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個別メモ

Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.

【第2122回】 旅に出る夜（2012年2月21日）

• 6:00に起きて娘と朝食をとり，食器を洗って流しをクリアしてから出発。往路あさま510号。今日は午前中に県庁で会議があり，午後は夕方に疫学勉強会で４章末の練習問題に答えてみる予定があるのに加え，たぶん呼び出した学生が２人来るはず。夜は19:30には大学を出て帰途に就かなくては，22:00ちょうどに長野を出る夜行バスに間に合わない。
• 県庁の会議は40分ほどで順調に終了した。少し必要なメールを打ってから昼食に行こうと思う。
• 昨日のLearnBayesのbeta.select()関数の結果だが，石田先生からご返事いただいた（早速ご対応くださりありがとうございました）ので調べてみたところ，Rの起動直後にlibrary(LearnBayes)して，quantile1 <- list(p=0.9, x=0.5); quantile2 <- list(p=0.5, x=0.3)とパラメータ設定してbeta.select(quantile1, quantile2)としたら，[1] 3.26 7.18となった。そこで，何が問題なのか調べてみたら，quantile1とquantile2の順番が問題だったことが判明した。本では，p=0.9についてquantile2，p=0.5についてquantile1として，beta.select(quantile1, quantile2)としているので，結果は，[1] 3.26 7.19となってしまうのだった。たぶん石田先生が確認されたときは，quantile1とquantile2の順番を本とは逆にして計算されたのではないかと思われる。LearnBayesのバージョンの問題ではなかった。そこで，optim()を使ってbeta.select()より精度の高い計算をしてみた。コードは下記。

  initp <- c(3, 7)
  fitg <- function(params, data) { sum((data[,2]-pbeta(data[,1],params[1],params[2]))^2) }
  optim(initp, fitg, gr=NULL, data=cbind(c(0.3, 0.5), c(0.5, 0.9)))

  結果は，data=cbind(c(0.5, 0.3), c(0.9, 0.5))とした場合でも同じで，$parが[1] 3.263844 7.185331となった。ちなみに，beta.select()関数の最後のroundを外して出力させると，p=0.9，x=0.5が第１引数の場合に[1] 3.261370 7.183174，p=0.5, x=0.3が第１引数の場合に[1] 3.264409 7.185782となり，後者の方がoptim()の結果に近かった。
• 書き忘れていたが，日曜に，青木繁伸(2009)『統計数字を読み解くセンス：当確はなぜすぐにわかるのか？』化学同人，ISBN 978-4-7598-1327-2（Amazon | bk1 | e-hon）を読了したのだった。統計学の基本的な考え方について丁寧に例示しつつ説明している本で，概ねその意図は成功していると思う。ただし，最後の方では丁寧に説明するのに疲れたのか，例えばp.192はやや議論が粗い感じ。ここの本文でいう「上限値」は95％信頼区間の上限という意味で，表に載っている値は，動物の匹数をn，発がん率をpとして，(1-p)^n < 0.05をpについて解いた値になっているが，そうであることがどこにも書かれていない。ここは２項分布を想定して，binom.test(0, n, 0)が出してくる95％信頼区間の上限を採用してもいいはずだと思った。
• 復路あさま547号でも良かったのだが，545号に間に合ったので，長野駅に着いてから夜行バスが出発するまで40分以上の待ち。久々に平安堂に入ってみたら，WHOの進藤さんの本が出ていたので買ってしまった。進藤奈邦子『NHKプロフェッショナル仕事の流儀：新型インフルエンザとの戦い：私たちにできること。』イースト・プレス，ISBN 978-4-7816-0735-1（Amazon | bk1 | e-hon）である。バスに乗ってから暫く車内灯が点いている時間があったので，その間は読書ができたのだが，進藤さんの本に入るより先に，読みかけだった，後藤文夫『超高齢者医療の現場から：「終の住処」診療記』中公新書，ISBN 978-4-12-102142-7（Amazon | bk1 | e-hon）を読了。以前群大の医学部長だった後藤先生が，退職後に勤務している福島の病院の院長として，またその病院が属する社会福祉事業団の参事として，日々高齢者医療に携わる中で直面した，さまざまな問題点やその解決案を明確に綴った著作である。この病院は，障害者福祉施設や特養なども含め，総面積20万坪の敷地に総合施設の１つとして建てられたもので，施設内連携も取られているようだが，それでも制度の不備のため理想通りにはいかないことだらけであることがよくわかった。公衆衛生学の老人保健の講義をしていただけたら，素晴らしい講義になるのではないだろうか（それが無理なら，本書を学生に読ませてディスカッションさせるのも手かもしれない）。最後の方で，尊厳死とリビング・ウィルについて論考されているところは，ご自身の態度も含めて率直に語られている点に感銘を受けた。自分でもメモ書きを書いておくべきだろうと強く思った。2点だけ，あれ？　と思った記述があった。１つは，ベティ・フリードマン『老いの泉』を引用されているところで，倫理審査を通らなそうな実験だなということだ。昔の実験なのかもしれないが。もう１つは，農作業と料理で認知症を防ごうという小見出しの文章で書かれている「女性の場合には，食事の準備が有効です」(p.213)で，女性に限る理由はないと思う。むしろ，配偶者に先立たれた場合に，あまり死亡率が高くならない女性に比べ，死亡率が高くなることが知られている男性こそ，普段から食事の準備くらいできるようにしておくことをお薦めするべきだと思う。毎晩年齢と同じ回数以上の腕立て伏せを続けているというスーパーマンな後藤先生だが，料理はされないということだろうか。あとがきによると，本書は昨年1月に初稿が書き上がり，3月には出版に向けた打ち合わせが進んでいたので，もう少し早く出版されるはずだったところ，3月11日の東日本大震災が起こって，参事となっている社会福祉事業団が浪江町にも施設をもっていたこともあって災害対応に忙殺されたため，年末の出版になったようだ。あとがきの最後に書かれている東電と政府の不誠実さへの怒りは重い。

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