枕草子 (My Favorite Things)
【第755回】 推薦(2002年1月10日)
- 往路あさま504号。本当は502号か550号を目指していたのだが,寝坊した。
- キーワードファイルをもってきそびれているので,今日の往路新幹線では,ベストサイエンスブックに推薦する本をリストしておく。とくにこれだという本はなかったので,5冊選んで,各1点にしよう。
- 先日も候補に挙げたが,科学的精神に溢れている,という意味で,森博嗣『臨機応答・変問自在』と橋本治『「わからない」という方法』は外したくない。どちらも集英社新書である。しかし,この手の本を2冊入れると残り3冊には収まらないので,残念ながら橋本治の方を外そう。
- 杉本賢司『「千年住宅」を建てる』(ベスト新書)は,環境の世紀と言われる21世紀最初のベストサイエンス推薦書としてふさわしいと思うので入れよう。
- 山内一也「キラーウイルス感染症 逆襲する病原体とどう共存するか」(ふたばらいふ新書)は3月に出て,一度は絶版かとも思われたのだが,狂牛病問題が世間で盛り上がったせいで,平積みにまでなった。nvCJDみたいにマスコミに取り上げられたものについてだけ,あれほどまでに大騒ぎする心理には危険を感じるが,本書は間違いなく名著なので,これが売れたのは良かった。
- 川口敏『死物学の観察ノート 身近な哺乳類のプロファイリング』(PHP新書)も,一般人を生物観察の迷宮に惹きこみ,ひいては科学への関心を高めるのに効果的だと思うので外せまい。
- あと1冊ならば,年末に出た,伊藤利朗「カラスもびっくり! バイオカイト:生物をまねたタコは世界一高く揚がる!」(講談社ブルーバックス)を挙げるべきだろう。税別1400円という値段は,ブルーバックスにしては高いと思われるかもしれないが,8cmサイズのCD-ROMがついていて,型紙ファイルや動画が含まれているので決して損ではないと思う。著者の,凧にかける情熱ゆえか,極めて面白い。物理が苦手なぼくでも,流体力学の面白さが少しだけわかったような気がした。暇がないのに,実際に作りたくなって困ったほどである。バイオカイトが如何に画期的な凧であって,どうして微風でも良く揚がるのかということが納得のいく理論的説明とともに与えられていた。普通の凧では失速状態で揚がるので力学的に飛行理論が定式化できないというのは知らなかった。ただ,「生物をまねた」とあるわりには,バイオメカニクスの記述はあんまりなくて,外見を生物に似せて作ったということだったのが,ちょっと残念だったが。
- 次点としては,三好万季『4人はなぜ死んだのか インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」』(文春文庫)と石弘之,安田喜憲,湯浅赳男『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』(洋泉社新書y)を挙げたい。これらも上に挙げたものに決して劣らぬ名著だと思う。
- 一日中索引作りを続け,終電1本前で帰途に着いた。高崎でバッテリーが切れたので,あとは眠っていくことにした。
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