枕草子 (My Favorite Things)

【第153回】 Wzエディタ礼賛(1999年7月27日)

ぼくが使っているエディタはヴィレッジセンターから販売されているWz Editor4.0(以下WZエディタ)である。このエディタは,プレインテキストばかりでなく,ハイパーテキスト編集モードやCプログラム編集モードをもっているので,論文の最終的な整形(これだけはWord PerfectやMicrosoft Word使用)を除けば,ほとんどすべての編集場面で使っていることになる。MUA (Mail User Agent)すらWz MAILとして内蔵しているので,最近は毎日10時間くらいWzエディタを使っている。10メガバイトを超えるapacheのログでも軽快に参照できる堅牢さももっている。もはやOSに準ずる環境といって良い。

ぼくが初めて買ったエディタはEZエディタであった。たしか3,000円か5,000円だったと思う。ソースコードがついていたが,アセンブラだったので自分でいじることはなかった。途中PSE(Cのソースがついていたのが画期的だった)とかMIFES(マクロが作りやすかった)とかを使ったこともあったが,EZがVzとして大変身を遂げてからというもの,DOS時代はずっとVzエディタを使い続けた。Vzを一人で作り上げたc.mosさんこと兵藤嘉彦さんは最高のハッカーだった(……と過去形で書いているが,今だってBzやZCopyの設計思想の良さには天才を感じずにはいられない。ただ,Vzは間違いなくナンバーワンだったということだ)。販売元のヴィレッジセンターも,中村満社長が手弁当でやっているような雰囲気の会社で,神保町の店舗にはいつも怪しげで楽しそうな熱気が充満していた。Vzのマクロ開発は難しかったが,次々と高機能なマクロを実装する「マクロ師」が現れたのには驚嘆したものだった。

Windows時代になり,兵藤さんがVzのWindows版を作ってくれることを当初期待していた。しかし日経mixのvc会議だったかと思うが,兵藤さんはたしかVC TERMのβ版開発を見たのがきっかけで,VzのWindows版を作るのを止めたのだったと思う。結局Vzの操作性をもつWindows用エディタができたのは,それから随分あとになって,TYさんが一人でWzを作り上げるのを待たねばならなかった。WzがVzと大きく違うのは,ソースコードが公開ではないということだが,マクロの公開性は引き継がれた。これは見米さんら,マクロ師の方々の努力によるところが大きいと思う。また,Wzもソースが公開でないとはいえ,開発者の顔が見えるサポートにより,ほとんどシェアウェアのようにフットワークが軽いのが画期的であった。

現在でもWzマクロのフットワークの軽さは健在である。Wz本体でもハイパーテキスト(HTML)の編集はタグ挿入型で簡単にできるのだが,HTML機能拡張というマクロを使うとより便利なので,ぼくはこれを常用している。なかでも最近便利さを痛感したのが,「コマンド文字列」である。最終更新日時を示すのに,以前はJavaScriptで<SCRIPT Language="JavaScript"> <!--lastDate = document.lastModified; document.write(lastDate); // --> </SCRIPT>などとしていたのだが,古いブラウザやLynxでは空白になってしまうことはわかっており,ずっと代替手段を探していた。手作業で更新日時を打つのは鬱陶しいが,リピーターのためには更新日時が是非必要なのである。そこで登場するのが,HTML機能拡張のコマンド文字列である。これは,ファイル保存時に自動的に特定のコメントで挟まれたところに文字列が挿入される機能である。具体的には,<!--htmlex_TODAY="Mmmm D, YYYY (WWW) hh:mm"--><!--htmlex_TODAY_END-->で挟まれたところに,September 3, 1999 (FRI) 20:36のように文字列が挿入されるのである。ここまでできると,更新チェッカソフトであるWWWCの更新通知メタタグの中身もこれで自動更新されるようにしたくなるのが人情というものである。ところが,デフォルトの仕様では,HTML機能拡張のコマンド文字列の書式にはダブルクォートを入れることはできないので,これは不可能であった。そこで昨日,WzのHTML機能+旧版の話題を扱う掲示板に書き込んでみたところ,あっという間に見米さんがパッチを公開してくださった。<!--htmlex_TODAY='<META NAME="WWWC" CONTENT="Mmmm D, YYYY (WWW) hh:mm">'-->としたら,ちゃんとメタタグの中身が更新されるようになった。感激である。バザール方式ソフト開発の見本のようだと思った。

というわけで,Wzエディタを強力にお薦めしたい今日この頃なのである。


前【152】(ローカルニュース(1999年7月26日) ) ▲次【154】(LinuxでRAID(1999年7月30日) ) ●枕草子トップへ