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書評:波多野公介『緑茶最前線』,京都書院

最終更新: March 16, 2006 (THU) 14:59 (書評掲示板原稿から変換)

書誌情報

書評

紅茶には農園別,品種別の楽しみ方があるのに,緑茶というと新茶とそれ以外といった摘み取り時期の分類しかないのはなぜか? それは日本における栽培品種のほとんどが「やぶきた」になってしまったからである。なぜこうも「やぶきた」の「深蒸し」が市場を席巻したのか?本書は,まずこの問いを発し,それに明確に答えるところから始まる。

それから日本茶にも実は農園別,品種別で楽しむ道はあるし,そうして得られるストレート茶は実にうまいのだ,と展開する。読んでいるうちに印雑131号とか,藤かおりとかおおいわせとか,飲んでみたくなるお茶の話が目白押しだ。著者がお茶の味を表現するのが,また実にうまいのだ。

お茶の話の後に,「別天地」として紹介される食べ物たちもまた食欲を誘う。本物のニシン漬けを1度味わってみたいものである。途中に出てくる茶葉の写真と巻末の品種一覧には資料的価値も大である。これで800円は安い。同じ著者の前著「おいしいお茶がのみたい」と,内容的に重なる部分もあるようだが,こちらの方が安いし新しいのでお薦めだと思う。

【1998年6月20日記】


この関連書で是非お薦めしたいのが,雄鶏社の「日曜日の遊び方」シリーズの「日本茶,美味しさを究める」(すごいタイトルだな)である。

波多野さんの本にはいれ方,水,茶器についてはあまり出ていないし,品種についての説明の詳しさに比べると産地についての説明が弱いので,こういう本で補うとよいと思う。

【1998年7月7日追記】


逆に,山西貞さんの「お茶の科学」などという本を読むと全く違った観点からお茶を眺めることができて有益である。

【1998年7月7日追記】


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