昨日は子ども2人を連れて小石川の理学部附属植物園に行った。同じ大学の職員でありながら入場料330円をとられるのはちょっと悲しいが,研究のためでなくて楽しみのため,いわゆるアメニティ空間として利用するのだから仕方ないか。子連れだし。
植物園には池があって,ザリガニ釣りをする親子連れがたくさんいる。昆虫採集などは禁じられているのだが,ザリガニ釣りに限っては黙認されているようだ。魚を食べる害獣だからか,それとも釣れる分など多寡がしれているからか。芝生のわきのベンチで食事をしてから,ぼくらもザリガニ釣りをしたが,岸辺の石の下に見えている赤い鋏の大きいヤツは餌のスルメを銜えはするくせに,すぐ石の間に引っ込んでしまってなかなか釣れなかった。しかし,そいつを泣く泣く諦めて岸から30cmくらい離れたところにスルメを入れたら小さいザリガニがたちどころに4匹釣れたので,子どもは喜んでいた。
今日の本題のシロアリのはなしは,そのザリガニを持ち帰ってきてから始まる。実は,うちには以前金魚を飼っていたときのプラスティックの六角水槽があるのだ。金魚が死んでから,家の前に出して放置していたのだが,ザリガニを持ち帰ったのは,その水槽を洗っていれられると目論んでのことだ。家に着いて,子どもたちの足を洗って玩具と戯れさせておいて,さてザリガニの水槽作りである(本当は子どもたちと一緒にやる方がいいのだろうが,部屋の中を水浸しにされるのはちと困るので,ぼくがやってしまった。せめてベランダでもあればなぁ)。水槽を持ち上げると,コンクリートとの間に溜まった土埃の中に,なにやら白いものが無数に蠢いていたのだ。よくよく見ると,どうもシロアリのようである。こんな鉄骨コンクリートのマンションに,どこからやってきたのか。彼らは,先を争うように大家さんの花壇の方にもぐりこんでゆく。さながら,砂に染み込む水のようである。水槽にへばりついた2,3匹が行き場なく凝然としていて,なんだか哀れであった。ともかくも水槽を洗って砂利を敷き詰め,水を満たしてブロックを沈め,ザリガニを移してから,シロアリがいたところを見てみたら,きれいにいなくなっていた。花壇の下に入り込んだのだろうか。それともうちの床下? いずれにせよ,後で大家さんに相談はした方がよかろう。
ちなみにシロアリは,英語ではtermiteという(white antとも言わないことはないけれど)。miteはダニだから,英語圏ではダニに近いものと思われているのか。でもシロアリはれっきとした昆虫だ。日本では同じように社会性昆虫であり巣を作るアリに近いものと思ったのだろうな。アリとの最大の違いはその食性で,木材を食べるから害虫として問題にされるのだよな(逆に考えれば主食がセルロースで他の生物とは競合しない,優れものなのだが)。そのせいか,WEBでもシロアリに関するサイトというのはたくさんあって,Dr. Don's Termite Pagesや山口大学のシロアリ画像データベースは,実物の写真も豊富にあってすばらしい。シロアリがゴキブリ類縁だとは,恥ずかしながら知らなかった。うちにいたのはイエシロアリかヤマトシロアリに似ているような気がする。下等シロアリには違いない(実は,高等シロアリという,原生動物の腸内共生の助けなしにセルロースを消化できるやつがシロアリの属数の80%を占めるなんて知らなかった。シロアリのイメージとしては下等シロアリの方しかもっていなかった)。余談だが,後者の「はじめに」で書かれているデータベース公開の思想には共感する。GNUにも一脈通ずるものがあるが,情報は公開することによって豊かになるのだ。