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書評:よしもとばなな・三砂ちづる『女子の遺伝子』(亜紀書房)

最終更新:2013年8月5日

書誌情報

書評

遺伝の話ではない。

ドキッとさせる発言が物議を醸すことが多いのだけれども,先日の『国際保健医療』に載っていたエッセイなど読むと,実にまっとうな疫学者・国際保健学者だと思うし,身体性の復権を訴える文脈には親和性を感じる三砂さんが,エッセイスト・作家として有名なよしもとばななさん(ぼくは彼女の作品はほとんど読んだことがなく,ついつい吉本鰐聖瓩量爾気鵝い隼廚辰討靴泙Δ里世)と,女性・男性・母性を軸に語り合った本。とくに三砂さんの話には傾聴すべき部分も多いのだが,お二人とも,かなり不幸な経験をいろいろされていて,そこに引きずられた論調が目立つ。お互いに気を遣って迎合して,話が悪い方向に飛躍してしまったんじゃないかなあと感じるところも多々あった。いろいろな引っかかりを感じたので,以下メモ。

この調子で突っ込みを入れていくと終わらないので,後は軽く。

p.71からの「助産院は世界遺産」という話で,助産師さんの凄さにはほぼ全面的に賛同する。ただし,自宅出産までできる法律が残っているのは世界的に珍しいという話だが,PNGやソロモン諸島では(ブラジルだって,アマゾンの奥地はそうだと思うが),診療所で産むケースが増えてきたけれども,ブッシュで産むという伝統的な方法も残っている地域が多い(男性にとってはタブーなので,ぼくは詳細を見ることができなかったのだが)。そこで問題になるのは,NMR(新生児死亡率)やMMR(妊産婦死亡率)を低くすることだけ考えたら,たぶん施設分娩でSBAが介助した方がいいに決まっているし,国連もその方向を目指しているということだ。そこの折り合いをどうやってつけるか。

p.85からの「健康ってどういうこと?」では日本人のカロリー制限指向による栄養失調に触れていて,そのせいで月経不順になる学生が多いという話をされているが,20代,30代女性の約1/4がBMI18.5未満の痩せ過ぎなことを考えると,これは深刻な問題だと思う。ぼくは,これはかつてフィジーでテレビ放送開始後に拒食症になる若い女性が増えたこと同様,ボディ・イメージが映像情報によって歪められているせいではないかと思うが,本書ではそこへの突っ込みはなかった。

第2部「母の存在」では,お二人の話はより個人史・家族史的になる。それはそれで興味深いのだが,三砂さんの考え方を知るには,本書よりも『オニババ化する女たち』の方がよりストレートだし明確に書かれているように思った。

【2013年8月5日】


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