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生態学第1回
「生態学とは何か」(2001年4月12日)

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最終更新: 2001年10月15日 月曜日 00時02分

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講義概要

  1. ヘッケル(Ernest Haeckel, 1869)の造語:oikos(家庭) + logos(学)/economicsとの関係 oikos(家庭)+ nomics(管理)
  2. 生態学の定義:「生物とその環境との相互作用の科学的研究」の意味で,“生物の家庭生活” by Haeckel (1869)/「生物の分布と豊富さを決める相互作用の研究」 by Krebs (1972)/Krebsの定義のそれを,個体,個体群(同種の生物の集まり),群集(複数の個体群からなる)という3つの水準で扱う。 by Begon/Harper/Townsend (1990)
  3. 個体(organism)レベルでは…:どのように個体がその生物的あるいは非生物的な環境によって影響されるか,そしてまた,それらに影響を与えるかを扱う。
  4. 個体群(population)レベルでは…:特定の種の存在あるいは不在,その種が豊富か稀か,その個体数の変化の傾向や変動を扱う/2つのアプローチ=まず個体の属性を扱い,それからこれらがどのように結合して個体群の特徴を決定しているのかを考える vs 直接個体群の特徴を扱い,それからその諸側面を環境と結びつける
  5. 群集(community)レベルでは…:群集の成分あるいは構造を扱い,それから群集がどのようなエネルギー,栄養素,他の化学物質の経路を通るのか(群集の機能)を扱う/2つのアプローチ=その群集を構成する個体群を考えることでパタンやプロセスの理解を追求 vs 直接群集自体の性質(種多様性,バイオマスの産生速度など)を観察
  6. 生態学の広がり:生物学の中心分野の1つというばかりでなく,他の分野(遺伝学,進化学,行動学,生理学など)と重なる学際性をもつ,ただし,出生,死亡,移住といった,分布や豊富さに影響する特徴に最大の注意を払う/自然界の個体,個体群,群集だけでなく,人工の環境や,人間の影響を受けた環境や,人間の自然への影響(環境汚染や地球温暖化など)も扱う
  7. 研究の過程:観察と記述/説明あるいは理解(第1の目標)/モデルの構築/予測(第2の目標)/制御(第3の目標)
  8. 講義予定(2〜8):生物と環境の相互作用(個体レベル)/生物多様性を生み出す環境条件(環境の話)/資源としての生物〜生物ピラミッド(群集を記述し理解するための1つの方法)/生存と死亡の生態学(個体群レベル)/種内競争(個体群レベル)/種間競争(群集レベル)/被食捕食関係〜食う,食われる関係はどういう意味をもつか?(群集レベル)
  9. 講義予定(9〜13):分解者の役割(群集レベル)/寄生と病気(群集レベル)/共生(群集レベル)/人間化された生態系(発展)/人類生態学入門(発展)/後期は,「環境生態学序説」の事例を使って具体的な話を主にする予定。

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  1. 板書(専門用語,重要な点,図)を希望→やります
  2. 難しそうで不安→難しい概念もありますが,すべてわかろうとしなくても構いません。実例を出します
  3. 環境問題,遺伝,植物,ヒトの病気などへの期待→主に後期に応用事例へは展開します

なお私見では,生態学と環境科学に書いた意味で,生態学はまず第一に,生物を生物として扱う科学であることが重要な点だと思う。


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