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【第1461回】 雨になるらしい〜『イルカと墜落』読了(2009年11月17日)

『イルカと墜落』読み中
6:00起床。往路あさま506号。天気予報によれば,今日の昼はほぼ全国的に雨らしいが,まだ降っていなかったので長野駅までは自転車を使った。でも群馬側はバスを使うつもり。沢木耕太郎『イルカと墜落』はいろいろと琴線に触れる。ビブラマイシンを毎日飲むというマラリア対策はよくわからない。たぶんクロロキンを毎週1回飲む方が予防薬としてはふつうだったと思う。それとも,あの頃,南米は既にクロロキン耐性が広まっていたんだっけ?
群馬は雨
群馬は既に雨だったので,前橋駅からバスに乗った。降りるときの方が乗ったときより雨脚が強まっていたように思う。これは一日中天気が悪そうだ。この時期は雨も嫌だが,急に寒くなった気がする。体調管理に気をつけねば。
R-2.10.0環境整備中
パッケージ全部インストールをさせようと動作させたまま帰宅したデスクトップマシンであるが,研究室に着いてみたらRがハングアップしていた。たぶんパッケージの2.10.0への対応がまだ完全ではないのだろう(その割には,2.9.2からのアップデートインストールは問題なくできたが)。考えた末,日常的に使っているパッケージだけをdep=Tでインストールすることにした。後は必要になる都度インストールして使えばいいのだ。デスクトップマシンは基本的にネットワークにつながっているわけだし。とりあえずepitools,Rcmdr,Epi,sem,maptoolsをインストールしたが,Rcmdrの依存パッケージがやたらに多くて時間がかかった。ちょっと肥大化しすぎではなかろうか。
進化医学宣言
PNASの目次メールでNesseという名前が目に止まったので当該論文(Making evolutionary biology a basic science for medicine)(リンク先はabstract)をダウンロードしてみた。ざっと目を通した感じでは,そんなに目新しいことは書かれていないようにも思うが,これだけ錚々たる著者が意見表明をしたということには価値があると思う。ファーストオーサーがNesseであるからには,もちろんこれは,進化生物学を医学教育の根本に据えよという高らかな主張なのである。たぶんありえないが,もしこの主張を導入するならば,現在のコアカリキュラムは,全面的に変える必要があるだろう。
長寿革命セミナー
まるで結婚式の案内状のような体裁の郵便物が届いたので何かと思ったら,厚生政策セミナーの招待状であった。「長寿革命」というタイトルで,基調講演者もパネルディスカッションのパネリストも,人口学会関係で見知っている第一線の研究者の名前が並んでいた。こんなに面白そうなセミナーは,招待制ではなく公開にすべきであろうと思って検索したら,ちゃんと公開されていた(事前申し込みが必要で先着順で300人までだが)。日程的には微妙なところなのだが,これは聞きたいなあと思う。
『イルカと墜落』読了
復路あさま547号で,沢木耕太郎『イルカと墜落』文春文庫,ISBN 978-4-16-720915-5(Amazon | bk1 | e-hon)を読了。イゾラドと呼ばれる,外部と交流のないアマゾン流域原住民を訪ねた旅を語っている本。NHKスペシャル取材クルーとして行った2回の旅で(結局この2回では取材が終わらず,巻末の文庫版解説でこのクルーの中心人物であるコクブン氏というNHKディレクターが触れているように,3回目の旅を経て漸くテレビ番組ができたそうだが,本書が書かれた時点では2回だった),1回目の予備調査は,さまざまな調整や準備をしつつ,カワイルカと出会った「イルカ記」としてまとめられ,まあ普通なのだが,2回目の本来なら本取材になるはずだった「墜落記」は,日本を出発するときにちょうど米国同時多発テロ911の影響で(しかもその直前は台風が荒れ狂っていて)ブラジルに行き着くだけでも散々苦労した挙句,乗っていたセスナ機が墜落してしまい,開拓農民のトラクタから救急車に乗り継いで公立病院の救急部に運び込まれた顛末を綴ったもので,何とも凄まじい記録であった。ブラジルの救急医療の実際の一端を知ることができるというだけでも価値のある記録だと思うが,その経験の凄まじさに比して感情を抑えた淡々とした筆致がこの著者らしい。友人であるらしい俳優の役所広司とのメールのやりとりも,やりとりをしている自分を見つめる外部の眼をもった人の記述であるように思えた。沢木耕太郎さんはフィールドワーカーなんだと思う。本書に書かれた経験を経て,それをより自覚されたのではなかろうか。イゾラドの後,ヤノマミと半年生活して強烈な番組を作り上げたコクブン氏の文庫版解説は必読である。3度目の旅での沢木耕太郎さんの言動が,未知なるものとどう向き合うべきかというフィールドワーカーの基本姿勢を明示してくれている。
 唯一引っかかったのは,墜落したセスナを操縦していたパイロットへの敵意である。辺境での旅において船にせよ飛行機にせよ乗り物のキャプテンの指示は絶対である。たぶん,信用できないと感じた時点で違うパイロットを探すべきだったんだろうと思う。いや,きっと沢木さんはパイロットを変えたかったのだろうけれど,リオ・ブランコでのリーダーだった「死度新」ポスエロ(ぼくはこの苗字の方にも「歩末路」と当て字してみたくなった)氏の決断だから仕方なかったのだろう。ぼくも1989年にパプアニューギニアでの調査に参加したとき,調査機材が多かったのでセスナのような小型機でのチャーターフライトに乗ったことがあるが,霧がかかって見通しが悪くなったり気流が悪くてアップダウンするだけでも墜落と紙一重の恐怖を感じていたが(まだ修士課程2年のときで,初めての海外経験だったせいで肝が据わっていなかった),飛行機の窓から,燃料が漏れだしているところなんか見つけてしまったら,恐怖のあまり固まってしまいそうだ。そういう状況で普通に動けている沢木さんは尊敬に値すると思った。

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