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書評:佐藤俊哉『宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ』(岩波科学ライブラリー)

最終更新:June 11, 2012 (Mon) (※サイト移転に伴うリンク先更新+続編の書評へのリンク追加)

書誌情報

書評

改めて思うが(非売品バージョン=豪華愛蔵版をいただいた時にも思った),これは名著だ。

今日演習した内容(約250KBのpdfなので注意)の副読本として読んでもらうといいかもしれない。敢えて難しい言葉は避けて書かれているが,rateとratioとproportionの違い,年齢調整による標準化,反事実モデル,sufficient causes(明記されていないがもちろん因果パイモデルを念頭においているのだろう)と交絡(今日の演習の資料だけ読んでわからなかった人でも,この説明を読めばバッチリだろう),脱落の扱い,スクリーニングにおける感度と特異度,研究デザインも含めたオッズ比とリスク比(この部分も今日の演習のサブテキストとして学生に読ませたい),といった疫学や医療統計にとってエッセンスともいえる内容を,地球を征服しにきた(けれども争いごとを無くすのが目的という辺り,何となく憎めないキャラの)しまりす君と,佐藤先生自身がモデルと思われる医療統計の先生の会話というスタイルで,面白く,かつ無理なく読ませてしまうのは凄い。

奥様が書かれたイラストもほのぼのとしていていい感じだ。

SF仕立てのこの素晴らしい疫学・医療統計学入門の向こうを張って,冒険小説仕立ての人類生態学入門を書いてみたい気がちょっとしたが,どうしたって大長編になってしまいそうだから難しいな。

ともかく「宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ」は名著なので,医学関連分野の人は必読だし,リスクコミュニケーションをするのに役立つ基礎知識がするっと頭に入ってくると思うので一般の人も是非読まれたい。たぶん高校生以上なら読めると思う。

【2005年12月12日記】


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