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生態学第16回
「レッドデータブックの考え方」(2001年10月4日)

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最終更新: 2001年10月14日 日曜日 23時51分

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講義概要

レッドデータブックとは?
▼国際自然保護連合(The World Conservation Union: IUCN)は,絶滅の恐れのある生物(絶滅危惧種)を3段階(絶滅危惧Ia類,Ib類,II類)に分けたリスト(レッドリスト)を作成している。
▼レッドリストに載っている生物を紹介した本をレッドデータブックといい,段階分けをレッドリストカテゴリーという。
▼1994年以前はそうでもなかったが,1994年からは判定基準が徹底的に数量化された。この判定基準をレッドリストクライテリアという。
他の基準
▼CITES(ワシントン条約締約国会議)でも,絶滅の恐れの程度に応じて,各生物を附属書I, II, IIIに載せている。判定はIUCNとは独立。
▼附属書Iに載ると国際商取引は禁止,IIに載ると制限される。自国の生物を保護するために協力を求める場合はIIIに載せる。
レッドリストカテゴリー日本版(定義詳細
●「絶滅(EX)」 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
●「野生絶滅(EW)」 飼育・栽培下でのみ存続している種
<絶滅危惧=絶滅のおそれのある種>
●「絶滅危惧I類(CR+EN)」 絶滅の危機に瀕している種
●「絶滅危惧II類(VU)」 絶滅の危険が増大している種
●「準絶滅危惧(NT)」 現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
●「情報不足(DD)」 評価するだけの情報が不足している種
●付属資料「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」 地域的に孤立しており、地域レベルでの絶滅のおそれが高い個体群
レッドリストクライテリア(詳細PDFファイル
▼A〜Eのどれか一つを満たせば,そのカテゴリに入る。
クライテリアの問題点
▼ミナミマグロの場合,1996年時点でオーストラリアの推定値によれば,過去29年間に90%減少していたので,判定基準Aを満たし,CRと見なされた。3歳から7歳の魚は最近増えているので,危険を過大に見積もっている可能性もある。
▼基準Eなら紛れがないが,信頼性の高い絶滅予測ができるほど十分なデータがある場合は珍しく,基準AからDによらざるを得ない場合が多い。
▼情報が不足しているからといって対策をとらないでいると手遅れになる場合があると考えて,「予防原理(precautionary principle)」により,必ずしも絶滅危険性が高いことを証明できなくてもリストに載せるという判断。
▼地球環境問題は,概ね予防原理によっている。
ダルマガエル(絶滅危惧II類)
▼本州(中部地方南部,東海,近畿地方中部,山陽地方東部)に分布。
▼関東に分布するトウキョウダルマガエルとは近縁。
▼ほとんど水辺から離れないで生活する。足に吸盤がないので,U字溝に落ち込むと這い上がれない。田の区画整理で激減したと言われる。
カエルの減少の理由
▼皮膚が薄いので,環境変化の影響を受けやすい
▼区画整理など
▼ツボカビの感染
▼データは少なく,予測も難しい


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カエルの絶滅を防ぐには? 絶滅するとどういう影響?
どういう影響が出るかは予測できません。絶滅を防ぐ方法はカエルの種ごとに違っているでしょう。ダルマガエルだったら,田んぼのU字溝を壊して元の土の畦にすれば有効でしょう。
日本固有のザリガニは個体数が減っている? それとももともと少なかった?
ニホンザリガニは絶滅危惧II類VU。もともと分布は本州北部でしたが,個体数も減っています。
カワウソはもう絶滅している?
ニホンカワウソは,CRです。
レッドリストに載っている生物のうち,自然淘汰されてしかるべき存在のものはないのか?
わかりません。ただ,レッドリストは急速に個体数が減っている生物に適用される場合が多いので,ヒトの影響がある場合が多いでしょう。
アマガエルもあまり見なくなった気がするが,やはり弱いのか?
アマガエルは足に吸盤があるので,U字溝にトラップされる危険がない分,それほど減ってはいないようです。
蛍はどうか?
クメジマボタルが絶滅危惧II類,ミヤコマドボタルとコクロオバボタルが準絶滅危惧となっています。ゲンジボタルやヘイケボタルはまだ大丈夫なようです。
タナゴは?
ミヤコタナゴやニッポンバラタナゴ,スイゲンゼニタナゴが絶滅危惧IA類,イチモンジタナゴやゼニタナゴがIB類,セボシタビラやカゼトゲタナゴがII類,タナゴが準絶滅危惧です。
調査はどんな割合でどうやって実施?
生物種によっていろいろです。日本では維管束植物の調査が大規模かつ系統的に行われた例として有名です。

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