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書評:國井 修『国家救援医 私は破綻国家の医師になった』(角川書店)

最終更新:2013年8月5日

書誌情報

書評

ユニセフの専門家,最近ではグローバルファンドの戦略投資効果局長として国際・災害保健医療活動を続ける國井先生の半自伝的なエッセイ。確か,ぼくが東大人類生態の助手だった時,國井先生が国際地域保健学の講師だった時代があったと思う。直接お話ししたことはないが,本書はいろいろな意味で含蓄に富んでおり,学べることが多い。

ミャンマーもソマリアも大変な状況だが,そこで踏みとどまって援助を続けるには,これくらい確固とした意志が必要なのだろう。

しかし軍事費には金をつぎこみながら予防接種の物資をほとんどユニセフに頼るミャンマー政府とか,救った命が少年兵となって不幸の再生産をもたらす可能性とかいったことを考えたら,大変な矛盾や苦悩と向き合いながらの仕事になっているはずで,その辛さは想像を絶するものだろう。

人類生態学者のぼくとしては,システムとしての将来を考えつつ,長期的に付き合う覚悟無しには行動できないのだけれども,「それでも目の前の命を救わないわけにはいかない」と行動できてしまう國井先生は,やはり医師なのだなあ,と思う。

ただ,国際機関でこういう仕事をしている人は,今のところ医師ばかりだが,実は必ずしも医師でなくてもいいと思う。人類学的な視点をもった国際保健の専門家は,もう少し活躍できてもいいはずだ。しかし,ともかくも,この本は国際保健の議論のきっかけとしては宝の山である。国際・災害保健学の参考書として強くお薦めする。

【2013年8月5日,2012年3月16日のメモより採録】


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