公文書にはたいていの場合縦横無尽に罫線が引かれているので,そこに合わせてプリントするには,きわめて高度なテクニックと性能の良い機材が必要である。DOSの一太郎バージョン3とかを使っていた頃は,そんな機材はなかったので切り貼りが普通であった。英数字にはレトラセットを使ったり。
高度なテクニックを駆使するには,CANVASというソフトを使う必要がある。たぶんレイヤー機能があって,精度の良いドロー機能とペイント機能の両方をもっていればよいのだが,研究室にあるソフトの中でこの条件を満たすものとしては,CANVASがもっとも使いやすい。もとの文書をイメージとしてスキャンし,それを表示したまま,別のレイヤーに文字やベクターグラフィックスによって内容を埋めていくのである。レーザープリンタを使ってプリントするときに,イメージのレイヤーは印字しないようにすれば,大抵の様式には合わせることが可能だ。この場合のコツは,文字を小さめにして,可能な限り(できれば2 mmくらい)余白をとることである。2 mmとれれば,スキャナの読みとり誤差や,プリンタの紙送り誤差は吸収される。しかし,これは大変面倒なテクニックであった。
科研費の申請書のおかげで,公文書のほとんどが「様式」であることに気づいて以来,罫線そのものを描くところから始めるという大技を使うようになった。その方が圧倒的に早いのである。面倒な書式の場合はDesignerを使うこともあるのだが,大抵の場合,Wordで十分である。Word98以降の罫線の引き易さは,この作業の効率を大幅に改善してくれた。新しい機能は大抵ない方が良かったようなものばかり(マスコット? とか,よく使うメニューだけを表示とか……全部OFFにしているが)なのだが,罫線機能だけはWord98で完成したといってよい。もっとも,どうせ「様式」自体がコンピュータで作られているのだろうから,文書を要求する側がテンプレートをWEBサイトにでもおいてくれるとか,WEBのフォームから入力できるようにするとか,罫線なしフリーフォームで良いことにするとかしてくれれば,Wordを使わなくても済み,理想なのだが。
Wordで他人が作ったファイルを修正する場合の難点は,フォントが入っていなかったり,プリンタフォントが指定されていた場合にプリンタ設定が違うと画面上ですら文字化けすることだ。これはWordがWindowsというOSに依存しすぎの設計になっているからである。TeXみたいに独立させてくれれば問題ないのに,可搬性ということをあまりにも軽視した設計といえよう。これは,バージョンアップすると過去のデータ資産が文字化けする可能性を示すものであり,保守性も悪いといえる。対策としては,プリンタフォントや特殊なフォントは使わずに,MS明朝,MSゴシック,Arial,Times New Roman,Symbolだけを使うことだが,こうしてもMacintoshにもっていくと見栄えが悪くなることがあり,自分はいいとしても他人に強要することはできない(誰しも見栄えがよい書類を作りたいから)。畢竟,その場限りの使い捨てファイルが増えてゆく。逆行してるなあ。
昨日の疲れが残っていて,目が覚めたら6:15だったため,往路は7:50発あさま2号。今朝の長野は晴れていて気持ちがよい。