枕草子 (My Favorite Things)
【第305回】 使える大学(2000年5月24日)
- 薬のおかげか,安心したからか,ともかく咳が出なかったのでぐっすり眠れた。往路は6:43発あさま502号。
- 今日配信されたJapan Mail Mediaの読者からのレポートに,東京大学1年生からの,駒場の講義が無意味だという主旨のものが載っていたが,当時の自分を思い出してみれば,そう感じるのはもっともだと思った。無意味な講義があるのは駒場だけではないし,完璧な合理性をもつカリキュラムは机上の空論だから,駒場だけを悪者にして済む問題ではないが,あのカリキュラム編成の非合理性はひどいと思う。しかし,「使える大学」にするかどうかは,実は学生自身の積極的行動にかかっているのだ,ということを駒場の学生にわかってもらいたい。講義がなくても,関心がある分野の研究室を訪問して,ミーティングなり何なり,参加すればよいのだ。助手や院生に聞けば,参考文献の紹介なども,まず拒まないと思う。とくに,件の1年生は,基礎的な数学を勉強したいというのだから,本郷まで来なくても,空き時間に数理科学研究科の研究室に行って積極的に門を叩けばいいのだ。伸びていこうとする学問分野なら,まともにそれを志す若者を拒否する筈がない。
- でも,1年や2年のときって,そういう積極性が歓迎されるということに気づいていないんだよなあ。今にして思えば,勿体無いなあ。昨日と一昨日,進学振り分けの準備として教室紹介を聞きに来た2年生たちが,ほとんど一言もしゃべらないのにショックを受けたが,教室紹介ぐらいでは手の差し伸べ方が足りないということだろうか? 実際,駒場と本郷の断絶があるのは間違いなくて,広域科学科(理念によれば,目指すところは人類生態学とほぼ同じように思う)にある人文地理学の教官が人間生態学とかいう講義をもっていることは,最近までぼくは知らなかったし,たぶん,広域科学科に進もうと考えている駒場の学生は,本郷の人類生態学教室の存在を知らないだろう。もっとも,人類生態学を研究しようと思ったら,学部からこっちに所属するよりも,広域科学科に進んでおいて,大学院から来た方がいいかもしれないが。いや,そう考えると,人類生態学教室が広域科学科との連携を進めるべきなのかもしれない?
- 閑話休題。ともかく,大学というところは,使えるところにするもしないも,かなりの程度まであなた次第であるということを知っておくと,得だと思うぞ>件の1年生。
- 関係ないが,さっき生協から電話があった。ぼくのメインデスクトップマシンのグレードアップ用に注文していた部品はAthlon以外は届いたということだ。だからぁ,Athlon無しじゃ無意味なんだって。ちなみに,卒論生も公衆衛生実習の学生もシミュレーションをやることになっているので,もう1台Athlonマシンを買うことになったのだが,さっきFrontier神代に直接見積もりを頼んでみた(公費で買えさえすれば,何も生協を通さなくたっていいのだ)。
- 未来開拓の宿題を提出し,これから人類学会サテライトシンポの打ち合わせ。
- 打ち合わせは想像以上に順調に終わった。今後いろいろなところで広報活動がされていくと思うが,ここで第一報を出しておく。2000年11月5日(日曜日)13:00-17:00に東京大学安田講堂で開かれる,第54回日本人類学会サテライトシンポジウムの正式なタイトルが,「日本列島の人口潮流:ヒトはいかに生まれ死んできたのか」と決まった。講演者は,小山修三さん,五十嵐由里子さん,鈴木隆雄さん,鬼頭宏さん,金子隆一さんの5人で,高校生レベルで楽しめるようなシンポジウムを目指すということである。参加自由・無料なので,遺跡から先史人口のトレンドや分布を推定する話とか,骨から出生や死亡を推定する話とか,歴史時代に入ってからの出生や死亡の変化とかいった話に関心のある方は,ぜひご来場いただきたいと思う。ちなみに,ぼくはオーガナイザーの一員なので,ここでもroadieである(なんて,言うまでもないか?)。
- そういうわけで,帰りは21:30発あさま535号に乗れそうである。
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