サイトトップ | 書評

書評:井端弘和『勝負強さ』角川oneテーマ21

最終更新:2013年12月16日

書誌情報

書評

ぼくは小学校4年の時に与那嶺ドラゴンズがV9ジャイアンツを破って優勝して以来のドラゴンズファンなのだが,わりと一貫していぶし銀の選手が好きだ。というわけで,井端選手のWBCでの大活躍には凄く感動したし,これまで何度も故障しながら,よく頑張ってきたよなあ,と思っていた。本書は,その井端選手が書いた自叙伝である。シーズン中に刊行されていたらしいのだが,12月になるまで存在を知らなかった。

本当に満身創痍という感じで,落合GMがとくに目を不安視して大幅な減俸査定になったのはわかる。あと,井端選手自身がショートストップに拘りを持ちすぎているので,高橋周平選手や堂上直倫選手が使える目処が立ってきた現状からしたら,退団は必然だったのかもしれない。ドラゴンズに居続けることよりも,ショートストップで居続けることを選んだということのようだ。

身体が動きにくくなる分,ポジショニングでカバーすることと,緊張しそうな場面での心の持ち方はさすがだ。これを一般化して考えると,何事でも,年を取って衰える部分の代わりに,何か経験を重ねることによって熟達する部分もあるはずだから,それを生かせば,年をとっても社会的役割を果たせる,と考えることもできる。とても示唆に富んだ本であった。

なお,これまで知らなかったのだが,井端選手が中学生でリトルシニアをやっていた時,野村克也さんが監督をしていたチームで練習させて貰っていて,内野として堀越に売り込んでくれたのも野村さんだったということだ。縁って大事だよなあ。

【2013年12月16日】


リンクと引用について