枕草子 (My Favorite Things)
【第309回】 カシオペア(2000年5月31日)
- 上野駅で,面白いものを見つけた。公園口から入って直進し,浅草口に出る直前で左折し,フローラ上野ブックガーデンを左手に見ながら歩いていき,右手に1階に降りるエスカレータが見えたらそれを降りる。直進して左に回れば新幹線改札なのだが,エスカレータを降りたところですぐ右に曲がると,カシオペア寝台車のモックアップ(と書いてある)が置いてあるのだ。マンションのモデルハウスみたいな発想なのだろうと思うが,カシオペアの無駄とも思える豪華さと値段の高さからすれば,これくらいの宣伝投資は合理的なのだろう。もっとも,モデルハウスと違って,中に入れるようにはなっていなくて,ガラス越しに見るだけなのが残念ではある。mock-upということは大きささえ合っていればよいので,乗ると潰れる張りぼてベッドだったりするのかもしれないが。
- 5:00起床,往路は6:43発あさま502号。今日は雨が降りそうな,どよどよとした空模様で元気が出ない。フローラ上野ブックガーデンで文庫6冊を衝動買い。「レナードの朝」「DNAとの対話」「斜線都市(上・下)」「オレだって育てる子どもをつくろう」「複雑系」。
- 昼食前に病院で検査結果を聞くと,CRP(C反応性タンパクといって,炎症のマーカ)が1.1とやや高く,IgEが300と高かったものの,アレルゲンとしてはスギ花粉が著しく(5),ヒノキ花粉にも反応していた(4)だけで,他のアレルゲンには反応せず,白血球は正常範囲で,好酸球割合も高くなかったこと,先週受診後はほぼ咳が治まっていることから,喘息ではなくて,風邪による気道の荒れだったのだろうという診断だった。もう気管拡張薬は飲まなくていいということで一安心したが,落ち着いて考えてみると,確定診断がつく前はとりあえず飲んでみるという,現代医療の方向性を如実に表した治療方針だったのだなあと,やや批判的な気分になる。まあ,ある意味,仕方ないのだが。検査結果を見ながら解説してくださったのは良かったが,どうせなら値の一覧表をプリントしてくれればもっと良いのに,と思った。解説が終わったところで「もういいですよ」といわれたのだが,まだ喉に違和感があるのでリクエストして喉を診てもらったら,喉の粘膜は先週よりも荒れているということがわかった。どうも,一度荒れたために風邪の影響を受けやすくなっているらしい(アデノウイルスが繁殖しやすくなっているということ?)。風邪薬とうがい薬を処方されたが,基本的に風邪薬なんてものは対症療法なので,うがいをマメにやるしかないのだろうなあ。
- Nutritional EpidemiologyのMLからの情報で,昨日付けでCDCから,USAの新しい成長曲線データが発表されたことを知った。また臨床栄養系の研究では世界中で引用されるのだろうけれど,USAの標準でしかないことをきちんと意識して引用して欲しいものである。遺伝的バックグラウンドや気候,生活様式などすべて違っているのに,なぜUSAの子どもの標準的な体格を基準にしてよいと考えるのだろう? いや,基準化すること自体は比較をするための手段として悪くないのだが,判断基準としてはUSAデータが世界標準だというのは偏見だ。ヒトは工業製品ではないのだ。最近のゲノム疫学的な考え方によれば,複数の遺伝子座が関連しながら環境要因の制約を受けながら形質を発現するというのは当然だから,いい加減に臨床栄養系の論文でも,NICHSとかこのCDCデータとかのUSA標準の10パーセンタイル未満だからstuntedだとかwastedだとかいう短絡的な判断は通らなくなって欲しいものだと思う。
- 一日中人口学会の発表準備をしたが,完成度半分弱。間に合うだろうか? 泊まろうかとも思ったが,長野は既に雨がやんだという情報をつかんだので,21:30発あさま535号に乗る予定。
- 予定通り535号に乗ったが,昨日と同様ガラガラであった。
- 帰宅後,夕刊を見ながら食事をしていたら,セベソの事故によるダイオキシン汚染の影響を19歳未満で受けた男性の子どもに女児が生まれる比率がきわめて高かった(男児50人に対して女児81人)という記事が出ていた。以前記者の方に要望を出したのが効いたのか,最近の信毎の科学記事はソースが出ているのが嬉しい。Lancetの最新号だということなので,読んでみようと思う(Mocarelli P, et al. (2000) Paternal concentrations of dioxin and sex ratio of offspring. Lancet, 355: 1858-1863.なのだが,東京大学ではまだ全文は読めない)。コメントは環境研の遠山先生(実は人類生態の先輩)で,さすがに的確だと感心したが,むしろ遠山先生にコメントを求めた記者のセンスがいいことを褒めるべきかもしれない。
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