枕草子 (My Favorite Things)
【第602回】 「わからない」という方法(2001年7月28日)
- 娘と一緒に(息子は友達数人と先に行ってしまったので)ラジオ体操に行ってきた。まだ始まって2日目のせいか,第2体操がきちんとわかっている人が少ないようで,前でやっている小学校高学年の子どもたちもてんでバラバラな動きをしていた。ぼくも知らないのでお手本を探したのだが,誰の真似をしたらいいのか迷ってしまった。帰って妻に聞いたら,彼女は完璧にできるそうなので,今度お手本になりに行くことを薦めておいた。
- 往路あさま504号に乗って,橋本治『「わからない」という方法』(集英社新書)を読み始めたのは,何もラジオ体操第2がわからなかったからじゃなくて,先日,信濃毎日新聞の記事で,橋本治が身体性の復権を熱く語っていた文章の中でこの本に触れていたからである。たぶん,彼が言いたいことは,鈴木光司が「新しい歌を歌え」とかで繰り返し触れていることともかなり近いし,去年書いた差別の構造などにも通底するものがあって,かなり共感できる。「わからない」から始めようというのは,当たり前のことだし,とてもシンプルな主張なのだが,さまざまなエピソードを絡めて1冊の本に仕立て上げてしまう才能には恐れ入った。
- 今日は早めに帰って自転車を買い,子どもたちと夜の昆虫採集散歩に出かける予定なので,効率よく仕事をしたいと思っていたのだが,ああ,もう正午を過ぎているではないか。
- 復路あさま557号では,「わからない」の続きは後回しにして,藤原てい「流れる星は生きている」(中公文庫)を読み始め,読了。数学者藤原正彦氏のエッセイのファンとしては,以前から読みたかったのだが,やっと先日見つけたものである。こういうのを読むと,現在の生活水準の高さが実感される。正義だとか思いやりだとか言っても,すべてが生活の余裕の上に成立しているものだということが良くわかる。
- 自転車は,錆びにくくパンクしにくくフレームも頑丈という3点を重視した結果,ブリジストンの特殊仕様の「タフトップ」というものに決めた。壊れた自転車も引き取ってくれるそうで良かった。納車が火曜日なので,火曜日に早めに帰る必要があるのはつらいが,まあ仕方があるまい。
- 20:00過ぎに,息子の友達がやってきたので,近所の神社まで散歩に行った。先日,ためしてガッテンとかいう番組で,町の中でも広葉樹林があればクワガタムシが採集できるとかいう話をやっていて,近所の神社でも樹液が出ていて昼間スズメバチやカナブンがたかっている樹がある! と友達同士で盛り上がったらしい息子たちが,夜歩くのにつきあったというわけである。こんな街中では,神社の中に数本の広葉樹があったところでカブトムシやクワガタムシが繁殖する筈はないと思ったが,1時間も歩けば着ける本物の森から飛んでこないとも限らないし,子どもにとっては実際に体験してみることが大切だと思ったので,文句を言わずについていった。
- 徒歩10分ほどで目指す神社に着き,狙いを定めた樹に懐中電灯の光を当てたところ,まず黒っぽい体長5センチメートルくらいのものが大量にゴソゴソ動くのが目に入った。クワガタかと思って一瞬驚いたのだが,気を取り直してよく見ると,それは全部ゴキブリなのであった。さらによく見ると,樹の表面を大量の大きな茶色っぽい蛾が覆っていて,気の弱い人だったら卒倒しかねない眺めなのだった。確かに,その中のところどころにカナブンやカミキリムシ(ウスバカミキリの大きいのにも見えるし,ミヤマカミキリの小さいののような気もする)の姿は見えるのだが,子どもたちはカブトムシやクワガタムシを期待していたわけで,見るのも気の毒なほどがっかりしていた。
- 野生生物相手の採集では空振りすることもある,ということがわかったら,それでも儲けモノの体験だったと思うがね,オジサンとしては。
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