枕草子 (My Favorite Things)
【第612回】 カブトムシ死す(2001年8月7日)
- 朝,食事をしていたら,娘が「カブトムシがひっくり返ってるよ」と大声でぼくを呼んだ。ひっくり返って起き上がろうともがいていることはよくあるので,またそれかなあと思って,「大丈夫だよ,ほうっておいて」と返事をしていたのだが,あまりに何度も「ひっくり返ってるよ。来てよ」というので,見に行くと,カブトムシのオスは死んでいた。合掌。もっとも,このところ毎晩のようにメスに乗っかっていたので,精力を使い果たしたのかもしれない。次世代が育てばいいのだが。
- 当然,死体があるわけだが,後で息子に電話して処遇を決めねばならない。埋葬するか,それとも防腐処置をして標本にするか。標本にして標本箱も作れば,ちょうど夏休みの工作の宿題にも充当できると思うが,飼い主である息子の意思をまず聞いてみるべきだろう。いずれにせよ息子が帰ってくるのは3週間後なので,何らかの防腐措置はしなくてはならんが。
- 雨が降っていたので長野電鉄に乗り,往路あさま550号。
- 昨日の続き。NHKが8月3日から5日にやった世論調査の結果では,「参拝した方がよい」が27%,「参拝しない方がよい」が31%,「いちがいには言えない」が39%だった。朝日新聞の世論調査結果とほぼ一致した傾向と見てよいと思う。昨日も書いたように,現在の大手マスコミが行っている世論調査は,概ね社会調査理論の基本は押さえているので,それほど違うはずはないのだ(時折おかしなものもあるが)。
- WEB投票の母集団は国民一般ではない,と昨日書いたけれど,ではどういう母集団かといえば,その投票ページを見た人のうち投票したいと考える人を代表とするような母集団である。共同通信提供の投票ページはYahooの靖国神社参拝問題特集ページの下のほうにあったので,Yahooのトップページ経由で来た人は,この問題に関心をもっている人に限られるし,投票ページへのリンク元のサイトにどういう主張をしているものが多いのかによっても回答者が偏るのは自明である。この問題が問題となった経緯からして,参拝賛成派の方が関心が高いのは明らかなので,WEB投票が賛成が多い結果になりがちなのは自明である。仮に,世論の動向を見ようとしてWEB投票をしているとするなら,サンプリングバイアスが大きくて信頼性がないということがおわかりいただけるだろうか。
- 研究室ではほぼ一日中データ入力をした。データを集めてきてから半年近く経ってしまうと記憶が薄れていて,文字も読み取りにくくなっているので,大いに反省した。帰ってきてすぐ入力しておけば,読み取りにくいところも記憶でさっと補えるのに,一々別の記録簿にあたったり,共同研究者の記録を見せてもらって照合していては効率が悪い。今回,Apache for Win32とHTMLとCGIを組み合わせた入力システムを確立したので,次回からは調査地での夜なべ仕事として入力してしまうことも可能だし,そうしようと思うが。
- 終電1本前あさま563号に乗って,サマンサ・ワインバーグ著,戸根由紀恵訳『「四億年の目撃者」シーラカンスを追って』(文春文庫)を読み始め,ワクワクしながら一気に読了した。前半JLBスミス夫妻を中心に展開される追跡も刺激的だが,ぼくが個人的に面白かったのは,後半明らかにされるシーラカンスの分布である。つまり,インドネシアからコモロ諸島とマダガスカルまでというとオーストロネシアンの拡散を思い出してしまうので,ヒトが連れて行ったというのは荒唐無稽にしても(物語的には面白いが),シーラカンスを追ってヒトが拡散していったとかいうストーリーができると……などと,つい思ってしまうのだ。インドネシアでの鳥羽水族館の動きについて,「天皇からの直々の,そして緊急の命によるものと思われた(p.258)」というのも面白い。そう「思われた」根拠はしらないが,もし根拠なしに日本の無理な動きの原因を「天皇から」と解釈したのなら,それは誤解だと思う。ケンブリッジ出身の取材力もあるジャーナリストがそう考える背景を想像すると,なかなか示唆に富んだ記述と思う。
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