枕草子 (My Favorite Things)
【第650回】 原文を読むこと(2001年9月14日)
- 娘の肘と膝に発疹ができているので,朝起きてからシャワーを浴びさせ,アクリノールで消毒した。ゲンタシン軟膏を塗ろうと思ったが,時間がないので,後は妻に託して家をでた。往路あさま550号。
- 昨夜電源をつなぎ忘れて眠ってしまったので,vaioのバッテリー残量があまりない。仕方がないから,「子どもという価値」の続きでも読もうと思う。
- 原文を読むことは大事だと思う。ブッシュ大統領が11日に出した声明の原文は,日本の新聞やテレビが伝える論調よりもずっと落ち着いているようだった。最も優先すべきことは傷ついた人を助け,これ以上の攻撃から国内及び世界中の我が国の市民を守るために必要なすべての予防措置をとることだと明言した上で,テロリストとそれを匿う奴らを区別せず「法の下に裁く(bring them to justice)」と言っていた。justiceという言葉を日本のマスコミはずっと「正義」と訳しているのだけれど,よりコントロールされた語感をもつ「裁き」の方が近いのではなかろうか。
- 翌日の声明の原文には,「昨日我が国に対して実行された意図的で致命的な攻撃は,テロの行為以上のものだった。それらは戦争の行為だった」「アメリカの人々は,我々がかつて直面したことのない敵に見えていることを知る必要がある。この敵は物陰に隠れ,人命を何とも思っていない。この敵は,罪もなく疑うことも知らない人々を餌食にしておいて隠れ家へと走る」とあった。先に引用した場所だけ見ると,「テロ」は国内法で裁かれるべき犯罪で,戦争は超法規的措置を含むと考えれば,「超法規的措置をとるぞ」という宣言にも聞こえる。しかし,後に引用した部分まで含めて考えると,これは,「この犯人は人間とは見なさない」という意味だと思う。つまり,池田小殺傷事件の犯人を人間とは思えない,というのと同じレベルで,行為の凶暴さを形容する言葉だったのだと思う。まともな人間がやれる行為ではないということを示す発言であり,納得できる。
- ちょっと恐いのは,異教徒だからといってエイリアンだという短絡に走られることだが,13日に出された,14日を犠牲者のために祈り追悼する記念日にするという声明でも,テロリストとそれを匿っている奴らは厳しく処罰されるべきだと言っているし,フレッチャー報道官のマスコミに対する質疑応答も,マスコミの犯人の決め付けに対して根拠は何かと問い返したりしていて,米国政府の対応は一貫して慎重であることがわかった。
- だから,もっと恐いのは,マスコミと世論が相俟ってマスヒステリーが起こることだと思う。このような凶悪かつ愚劣な犯罪を防ぐためにはどうしたらいいのかを考え,犠牲者の冥福を祈ることが,我々にできるすべてなのではないだろうか。
- 科研費申請の記入要領や様式が学内の研究協力課からダウンロードできるようになったのは便利だ。原簿票という悪習がなくなったのは評価に値する。ただ,pdfとWordと一太郎だけではなく,TeXを入れて欲しかったと思うし,もっと言えば,WEBのフォームからテキスト入力するだけで済むようにして欲しかった。本人認証を含めても大した手間ではないと思うのだが,技術力がないのか,それとも偉い人が保守的なのか。
- ともかくそういうわけで科研費の応募書類も作り始めたのだが,他にも来週月曜に学生実習で配る書類の準備とか,仕事ばかり増えていく(予想されなかったわけではないので,正確に言えば締め切りが近づいてくるだけだが)ので,どうにもこなせない。そんなときに限って娘が発熱したというので,今日は終電の3本前に帰ろうと思っている。しかし,朝の発疹と発熱の間の関係は不明だが,明日が保育園の運動会なのに,参加できなかったらかわいそうに思う。
- 本当は復路新幹線でも仕事をしようと思っていたのだが,19:58発あさま号が混んでいて座れなかったので,柘植久慶「わが子を危険から守るために」(ハルキブックス)を読み始めた。熊谷で座れてからも読み続け,上田過ぎで読了した。前半は最近起こった凶悪犯罪の実例を検証し,どうすればよかったかを考察する内容で,後半は実戦編というか,実際に凶悪犯人に出会ったときどう対処すべきかという手技がイラスト入りで解説されている,という内容だった。とくに前半は極論も多々あったが,肯ける主張も多々あった。三好万季さんの「4人はなぜ死んだのか」を読んで感じたのとはまた別の意味でも,子どもを危険から守り,セルフディフェンスができるように育てる必要を感じた。もっとも,自分が危険に直面したときに冷静に動けるかというと,甚だ心許ないのであるが。後半の実戦編を強引にまとめてしまうと,ポイントは3つだったと思う。(1)刃物をもった犯人には,椅子や棒,あるいは靴を武器とし,上着でガードして正対し,カウンター的に攻撃する,(2)金属バットなどをもった犯人には,内懐に飛び込んで間を無くし,膝で攻撃する,(3)いずれの場合でも,犯人を一度倒したらすかさず蹴りを入れるなどして畳みかけ,反撃意欲がなくなるまで叩きのめす,ということである。中途半端にやると犯人が逆上するので,戦意喪失するまで叩きのめす必要がある,というのはよくわかる。
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