枕草子 (My Favorite Things)

【第647回】 北回りルート(2001年9月11日)

まさかが本当になってしまった。朝5:00に起きて出かける準備をしていたのだが,NHKのニュースは無情にも,始発からあさま号は運転を見合わせています,なる情報を伝えてきたのだ。暫くすると今日は10時登校だという息子の小学校の電話連絡網が回ってきた。今日もまだ台風真っ只中という雰囲気である。しかし,おそらく昼には通過するだろうから,午後には世間は常態に復するだろうと思われる。その場合,午後からあさま号に乗って出勤するのでは,研究室に着くのが夕方になってしまって出遅れを免れないだろうから,やはり午前中に北回りで東京に行っておくのが吉だと思うのだ。いつもの2倍以上の時間がかかるが,まあ1日くらいならいい経験であろう。

時刻表を見ると8:12長野発みのり3号という特急が,直江津,越後湯沢での接続が良いことがわかったので,長野駅に電話して,長野新幹線が止まっていること,北回りが動いていること,フレックス定期で乗れることを確認し,7:30に家を出て長野電鉄に乗った。

長野駅に着くと,ちょうどみのり3号が入線してきたところだった。階段を降りたところの列に着いて乗り込むと,ちょうどその3号車は自由席で,うまく席を占めることができた。まあ,空いていたのだが。なお,みのり3号は6両編成で,1号車と2号車が指定席,3号車から6号車が自由席なのだが,全席禁煙であるのが素晴らしい。先進的だなあ。

直江津で特急はくたかに乗り換えて越後湯沢でさらに乗り換えても,長岡まで行って上越新幹線に乗り換えても,結局乗れるあさひ号は同じなのだが,距離的には直江津,越後湯沢経由の方が無駄が少ないので,直江津で降りた。しかし,はくたか号が遅れているとは思わなかった。みのり3号の車内アナウンスでは,越後湯沢方面はくたか5号は,2番線から10:01の発車です,と言っていたのだが,その1時間も前に出るはずの,はくたか3号が未着だったのだ。じりじりしながら,はくたか3号の入線を待っていたら,9:45頃入ってきた。結果的には,予定より早く越後湯沢に着けそうである。

越後湯沢では新幹線乗換え口が開放されていて,自動改札もノーチェックで通れるようになっていた。フレックス定期を見せて通ろうと思ったが,人が多すぎて一々チェックなどしていられないようであった。ここで,11:03発あさひ310号か,11:10発Maxたにがわ438号かという選択を迫られたが,ここは二股をかけてみた。あさひ号は旧車両で狭いのだが,停車駅が高崎,大宮,上野だけなので早く着く利点がある。だから,座れたらあさひに乗ろう,座れなかったらMaxたにがわに移ればいいや,と思って並んだのだが,着いた車両を見たら満席に近かったので,このホームに並んでいる人たちを入れたらすし詰め状態になると思われ,すっかり萎えてしまった。どうせ上野に着く時刻は20分も違わないし,午前休という状態なのはどちらでも同じなので,隣のホームに移動して,越後湯沢始発のMaxたにがわの2階席(しかもがら空き)に乗り込んだ。この車両は最新のピカピカのもので,自動販売機や公衆電話も他の新幹線とは一線を画するのだ。何より驚いたのは車両とデッキの間の自動ドアで,向こうが透けて見える3枚のすれ違い板でできていて,高級感が溢れまくっているのである。あさま号550番台にも,是非このMax車両を導入して欲しいなあ。

車内の公衆電話から研究室に電話をしたら,現在の東京は物凄い雨だということだったから,Maxたにがわを選択したのは正解だったといえよう。まあ,やっぱり疲れるのは確かだが。

しかし,上野から研究室までが一番雨が激しくてずぶ濡れになってしまったのは予想外だった。上野駅の駐輪場に停めっぱなしにしてあった自転車をそのままにしておくに忍びなくて,引いていったのも濡れ方が激しかった原因と思うが。研究室にトレパンを置いていて良かった。

今日はミーティングなのだったし,人口大事典の初校が届いたり,科研費の申請書が今年度からダウンロードするようになったという通知が届いたり,いろいろと忙しい。これでもし長野新幹線が動かなかったら泊まりだなと思っていたが,15:30頃のニュースで運転再開されたとわかり,ちょっと安心した。

書き忘れていたが,昨日,今日と長い間電車に乗っていたので,山内一也「キラーウイルス感染症 逆襲する病原体とどう共存するか」(ふたばらいふ新書)を読了したのだった。サブタイトルはお飾りだが,人畜共通感染症として新興・再興するウイルスを,新しい情報をふんだんに入れて現場にかかわった専門家の目でレビューしている名著であった。狂牛病やvCJDに関心があるというだけの人でも読んで損はないし,ニパウイルスとかウェストナイルウイルスとかシンノンブレウイルスとか,一時話題になったウイルスについてざっと知っておきたいという人にも好適だし,何年か前に香港で鶏を大量に殺さなければならなかった原因となったインフルエンザウイルスH5N1がどうやって出現したか気になっているという人にもお薦めだし,もちろん「ホットゾーン」で冷や汗をかいて,フィロウイルスについて詳しく知りたいという人の好奇心も満たしてくれる本である。著者の立場がはっきりしているので,読みやすい。ただそれだけにクールーの複合要因説には言及されていないことに代表されるように,新興・再興感染症の図式をある程度単純化している点には注意すべきと思う。

夕方になってやっと運行再開したばかりの長野新幹線に乗ろうというのに,いきなり終電1本前の時刻に合わせて上野駅に行くというのは無謀だろうか? まあ,駄目なら駄目で研究室に泊まればいいことだが。

結局,無事に終電1本前に乗れたし,4号車に座れた。案ずるより産むが易しということか。週刊アスキーを読んだが,とくにいい記事はなかった。タイピング練習ソフト特集は,新しいものばかりで,北斗の拳シリーズ,あしたのジョー,MIKATYPEといった定番に一切触れられていなかったので,相対的な比較が出来ない点が手落ちと思った。これでは役に立たないと思う。


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