Top
個別メモ
Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.
【第1154回】 今日も朝からICTM(2008年10月1日)
- 6:00過ぎに目が覚めた。これまで2日間が嘘のような晴天だ。泊まっているホテルの部屋は8階にあって東側に窓があるので海から上る朝日が美しい。暫くゆっくりしていたい気もするが,最初の口演は8:00から始まるので7:00過ぎには出発せねばならない。
- 7:15頃にホテルを出るバスに乗ったら,7:55頃にICCに着いた。ベストタイミングといえよう。メールチェックをしていたら最初の口演が始まってしまった。これから行く予定。
- ずっと新しい抗マラリア薬の話を聞いているのだが,ファーマコキネティックスはやはり難しい。個人ごとに薬剤の体内動態が違うのをランダムエフェクトとして吸収させるためにmixed modelを使ってみたり,できたモデルに対してはベイズモデリングとかいって1000回のブートストラップでパラメータ推定をしてみたり。でも,モデルの適合度が何によって示されているのかを言ってくれなかった。誰も質問しないので,質問すればよかったか。
- 朝はホテルの部屋で昨夜エカさんが買ってくれたパンを貰って食べただけだし,昼はサンドイッチとバナナのフリーランチを食べながらポスターの前に立っていなければならないので,コーヒーブレイクのタイミングを使って,エカさんとICC内のレストランに入って早めの昼食にした。辛い海鮮ラーメンらしいと推測されたメニューを頼んでみたら,これが大当たりで美味だった。おまけについてきたブレッド&バターはラーメンとは合わなかったが美味だった。韓国は美味しい。
- 次のセッションは満腹のせいか眠気がこみあげてきて困ったが,途中から面白くなって眠気が飛んだ。昼は昨日と同じくポスターの前に立っていたわけだが,昨日より人通りが少なくて暇だった。それでも何人か古くから知っている先生が足を止めて質問してくださったので救われた。もっとシンプルでわかりやすい話にすれば良かった。
- 今回のICTMでは,かなり多くの発表が新薬のクリニカルトライアルで,結果の提示で原虫クリアランスタイムをカプラン=マイヤ法といって示していたのが目に付いた。しかし打ち切りはないと思うので,普通にサバイバルカーブといえばいいと思うんだが,どうしてわざわざカプラン=マイヤというのだろうか。新薬と対照薬でクリアランスタイムの違いを分析するのもログランク検定を使っている例が多かった。もう少しやりようがありそうな気もするが。あと,服薬と食事の関係をみた研究も多かった。アーテミシニンは脂肪の多い食事と同時に食べる方が効果が高いとか,別の薬は脂肪と一緒に摂ると大量に摂取しないと効かないとか,クロロキンは食事とは関係ないとか。ソロモン諸島ではほぼクロロキンしか使ってないので気づかなかった視点だ。
- 午後のセッションでは,韓国のDMZ近くの三日熱原虫のPYRAMAXによる治療の話があった。最短潜伏期間が長い(77人中55人が6ヶ月以上)のが特徴とのこと。それゆえ,ほとんど夏しか流行しない。研究目的は,合併症の無い急性の三日熱マラリアの成人患者についてPYRAMAXとクロロキンの治療効果を比べること。Primary Endpointは治療後14日目の治癒割合。Secondary Endpointも別にみる。安全性のEndpointとして副作用の有無などもみる。患者40人をランダム割付して二重盲検。結局最終的な参加者は19人(途中の表では18人?)だったようだが。結果として14日目の治癒率は100%だった。副作用は頭痛などがあったが,マラリアの症状でもあるのでわからない。熱が下がる方が原虫が血中から消えるより早かった。DMZを挟んですぐ北にある北朝鮮はどうなっているのかという質問があったが,北朝鮮はデータを開示しないので分からないという返事。でもたぶん北朝鮮から来ているのだろうと推測しているそうだ。
- PYRAMAXのファーマコキネティックスの発表が始まった。ASはわりと速やかに代謝されてDHAに変化する。また,毎日1回与えても蓄積せず,同じ体内動態を示す。ASの生物学的半減期は0.6時間,DHAの生物学的半減期は1.7時間とのこと。人によって体内状態は異なるので,Population Pharmacokineticsをするしかない,ということで,またもや非線型のmixed modelであった。NONMEMというソフトのver.6で解析していた。どういうソフトなんだろうか? Rのnlmeライブラリのnlme()でもできそうな気がするが,と思ってhelp.search("mixed")で調べてみたら,drcライブラリのmixdrc()という,ほとんどこの目的にぴったりの関数があった。この分野の人たちも積極的にRを使えばいいのに。意外に解析法の発表がなかったので,ファーマコデータを無料できれいに解析する方法を発表したら関心を集められそうな気がする。次回はそれが狙い目かも。
- 後はPYRAMAXのPhase III trialの話が続いた。MMVがいろいろやっているのはわかったが,新薬が効くのはある意味当然で,ただ治験データを示されても,あんまりScientificな面白さはないので疲れた。
- コーヒーブレイクになったので,再びメールをチェック中。コーヒーを飲んでふらふらと歩いていたら,本の展示の中に"Environmental Epidemiology"というタイトルでOxford Univ. Pressから今年出た面白そうな本を見つけた。しかし何もここで買う必要はなくて,Amazonで注文すればいいので値段も聞かなかった。今日の最後のセッションは知り合いが何人か発表することもあって住血のところに行った。根絶に近いところまで持っていけたのは凄いことだと思うが,たぶんラットやイヌが宿主になっている限り,完全な根絶は難しいと思うので,この低感染割合の状況で,どこまで対策のmotivationを持ち続けられるかが課題だと思った。
- ポスターを回収して(18:30から回収ということになっていたのだが,その時刻には既に大半のポスターは撤去されていた),晩飯に出かけた。African MuseumというのがICCの近くにあるので行ってみたら,ちょうど閉館するところということで,その隣にNative料理の店があることがわかっていたので入ろうとしたのだが英語が通じないようだったので諦めて,来るときにバスの中から目をつけておいたPREMIUM FAMILY RESTAURANTという店に入った。ここもメニューがよくわからなくて,とりあえずキウィジュースを頼んでから,ステーキを頼んだのだが,実はBUFFET DINNERというのを頼むのが正解だったようだ(ここの店員も英語はダメだったのだが,日本語がわかる店員が1人いた)。まあステーキも美味かったのでいいのだが,満腹した。そこで腹ごなしにワールドカップスタジアムまで歩こうと,歩き出したのはいいのだが,一向に着かなくて困った。途中,道路標識に残り6.8 kmと表示されたので歩くのを諦め,タクシーに乗った。3200ウォンだったから,日本のタクシーの値段からすると信じがたいほど安い。E-MARTで韓国海苔を買い,リムジンバスに乗ってホテルに帰り着いたのは22:00頃だった。心地よい疲れといえようか。地球研の門司先生が同じホテルだとは知らなかったので,途中からバスに乗ってこられたときは驚いた。
▼前【1153】(ポスター掲示とか口演を聞いたりとか(2008年9月30日)
) ▲次【1155】(滝を見てからICTMに行って帰国予定(2008年10月2日)
) ●Top
△Read/Write COMMENTS
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]