先週は,木曜から土曜まで広島でシンポジウムがあった。木曜の早朝に東京を発ち,正午過ぎに広島駅に着いて,さあ昼飯でもと思って駅の外に出たのだが,駅のすぐ周囲にはあまり飲食店が見当たらなかったので,ちと困った。南口にバス停があり,そこから西側にいくとダイエーがあるのだけれど,このダイエーには飲食店が入っていないのだ。そのせいで「駅周辺は寂れている」という第一印象をもってしまったが,それは間違いだったことが後でわかった。
ともかく信州そばの店で昼食をとり,バス乗り場Aホームの4番から大学病院行きに乗る。終点まで15分ほどだったと思う。シンポジウム1日目は関数の最大値を求めるアルゴリズムとして特殊な場合にはNewton法よりも有用なものを編み出したという話から始まり,画像処理の話が続いた。題材はソフトウェア工学的なのだが,その効率とか品質管理とかいう話に行かずに,アルゴリズムそのものの話だったように思う。
その日は,発表後に提出する報告書を書くために宿にすぐ戻った。宿は,広島ガーデンパレスだったが,実は裏口から出ると歩いても25分程度なのだった。晩飯は広島ガーデンパレスから北へ3ブロックほどのところにある中華料理屋で焼飯と餃子を食べたが,なかなか美味だった。ほぼ徹夜でThink Pad 535を叩いて報告書を仕上げるに際し,Darjeelingと茶こしを持参していたのは正解だった。緑茶ティーバッグはまずかったので,多少酸化しているとはいえ,PussimbingのDarjeelingの旨さは喉に浸みた。
翌朝はシャワーを浴びて前夜買っておいたパンを食べたら8:20になったので,大学まで走ったわけだが,雪が降っていて凍えるほど寒かった(右写真は9日朝の様子)。午前中が我々の感染症のセッションだったが,英語でやったにしてはそこそこ議論も盛り上がったように思う。Auvertさんの考えは結構自分に近いように感じた。
昼食は生協食堂でとり,理論統計学的な午後のセッションを聞いたあと,懇親会があった。狭かったけれど,値段のわりに料理はうまかったと思う。酔っぱらいつつ部屋に戻って,鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」を読みながら眠った。翌朝は駅の立ち食いそば屋で「肉うどんとおにぎり」などというソロモン諸島のキタノメンダナホテルのレストランのようなメニューで済ませ,再び大学まで走った。ガーデンパレスのある新幹線側から南口に抜けるには地下道を通らねばならないが,バス停の方に抜けずに東出口から出て直進するとベスト電器の大きなビルの裏手に出るので,そこで右折して橋を渡ってから左折して川沿いに南東に進めば大学までは10分足らずであった。荷物さえなければいい運動だ。この朝のセッションは肺ガン死亡データの地理的分布を空間構造を使って説明するモデルの話とリモートセンシング画像の画質改良の話と日本の0〜4歳女児割合の変化のモデルの話だった。いずれも分析の前提に若干の疑問を感じたが,モデル自体はなかなか面白かった。こうした異分野の研究を聞く場合,前提に疑問を感じるのはある程度仕方のないことであると思う。逆に見れば,統計学の人たちは,感染症のモデルの話の前提がしっくりこなかった面があると思う。それは互いに仕方ないことと思うので,こういうシンポジウムの場合は,前提や成立条件はとりあえず考えないことにして,detailを刺激とするのが実りを得る道であろう。少なくともぼくはそうしている。
終わってから歩いて広島駅の方に行くと,ベスト電器の角を曲がって2ブロックほど行ったところにお好み焼き屋があった。ぼくは学部学生時代,ソフトボール部に属していたのだが,我が部には広島出身の先輩や後輩が何人もいて,駒場祭では広島風お好み焼きを出店していたので,広島といえばお好み焼きを抜きにしては語れないのである。写真を撮らなかったのが残念なのだが,牛肉とえびと焼きそばと卵が入った分厚い,熱々のお好み焼きを,コテで切り分けながら食べて身体が暖まった。800円の昼食と考えると決して安くはないのだが,内容の良さからすれば安いと思う。お好み焼き屋から駅に向かうと,実はそこは市場なのだった(左写真)。辛子明太子5腹か6腹入った一皿が500円とかスルメイカ3尾で350円とか,信じられないような安い値段で食材が売られており,活気があった。「寂れている」との第一印象は大間違いで,駅のすぐそばにこんな市場がある広島駅はすばらしい駅であると思った(判断を誤ったのはきっと駅ビルが工事中だったせいだ)。帰りの新幹線は米原と豊橋の間が大雪のために徐行運転をしていて30分も遅着したが,座って帰れたので,Think Padのキーを叩いたり本を読んだりできたので退屈はしなかった。新年早々良い旅だったと思う。
さて帰京後の最初の日曜日の昨日であるが,ドラえもん尽くしであった。実は子どもを遊ばせるために東京ドームと後楽園遊園地がらみの催し物の入場券がセットになったものを買ってあったのだが,その一つ,「Dream on ドラえもん」というのが昨日までだったので行ったわけである。人混みが凄くて,ヒトを見てるんだかドラえもんを見てるんだかわからないような状態だったのはほぼ予想通りだったが,それでも凝然とステージのドラえもんやのび太たちの着ぐるみを注視しながら声援を送る子どもたちのエネルギーには恐れ入った。あの程度のものを見るために1時間半も平気で待って,立ち見でも文句一ついわず声援するんだから。若干ドラえもんの声が違うような気がしたが,どうだったのだろう。
帰ってしばらくすると,「のび太の南海大冒険」だったか,映画をテレビ朝日で放映していた。2歳半の娘はそうでもなかったが,もうじき5歳の息子は食い入るように見ていた。あれは,ツボをよく押さえた番組だと思う。お尻印のきびだんごなんて大笑いしていたし,ドラえもんが悪人の頭に転落して偶然やっつけてしまうところでは快哉を叫んでいた。しかもドラえもん自身には暴力的なところは一切ない。なるほど,親からも好かれる筈である。BFカブトとかギンガマンとかウルトラマンガイアみたいな腕力ヒーローとは全然違うのに,これだけ好かれるというのは,考えてみれば不思議である。まあ,幸運のお守りみたいなものか。耳がないのが良いのかも。