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書評:海堂尊『日本の医療 この人が動かす「海堂ラボ」vol.2』(PHP新書)

最終更新:2013年8月5日

書誌情報

書評

かつて,CS朝日ニュースターで,「海堂ラボ」という,医師にして作家の海堂尊さんが注目する日本の医療関係者を招いてインタビューする番組が放送されていた。CS放送のため,ほとんど制約無く海堂さんのリクエストで選ばれたという方々の人選が素晴らしいのだが,本書は,その番組の内容を収録し(この部分は『Voice』という月刊誌に東えりかさんが構成して連載中),そこにインタビューされたご本人のコメント,番組アシスタント駒村多恵さん(現在はNHKの「あさイチ」でレポーターのような仕事をしている)の素人の立場からのコメント,海堂さんからのコメントを追加した形で構成された本の第2弾である。

vol.1も大変に面白かったが想定ほどは売れなかったそうで,この第2弾の発売が危ぶまれた時期もあったという前書きには驚いたが,発売されて良かった。vol.1では白内障治療の赤星先生の回が印象に残ったが,vol.2では川崎病を発見した川崎富作先生,諏訪中央病院の元院長でありイラク戦争やチェルノブイリ事故の影響で身体に障害がある子供たちの支援をずっとしてきている鎌田實先生,バチスタのモデルというか,SAVE手術を開発した超一流の心臓外科医である須磨久善先生の回が興味深かった(他の本などからその業績については良く知っている方々だが,海堂さんとの対話で引き出される何気ない一言が刺激的であった)。また,破綻した病院を再生した村上智彦先生と白濱龍興先生の話は,保健行政論の講義をする上で参考になった。完結編となるvol.3が発売されるのが大変に待ち遠しい。

【2013年8月5日,2013年5月27日の鵯記より採録】


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