枕草子 (My Favorite Things)
【第273回】 電気三輪車(2000年4月6日)
- 悪天候のせいもあり,入学式は寒かった。半ズボンで出席した長男も寒がっていた。校長先生の話が,子どもに向けてなされたのに驚いた。いいことだ。
- 今朝はうってかわって晴天である。新幹線は7:02発。
- 旧友川端裕人の新作「緑のマンハッタン」(文藝春秋)を読んでいたら,ニューヨークにもぼくと似たことを考えている人がいることを知って嬉しくなった。青空MLの[921]で提案した新型リキシャ構想に,ジョージ・ブリスの電気三輪車はかなり近い。ぼくの構想が基本的に人力なのに対して,彼の構想は基本がハブ設置である点,屋根を付けるか否かという点など違いもあるが,両立可能だし,ニューヨークや東京のような大都会でガソリンで走る自家用車に乗ってのろのろ走るのが,余程の特殊事情でもなければ馬鹿げているという基本発想はまったく同じである。しかも,考えているだけのぼくとは違って,彼は実際に電気三輪車を開発し,ペディ・キャブという形で普及を図っていて,大手自動車メーカを電気自転車,電気自動車開発に参入させるほどのインパクトを作り出している点がすごい。資本と暇があれば,東京に代理店を作って誘致したいところだ。いや,それよりもノウハウを学んで自力展開すべきか。しかし一方では今やっている研究も自分にしかできないことだという思いがあって,ジレンマに悩むのである。時間は飛ぶように過ぎてゆく。
- 誰か徹底的な「格好いい!」というイメージ戦略でジョージ・ブリスの電気三輪車を売り込んで市場を作ったり,その販売代理をしたり,ハブステーションを整備したり,道路交通法改訂の根回しをしたり,といった活動をしてくれないだろうか。大気環境を改善する先鞭をつけたということで国際的な評価もあがるぞ,きっと。ある程度ハブステーションなどのインフラが整備されないと利便性が向上しないから,規模が必要で,電通とか博報堂とかを使って,CI戦略的に総合商社がやるのに向いているように思う。どうです,おひとつ?
- 「緑のマンハッタン」には,電気三輪車以外にもimpressiveな記載が溢れている。例えば5章「おいしい空気は誰のもの?」に出てくるラブ運河など,1970年代当時の様子は,小松左京「静寂の通路」そのままだし,現在の状況(薄皮一枚下は有害化学物質の塊だという)は,篠田節子「斉藤家の核弾頭」に出てきたニュータウンと同じである。
- 上野に着いて,3階の新幹線改札が10日から工事のため閉鎖されることを知った。えー,困るよー。公園口に出たい人はどうしたらいいんだよー,と心の中でつぶやきながらフローラ上野のCD屋に入って寺井尚子「Pure Moment」を買い,鼻をかみながら公園口への通路を歩いて,ゴミ箱にちり紙を捨ててから公園口改札を抜けるまで約1分。決して青空ではないが,それほど悪くもない空の下,満開に近い桜の列と,その下で強烈な自己主張をしている臨時設置されたゴミ箱群を横目で見ながらいつものように不忍池に降り,池の端門から大学に入る。医学図書館裏の桜もかなり素晴らしい眺めなので,知る人ぞ知るお花見スポットとなっていて,既に場所取りをしているような人もいる。春である。
- 研究室に着いてメールを見ると,オセアニア学会方面のコマンドが溜まっていたので,午前中はそれをこなすのに費やした(いや,こなし切れなかったのだが)。Alphaでさせたシミュレーションの結果その5が出ていたので,本当はそれを処理したいのだが,なかなか行き着けない。Alphaといえば今日はTru64 UNIXが届く筈なのだが,上記シミュレーションはその50くらいまでやる予定であり,シミュレーション完了前に動作環境を変えるのはまずいので,インストールは今年の人口学会での発表が終わってから,という点で萩原君と合意した。
- 静岡新聞によると(たぶん今後リンクは変わるけれど今ならここ),三島市が毎月10日をエコエコデーとして自家用車を使わない通勤日にしたそうだが,1日だけ社会資本に設備投資するわけにはいかないのだから,どうせなら自家用車を使わなくても暮らしやすい町作りを進めて,毎日,せめて毎週にしたらどうかと思う。三島市には柿田川という素晴らしい名水源があるのだが,遺伝研に行った帰りに寄ろうと思って歩いていったら,道路の交通量が半端じゃなくて顔がべとべとになった記憶がある。柿田川ときたら国道沿いに顔を出しているのが一歩中に入ると深山幽谷の趣があって,まるで別世界なのであるが,あの交通量が近くにあっては,いつまで保つか不安に思う。もっとも,あの道は国道だった筈なので,三島市だけの努力では駄目なのかもしれない。
- 上記オセアニア学会のコマンドその1がやっと終わってみると21:10を過ぎていて,帰りは久々に終電となった。
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