイエス・ノーを聞き取っていくのではダメだということです。
いつか講義時間中にインタビュー練習をする?
講義時間中には無理だと思うので,友人や家族に頼んで練習させてもらってください。
「らせん形の相互作用」について,より詳しく説明希望
聞き取りをしながら,互いに相手の言葉を手がかりにして段階的に理解が深まっていくことを「らせん形」と表現したものです。
集団インタビューについてフォロー希望
1人の面接者が複数の被面接者と同時に会い,相互に話し合いながら情報を得る場合も,集団インタビューといいます。複数の被面接者同士を話し合わせながら,議論の流れに適切に介入することで情報を得ることもあります。単独で行われるよりも,個人インタビューと相互補完的に行われることが多いです。
インタビュー中,あまりに相手の意見に反対のときは反論して良いか?
インタビューの相手(インフォーマント,情報提供者という意味)が何を考えているのかを聞き出したいのが目的で,相手を論破するとか説得するとかいった目的ではないので,議論としての反論はすべきではありません。
面接中にはなるべくノートしないで済むことはしない方が良いのはなぜ?
ノートをとることによって会話の流れが中断してしまうことがあるからです。ただし,相手の発言を反復することと同様の効果(ちゃんと聞いているということをわかってもらう)が得られる場合もあるので,一概に悪いとばかりはいえません。
ノートがダメだとするとテープレコーダーによる記録はどうか?
とくに集団インタビューの場合など,複数の回答が同時に発せられる場合があり,聞き漏らす危険があれば,テープレコーダーで補強することは意味があります。ただ,それに頼って聞き取りがずさんになってしまってはいけません。また,一般にテープ起こしには聞き取りそのものよりも長い時間がかかりますから,効率が良いとはいえません。さらに,テープにとられることで,被調査者が「発言がすべて記録される」と意識してしまい,自然の会話でなくなって虚飾や合理化や遠慮や抑制がどうしても生じるという欠点もあります。もっともICレコーダーのように動作音も何もしないものなら,完全に隠して録音できるので,最後に挙げた欠点はなくせるかもしれません。
インタビューの真の目的を敢えて言わないのが合理的なのはどんな場合?
真の目的が聞きたい情報に影響を与える危険があるような場合です。しかし,相互の信頼関係という点からすれば,必ずしも言わない方がいいとは言い切れないのが難しいところです。
ソロモン諸島の調査で実際にどういうインタビューをした?
数年前のガダルカナル島でのマラリア調査では,対象者全員に,蚊帳の利用状況について,また蚊から身を守るために何に気をつけているかについて聞き取りました。これは質問項目を予め概ね決めておき,それに沿って質問を進めたので,指示的インタビューにあたります。それでも,1人あたり10分程度かかりました。今回は時間がなかったので,ほとんどインタビューはしませんでしたが,共同研究者(山内太郎氏)は,村のリーダー的な立場にある人々を集めて,村の現状認識についての聞き取りをしました。集団インタビューに当たると思います。