枕草子 (My Favorite Things)
【第660回】 条件分岐(2001年9月24日)
- 今日もまだ休みなのだが,仕事が溜まっているので,妻に子どもの相手を頼んで出勤することにした。往路あさま502号は,いつもよりずっと空いている。三連休の最後の日に,こんな朝早い電車に乗る人は少ないということだろう。
- NIIで提供されてきた公募情報が今月一杯で終わり,10月1日からJSTのJRECINというサービスに統合されるようだ。登録せねばならないが,新着情報・希望する情報をメールで配信してくれるというサービスも始まるようなので,これまでより便利かもしれない。いや,そんなサービスが必要ない身分になれればもっといいのだが。
- 先週から,信濃毎日新聞などで連載をもっている環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが流しているenviro-newsというメールマガジンを読んでいる。最近の記事は米国の同時多発テロ関連の話題に偏っているのだが,内容が新しくて濃いのが素晴らしい。戦争は最大の環境破壊であるという論旨から,その話題のフォローを詳細に行うという姿勢には賛同する。枝廣さん自身を含め,メールマガジンに登場するメッセージ群で異口同音に語られているように,テロとは何の関係もない一般市民に大きな被害を出すような「戦争」へと走るのは愚の骨頂だと思う。少なくとも「原文を読むこと」を書いた時点までは,米政府は冷静に「犯人を捕まえて法の下に裁く」という姿勢だったのに,その後の展開からすると,マスコミを使って首尾よくマスヒステリーを起こすことに成功したので(あるいは政府自身も巻き込まれているだけなのかもしれないが),憂さ晴らしに加えて一気に対抗勢力を叩き戦時景気を起こそうという一石三鳥を目論んでいるように見える。枝廣さんのメールマガジンを読むと,こういうときこそ,国際社会が歯止めをかけて,犯人を法の下に裁くという枠組みを遵守するよう働きかけねばならない,と心ある人には見えているのだなあ,とわかって心強いが,問題はそれが米政府を止める力になりうるかどうかだと思う。この状況下で,「同盟国である米国を強く支持し」とか言ってしまう日本政府のナイーヴさには目を覆いたくなる。この点,G8共同声明が「対テロ」という立場を貫いているのと対照的である。
- しかし,具体的にどうしたらマスヒステリーを止められるのかがわからないのが歯痒い。戦争反対の署名はしてきたが,それくらいでは,戦争のお先棒をかつぐ軽薄なアジテータが引っ張るマスヒステリーを止めるのに実効が乏しそうだ。
- デザインに基づいた統計解析では,考えられるあらゆる可能性を列挙し,検討対象となっているケースが,どれほど偶然では起こりえない現象かという確率を計算して検定を行う。いま必要なことは,これではないだろうか。つまり,すべての条件分岐を考慮し,米国民だけにとってでも戦争行為が合理性をもつ可能性が万に一つもないことを明示するのだ。武器商人は潤うかもしれない。テキサスの原油のディーラーは潤うかもしれない。しかしテロがなくならない限り,市民にとって利益はない。その上,誰かが言っていたような気がするが,「いじめられっ子の反撃に切れて集団リンチをかけ,いじめられっ子を殺してしまった場合に,リーダーを除くいじめグループの全員が感じるであろう苦い後悔」と同じような後悔を味わうであろうことは目に見えている。すべての条件を列挙するのは手間がかかるし,データも力も足りないのだが,誰かやってくれないだろうか(本当は他力本願ではいけないのだろうが)。
- 今日は早めに帰るという約束をしてきたので,16:54上野発あさま523号で帰途に着く予定である。予定の半分も仕事が進まなかったのは,予定が欲張りすぎなのだろうか。滅多に乗らない時間だが,あさま523号の混み方は半端じゃなくて,高崎まで座れず,足が疲れた。
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