枕草子 (My Favorite Things)
【第732回】 忘年会(2001年12月11日)
- 往路あさま504号。昨日と違って既に明るく,空の半分くらいは青空でさえあるのに,やはり粉雪がちらついている中を自転車を漕いだ。昨日より寒いような気がするのは,昨夜の降ってくるような星空から考えると,放射冷却だろう。普通の手袋はしているのだが,それでも手が悴むので,明日からは冬用の厚手の手袋に変えよう。
- 今日は忘年会である。人類生態学教室の忘年会は,スタッフ,院生,研究生,非常勤雇用職員以外にも,近くの卒業生や以前スタッフであった方々も呼ぶので,ミニ同窓会のような趣になる。今年は卒業生で寿司研究家のOさんの推薦される築地の寿司屋「江戸銀」別館で行われるので,美味を堪能できることであろう。寿司屋だったら巨大テーブルということもありそうにないので,話がしにくいこともあるまい。そう思って楽しみにしている。
- ただ問題は,今日も出席される前教授から夏頃頼まれた文献複写をまだやっていないという,恐ろしいことを思い出してしまったことである。昼のうちにできるだけやってみようとは思うが,今日も解剖学講義の資料配りと出席取りがあるし,自分の講義準備もあるし,ミーティングもあるし,どれくらいできるかは未知である。
- 研究室についてメールを見たら,悪意のこもったものが一通入っていた。捨てようかと思ったが,気になったのでとっておくことにした。今朝7:30頃,そのメールを出した方,どうしてそのような悪意をもたれたのでしょうか? まさか,書評掲示板で批判した本の著者の関係者とか?
- 忘年会を意識したのか,ミーティングは記録的な短時間で終わった。1つめは去年のAm. J. Epidemiol.に載った論文で,低濃度域での飲料水中の砒素濃度と爪の砒素濃度の関連を検討し,飲料水1リットル中に1マイクログラム以上の砒素が溶けているところでは,水中濃度と爪の濃度に有意な相関があったというもの。しかし,だからといって爪が砒素曝露のバイオモニタリングサンプルとして使えるというのはたぶん言い過ぎだろう。水中濃度が1マイクログラム/リットル未満のところでも,爪の中の砒素濃度はかなり高いサンプルもあったことを,著者は食物やタバコなどからの曝露によるのだろう,と論じて逃げているが,曝露量が少なくても爪に蓄積してしまう人もいるという可能性を排除できる根拠がない。2つめは一昨年のInt. J. Obesityに載った論文で,ニュージーランドで白人とポリネシア人(マオリと,もっと最近の移入者であるサモア人)の身長,体重,皮脂厚,BIAによる抵抗,DEXAによる体水分推定値,を測定し,DEXAから推定された体脂肪をBMIに回帰して得られる回帰係数が白人とポリネシア人で違うことを示し,異なる集団では同じBMIのクライテリアを肥満の基準に使うことは不適当であると結論し,さらにポリネシア人での体脂肪推定をBMIと年齢だけで十分な妥当性をもってできることと,その回帰式を提示したもの。定性的には当然の結論だが,定量的に示したのが偉いのだろう。とはいえ,統計手法には若干疑問が残った。
- メモ。爪の砒素の論文で,爪や髪をscleroproteinであると言っていて,ぼくはatherosclerosis(動脈硬化)からの類推で,硬いタンパクという意味かなと思っていたのだが,ランダムハウスを引いてみたら,「硬タンパク質」というタームなのだった。『水,塩類水溶液,弱酸,弱アルカリ,アルコールなどに溶けない繊維状の単純タンパク質;albuminoid ともいう』とのことである。一つ覚えた。
- 忘年会は,割と落ち着いた雰囲気で進行し,21:00過ぎにお開きとなった。卒業生も大勢来たし,刺身も寿司も揚げ物も美味だったし,座敷で簡単に席が変われたので,いい会だったと思う。お疲れ様でした>竹内君。帰りは終電。
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