枕草子 (My Favorite Things)
【第312回】 健康余命とか(2000年6月3-5日)
- 金曜日の懇親会では,その前のシンポジウムの講演者と話す機会があって,県別各歳平均余命のパタンの比較や健康余命について疑問に感じたことをぶつけてみた。長野県がゼロ歳から成年までの平均余命は全国でも1,2を争う長寿県なのに,高齢での平均余命が全国平均程度に落ちるのは何故か? という点について,シンポジストの方は実質的な問題であるように解釈されていたが,「他県だったら若いうちに亡くなってしまうような身体が弱い方でも高齢まで生き延びることによる見かけの差異ではないか」と指摘したら,その通りかもしれないと納得していただいた。健康余命についてもいろいろあるのだが,基本的には,ただ長生きするのではいけなくて,健康でないといけない,という話である。なお,昨日付けでWHOから発表された推計によれば,日本は世界一だそうである,とメモしておこう。土曜日午後のテーマセッション「形式人口学の新次元」は,想像もしなかった大勢の聴衆が集まり,組織者の河野先生も驚いていらした。トップバッターとしては,議論も盛り上がったので,まずまずの話題提供ができたと思う。眠っている人の存在が気にならないほど聴衆が多かった……とまでいうとイヤミかも。でも,同時進行中の他のセッションを聞くことはお互いに不可能なので,このやり方は改めて欲しいと思うのである。発表時間を短くするとか,演題数を制限するとか,AAPAみたいに会期を長くして講演時間帯も朝から夜中までやるとか,なんらかの対策は可能であろう。
- さて翌4日は,朝からおにぎりと卵焼きを作って弁当箱に詰め,子どもたちを引き連れて牟礼村へ出かけた。りんごの摘果作業のためである。身体を動かすのは楽しいのだが,あれを数百本もやると考えると,りんご農家の方は大変だなあと思った。りんごの摘果が面白いのか,脚立に乗ること自体が面白いのかわからないが,子どもたちは十分に楽しんだようである。桃園で北信五岳を眺めながら(例によって遠くは雲がかかっているので,時折切れる雲間から,ではあるが),涼しい風に吹かれて食べるおにぎりの味は格別である。味わいは五感全部にあるといった人がいたが,その通りだと実感した(意味が違うような気もするが,ま,いいか)。
- 昼過ぎに帰宅後,息子がどういうわけか遊戯王カードを買いに行くといいだし(最近,息子の小学校1年生仲間で盛り上がっているらしい),12円だけ掴んで外に出てしまった。放っておく手もあったが,それではあまりに親として無責任かと思い直し,散歩にもなるし,徒歩40分くらいのところにある玩具の量販店に連れていった。しかし残念ながら,遊戯王カードというものは売られなくなったようであった(息子によるとローソンには売っているというのだが,とてもそうは思えない)。レジの人に聞くと,本屋にはあるかもしれないというので,三軒隣のBOOK OFFに入ってみたが,カードだけが抜き取られた攻略本らしきものが売られているのみであった。じゃあ新刊書店ならいいだろうと,道路の向かい側にある平安堂(長野では有名な大型書店のチェーン店)に入ったのだが,もはやピークを過ぎたのか(?),遊戯王などゲーム本のコーナーにもないのである。平安堂でもBOOK OFFでも去年は本の他にはCDしか売られていなかったのが,PS2発売のおかげか,いつの間にかDVDタイトルが揃っているのに驚きながらも,売れない本でももう少し揃えて欲しいものだと思った。結局,どうしてぼくが買ってあげなければいけないのかわからないのだが,息子にテレビマガジン,娘にたのしい幼稚園を買ってやり,納得して帰らせることができた。まあ,たまにだからいいか。
- 今朝は6:00長野発の始発に乗っているだが,月曜日であるせいか,いつもより混んでいるような気がする。昨日の疲れが出て,たいそう眠いのである。今日は,新しい実験機器の操作デモが午前中,ミーティングが午後あるが,それ以外の時間はAthlonマシンの組立てをやる予定。
- うっかりしていたが,生協を通して買ったAthlonはバルク品だったので,CPUクーラーがついていないのだった。もはやこの段階で1週間も2週間も待つことはできないので,昼食ついでに秋葉原に行き,私費を投じてMajestyIVを買ってきた。
- 実験機器の操作デモはわかりやすかったが,機器自体の仕様が今ひとつはっきりしなかった。テストすればわかることなのだが,逆に言えば,その程度の情報,なぜ公開しないのか,メーカーの姿勢としては古いように思う。ミーティングは発表予定者の1人が都合でキャンセルになったので,論文紹介1つとプログレスレポート1つであった。紹介された論文は,両性安定人口モデルにおける結婚関数についてPollardが提案したもの。ちなみに,ミーティング中に問題になった重み付き調和平均の利点を説明しているのは,おそらくウォルトスタッターが1990年にチュービンゲン大学から学位を得るもととなった博士論文に詳しく書かれているらしい。プログレスレポートはパプアニューギニア高地での子どものFood Sharingにとくに着目して行われた包括的な調査で,分析方針についていろいろ討論。どちらもそれなりに面白かった。人類生態学MLへの報告は本人たちがしてくれないかなあ,と期待しているのだが。
- ミーティング終了後も続けた甲斐あって,Athlon化は概ね完了。後はEthernetカード2枚とRANDOM Masterを挿し,ケーブルをつなげば,ハード的には終わりである。帰りは終電。月曜日には珍しく大宮まで空席なし。
- 帰宅後,新聞を読むと,イリアンジャヤがインドネシアからの独立を決議し,新国名「パプア」という記事があった。実は昼間,ソロモン諸島のクーデターというニュース(ガダルカナル島民が,金と権力を握っているマライタ島出身者に腹を立てて排撃ゲリラ行為を始めたのが去年以来の「エスニック・テンション」なのだが,今回のクーデターは,前大蔵大臣でマライタ島出身のノリ氏が首謀者となり,マライタ軍と警察を動かして,首相を自宅監禁するなどしたマライタ側の反撃といえる。今のところ無血)を知り,夏の調査の雲行きが怪しくなってきてうんざりしていたのだが,フィジーのスペイト氏による議会占拠といい,こうもメラネシアで政変が続くというのは,何か背後のつながりを感じてしまう。考えすぎだろうか?
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