枕草子 (My Favorite Things)
【第268回】 言語の文法と不慮の事故(2000年3月30日;31日追記)
- 今朝は6:15に起き,20分で鍋にあった豚汁を温め,電子レンジに1分かけた餅を投入し,湯を沸かしながらそれを食べ,沸いた湯で紅茶を淹れながら着替え,6:40に家を出て,7:02発あさま550号に乗った。往路は下り坂だから20分あれば十分行けることを再確認。
- 自然言語で大事なのは文法ではなく,単語だったり文脈だったりすると思うが,コンピュータ言語では文法である。これは,自然言語が伝えたいのが感情であり,コンピュータ言語が伝えたいのが論理であることによると思う。感情をもったCPUとかOSとかがあったら,自然言語のようなコンピュータ言語ができて面白いだろう。正確に伝えることは難しくなるが,察してくれたり,あるいは誤解から新しいアイディアが生まれたりするかもしれない。予想外のものが生まれる可能性という意味では,複雑系の議論でいうところの「創発」に相当する。もっとも,エラーがトリガーとなる創発とかいうと,ウイルス進化論みたいだが。Cでdo〜while文を6重ネストしながら,ふとそう思った。
- 予想外といえば,京大生態研の人たちが乗ったボートが転覆した。死亡者の名前が食い違うなど(UC Davisのニュースと読売新聞の速報は一致しているが,京都新聞は違う情報を載せている),報道は混乱しているが,きっと現地の状況自体,混乱しているのだろう。不慮の事故,という言い方があるが,UC Davisではおそらく予想もしていなかったのではあるまいか? 生態研では井上民二教授の墜落事故以来,事故対策に力が注がれてきたらしいし,気が弛んでいたとは思わないが,それでも起こってしまうが故に「不慮」なのだ。まだ行方不明の人がいるので,懸命に救助作業が進められているものと思うが,何とか助かって欲しいものである。(31日追記:亡くなった方のご冥福をお祈りする。東さんが45歳という若さで亡くなってしまったのは,数理生態にとって計り知れないほど大きな損失である。なお,どうも京都新聞の方が誤報だったようである。事故が起こった市の市長の談話が間違っていたという。)
- ぼくを含む人類生態学教室のメンバーも海外のいわゆる途上国の調査に行くことが多いので,「危険じゃないですか?」と聞かれることがしばしばあるのだが,ぼくらは所詮ヒトが住んでいるところしか行かないのだから,その危険はたかだか現地のヒトと同程度である。今回のようなヒトの住んでいないところを対象とした動物学,植物学やピュアな生態学の研究者が出会う危険よりはずっと小さいだろう。まあ,ヒトとヒトが対立しているところや犯罪者が出てくると,それはまた別の危険があるのだけれど,それなら先進国の都会に暮らしていても同じくらい出会う可能性があるので,とくに調査で危険が増すわけではない。一般には小さいセスナ機の方が怖いと思われているようだが,実は小さなボートに75馬力くらいの船外機をつけて外洋を飛ばす方がずっと怖い。波頭の上に乗るたびに跳ねとばされそうになるし,途上国の地元の人向けのボートでは救命胴衣なんか装備されていないし。ボートに乗りそうな時は自前で救命胴衣を持参しなくてはと,先日ソロモン諸島でボートに乗りながら思ったばかりだった。
- 今日の復路は18:26発あさま529号に乗る予定。ソロモン諸島滞在中の教授から急いで返事をしなくてはならないメールが届いたが,タイミング良く簡単に調べられたので助かった。
- 18:00だとまだ外は明るいのだな。日も長くなったものだ。不忍池の畔,というか弁天堂の前の道では,屋台が畳まれようとしているところだった。あそこは夜は営業を許されていないようだ。上野の山の桜はまだごく一部が咲いているに過ぎないが,気の早い人たちは,既に宴会を始めていたりする。なんて平和な上野であることよ。予定通り,あさま529号に乗ったが,花粉症がひどくて鼻水をこらえるのがつらいぞ。
- 日経サイエンス別冊「シミュレーション科学への招待」てのを買ってしまったが,新幹線内で読んでみたら,看板に偽りありの本であった。せめて「計算科学への招待」としておけばよかったのに。シミュレーションの本質には殆ど触れず,コンピュータの話とその出力の美しさに凝った本なので,何か騙された気分である。そのタイトルなら,まったく違う面々でもっとずっといい本ができると思うが。
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