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書評:川端裕人「オランウータンに森を返す日」,旺文社

最終更新: August 18, 2005 (THU) 18:31 (書評掲示板より採録)

書誌情報

書評

子どもに写真でも見せてやってくれという主旨でご恵贈いただいたわけだが,なかなか読み応えがある本だった。大量消費社会が元凶ということが読者対象である子どもたちにどれだけ伝わるかが,この本の勝負のポイントではないかと思うが,いい線行っているのではないかなぁ。

欲望を満たすことだけで行動するのではなく,飼い主の責任とか社会的にそれがどういう意味をもつのかなど想像力逞しく考えて行動しないと悲劇が生まれる,というペットを飼う人に向けた前半の結論ももっともだけれど,カリマンタンに行き,森に生きるオランウータンやリハビリセンターのオランウータン,森林伐採現場などを見て,最後に行き着く結論が,やはり最大のポイントと思う(最後に解題されて,ああ,そうだったのか,と漸く著者の意図に気づいたのは,ぼくは相当にぶいかもしれない)。

今年の読書感想文コンクールの小学5,6年の課題図書に選ばれたようだが,環境教育とかいうなら,ケナフを植えるとかいう単純かつ欺瞞的なやり方ではなく,本書を読ませた方がずっと役に立つと思う。もちろん,児童書だからといって大人が読めないということはない。多くの他のすぐれた児童書と同様,大人が読んでも目を開かされる点が多い。

【2000年6月28日記】


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