COP10PRECON-MEMO
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23 March 2010 22:03:SS
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- COP10プレカンファレンスは,総合司会矢原さんで,ほぼ定刻に始った。まずは環境副大臣の田島さんの挨拶。日本語。開口一番,黄砂のひどい中をようこそ,と言われていたが,あれは黄砂だったのか。
- 田島さんの講演要旨:COP10の目標は,ポスト2010年目標の設定,国際的な議論の進捗に参画貢献。2050年までに現状以上に生物多様性を豊かなものにするという目標案を提出済み。科学と政策の連携強化が大事。10月に迎えるCOP10の成功と生物多様性条約の目的推進。共催者のDIVERSITASと名古屋大,海外からの参加者への感謝。
- 次いで,名古屋大学総長,濱口さんの挨拶。英語だった。COP10プレカンファレンスを名古屋大が3番目のホストとして実施するのは,COP10の科学的背景(新しい戦略として)を提供すること。COP6(2002)で採択された生物多様性を守るため。最近環境は良くなってきているが,生物多様性は必ずしも改善していない。国際的なディベートが必要。今日集まった聴衆に期待するのは,それぞれが自分の問題としてCOP10にかかわっていくこと。最後に,今日は黄砂が飛んでいるが,生物多様性は人類のサステイナビリティと組み合わさった問題として取り組まねばならない。
- DIVERSTAS議長,Harold Mooneyさんの話。まずは集まってくれた人々への謝辞。2010年までのspecific targetがあった。たぶんrestructionとredirectionの時期。我々には何ができるのか。日本政府はscience communityに議論するチャンスをくれた。自然科学と社会科学の両方が参画しなくては。2020年までの新しいターゲットを定めるためにどうするか。GEO-BONの話。
- 以上がOpening Remarksであった。次から実質的な話。
- CBD(生物多様性条約)事務局のDavid Cooperさん。まずは各方面への謝辞。COP-10での3つの主な内容。国際生物多様性年であることから,(1)Assess progress towards 2010 biodiversity taget,(2)Update CBD strategic plan and post 2010 target,(3)ABS negotiation。2010年ターゲット。日本のNBSAP-4。長期的な視点,2012年のための重点領域:日常生活におけるmainstreaming biodiversity,など3点。Good Practice:例。ブラジルアマゾンでの森林減少速度は低下した。今後も2020年まで低下する見込み。しかし既に森林で無くなったエリアは20%に及んでおり,再森林化の見込みはあまりない。中国のMarine Trophic Indexは減った。species abundanceの低い種ほど絶滅の危機にひんしているという図。横軸が年。縦軸がabaundance。両生類とか下の方のグループほど傾きが急。climate changeの予測の話。大量絶滅が起こるかも。海洋生態系の予測を示す写真。適切に対策すれば多様性は守られるし,対策しないでいろいろ悪化すれば死の海へ。非線型のトレードオフをうまく利用しよう。他の利点よ横軸,生物多様性を縦軸にとってグラフを書くと,非線型で右上が膨らんだカーブになるので,生物多様性をそれほど損失しない範囲で他の利点を高められる効率のよい最適ポイントがあるはず(ROCみたいな考え方だ)。Draft planは2010年5月のWGRI,SBSTTAを経て再びDraft Planができ,2010年のCOP-10へ(9月のUNGA-HLS経由)。その後UNGAで2010年12月に採択というスケジュール。新しい戦略プラン:2050年ビジョン(自然と調和した生活)と2020年ミッション(生物多様性の損失を止めるための喫緊のアクションと,2020年までにやらねばならないこと)。戦略的ゴールA。生物多様性損失の下にある原因を突き止める。政府と社会のmainstreaming biodiversityによって。ターゲット4個。1:2020年までにすべての人が生物多様性の価値を認識すること,等々。ゴールB:ターゲット5〜10.ゴールC。ターゲット11〜13。ゴールD:ターゲット14〜15。ゴールE:ターゲット16〜20。実現へのメカニズム。今後10年にやらねばならないこと。科学政策の重要性。最後のスライドはcbdのロゴとwww.cbd.int/spとwww.cbd.int/gboというURL提示。
- 次はDIVERSTAS事務局長のAnne Larigauderieさんの話。ちょっと英語が聞き取りにくい。CBDを支える新しいメカニズム:評価としてIPBES,観察メカニズムとしてGEO BON(AP BON)。Climate science-policy landscapeの例示。研究と評価(IPCC),政策(UNFCCC),観察(GCOS, GOOS)はそれぞれ重なりをもっている。部分的に重なった4つの円による表示。これと同様にBiodiversity science-policy interfaceを考えると,評価はMAとIPBES? 政策はCBDなど,観察はGEO-BON? GEOSS(全地球システム観察システム):いろいろな観察システムの統合。GEO BONとは? 世界の生物多様性の状態を統合しレポートする新しいシステム。GEO BONは何をすべきか? グローバルで科学的に頑健なフレームワークの提供,データのコーディネート,データサプライについての長期的な継続性を確証すること,革新的で関連したグローバルなデータの提供。2010年目標は達成できなそう。哺乳類,鳥類は比較的マシだが,サンゴ礁は悪化の一途。ダメなところ。1.我々の社会が生物多様性損失に対して適切なアクションをとれてない,2.(生物多様性損失をくいとめるための)科学的に妥当なアドバイスを政策提言するシステムがない。IPBES-3は今年6月に韓国で行われる。今日,明日のキーイシューは3つ。評価(今朝),政策(午後と明日),観察(火曜=>GEO BONとAP BONの小規模ワークショップ)。これら3つのイシューについていくつかのrecommendationをまとめ,COP-10に提言することが,このプレカンファの目的。
- 次いで,科学と政策の対話(IPBESの設立に向けて)についてのパネルディスカッション。司会は足立直樹氏。パネリストは,田島環境副大臣,国連大学IHBP事務局長のAnanthaという男性,DIVESTAS科学委員会議長Harold Mooney。オーストラリアのCSIROの昆虫学者Mark Lonsdale,メリーランド大学の淡水生態学者Margaret Palmer。最初に田島副大臣から日本の取り組みについての説明。科学と政策の連携の必要性についてとくにフォーカスして。我が国生物多様性の3つの危機プラスワン。第1の危機は人間の活動や開発がもたらす生態系の破壊など。第2の危機は里地里山など人為によって維持されてきた特有の自然に対する人間の働きかけのげんしょうによる影響。第3の危機は,外来種などを人間が外部から持ち込むことによる生態系の攪乱。プラスワンは地球温暖化の影響。生物多様性条約締結を受けて,環境基本法にのっとり,生物多様性基本法を成立させた(議員立法,2008年)。2010年3月,生物多様性国家戦略を閣議決定した。新国家戦略の策定。改訂のポイント。中長期目標(2050年まで)と短期目標(2020年まで)の設定,COP10の議長国として,その開催を踏まえた国際的な取り組みの推進,など。COP10の主な議題として,2010年目標「生物多様性の損失速度を著しく減少させる」という2002年に採択されたものを,評価し,ポスト2010年目標を策定する。日本提案は,議長国としてのリーダーシップを発揮するため,今年1月6日に生物多様性事務局へ提出済み。SATOYAMAイニシアチブ。背景としては,第2の危機が世界中の多くの場所で見られること。目的として,自然共生社会の実現を目指し,自然資源の持続可能な利用・管理を推進すること。国際SATOYAMAパートナーシップの立ち上げ。明日のセッションで詳しく紹介。活発なディスカッションを期待。生物多様性観測の推進とIPBES。地球規模での生物多様性モニタリング体制の構築+生物多様性に関する科学と政策のインターフェース強化。後者として生物多様性と生態系サービスに関する科学政策プラットフォーム(IPBES)がある。UNEP主導により生物多様性版のIPCCの設立検討中。生物多様性は地域活動が大事なので,ボトムアップアプローチが必要。
- 各パネラーから,IPBESについて科学的視点からのコメント。まずはMargaret。米国では科学者と政策立案者のかい離がある。IPBESはそのかい離を減少させる。BESを守るために開発されつつあるインセンティブが科学的に情報提供されることを確証。BESについての信頼できる情報源として一般に受け入れられるものを提供する。
- 次いで,Mark Lonsdale。運用原則について。IPBESのための前提条件としては,科学が政治から独立していることが必要。既存の政府間組織のsubsidiary bodyであってはならない。批判的なピアレビューを受けること。これは科学のゴールドスタンダード。IPBESのレポートだけでなく,評価のための情報源(ジャーナルの質とか,伝統知識とか)についても注意深く評価されなければならない。ピアレビューのrigorous governanceは決定的に重要。
- 次いで,Anantha Duraiappah。IPBESについていくつかのカギとなる決定事項。スコープ(唯一の統合された権威のあるBEのvoiceであること,MEAをサービスすること),法的基礎(独立性−政治的にも市場からも,Government Ownership?),ガバナンス(総会:独立性=各国政府とNGO,実行主体:信頼性)について。
- 最後にHarold Mooney教授(Stanford Univ.;兼,DIVESTAS科学委員会議長)により,IPBESが提供するものは正確に言うと何なのか? そのゴールを達成するために科学者コミュニティはどういう役割をはたすことができるのか? という話。ボランティアベース。スピードの差。ボトムアップとトップダウンの両方。
- 司会から田島副大臣へ。ここまでの話を踏まえて質問。政治から科学への要望は? 生物多様性にかかわる意思決定に対する情報を提供する信頼できる主体がなかった。IPBESは気候変動におけるIPCCに相当する役割を果たすものとして期待。いつ設立かというと,国際生物多様性年である今年,COP10で採択が望ましい。政治的独立性の担保と,科学的信頼性の確保が何より重要。地域ごとの活動を重視したボトムアップからやっていくことが必要。既存の組織との重複を避けたい。とくに要望と言うよりも,いま聞いた話はもっともだと思ったので,ラムサール条約やワシントン条約のような関連条約も含めて広く支援していくつもり。
- 司会から,既存の組織,活動との重複をどのように避けるかという点について。既存組織とどう違うのか,パネリストの誰かから説明いただけないか? と提案。Ananthaの答え。最大の違いは,この問題に責任をもつということ。共通ベースラインの提供。Haroldの補足。
- 司会から,科学から政治への期待は何か? Mark。科学的プロセスを科学者と同じくらい深く理解してほしい。Margaretは,しばしば何が必要なのか科学者コミュニティにわかっていないことがある。政策立案者と科学者コミュニティが共同で問題を発見することが大事。Haroldは,Margaretのいうとおり,新しい文化基盤が必要という感じのコメント。
- 田島副大臣。政策実現のためには必ず科学的裏付けが求められる。そのために科学の方からIPBESのような組織ができることは歓迎。しかしIPCCねつ造疑惑のような問題が起こると一気に信頼を失ってしまう。どうやって信頼できる組織なのかということを保証するのかが大事。そこを理解してほしい。
- 最後に言っておきたいことは? 田島副大臣。途上国支援をどうするかという問題。向き合う人材養成も含めて。人材発掘とか。そういうことがIPBESの中で話し合われるべきではないか? 政策決定サイドと科学者は必ずしも対極にあるものではなく,より胸襟を開いて相手の主張をお互いに理解しあいながら,よりよくコミュニケートしていくことが重要。連携とか協働とか。
- Ananthaの答え。Overburden,Waste Progressingを避ける。IPCCの問題は明示性の不足による。IPBESはより情報を明示しつつ進める。途上国での問題は,ボトムアップアプローチで国レベルのデータにまとめあげるときにIPBESがサポートする。全地球的なアセスメントも重要。
- 時間が来たので最後に一言誰か? Haroldのコメント。科学者は注意深くみていかなくてはいけない。さまざまな新しい技術(GMOとか)が文化にとりこまれる過程で起こるさまざまなこと。
- 矢原さんから。この科学と政策の対話は日本の科学の中でも画期的な事件。デンマークのプレカンファで矢原さんもパネルに入っていいなと思っていたが,議長から日本でも是非と言われて,やれて良かった。
- 以上で午前のセッションが終わり。
- 午後のセッション。まずは矢原さんにより,自然共生社会に向けて,市民,企業,行政の連携という話。自然と共に生きるという考え方は世界中の多くのところで元々あった(……と言われたが,鈴木秀夫さんが言われたように,これは森林の思考ではなかろうか)。科学的な共生:スダジイとマルハナバチとアカネズミの関係のような。SATOYAMA景観における共生:農業環境に適応した多くの生物,ヒトもそれに適応,ローカルな栄養素循環も,ヒトを含む多くの生物によって維持される。エネルギー源,消費の変化をみると,一人当たり消費エネルギー量は増えている一方で,消費エネルギーに占める再生可能資源量は減少。日本の木材:80%は輸入。20%が国産。人口(構造)はキーとなる間接的な動因。市民一人一人にできることとして5つの提案。(1)たくさんの,旬の('shun' = seasonally best),地方の食物を食べる,(2)子供と自然に親しみ,子供を自然の中で育てる,(3)多様な生物の名前を知り,絵・写真・日記・俳句等に記録する,(4)生物多様性の観察・調査・保全・再生活動に参加する,(5)生物多様性保全に貢献している商品・企業を選ぶ。(1)〜(3)は誰でもできる。九大の活動は,ドングリの森づくりと九州大吟醸づくり。学生が働いて,売り上げをドングリの森づくりに貢献。
- 次いで,足立さんから企業が具体的にどういうことをしているのか,概観。生物多様性保全への依存と影響。なぜ企業と生物多様性か? それ抜きには企業活動が成り立たないことに気付いた企業が増えてきた。科学の示唆による。生態系サービスに依存する私たちの生活。失われる生物多様性。過去300年の間に世界の森林面積の40%が消失,過去50年の間に,地球の生態系サービスの60%が損壊。海産魚類の半分以上は過剰漁獲。こういうことを考えたら,生物多様性保全なしには企業活動さえ成り立たないのは明らか。企業による保全活動として,直接影響の削減,間接影響の削減,社会活動がある。例。鹿島建設2005年に「鹿島生態系保全行動指針」を策定。積水ハウス「5本の樹」計画:「3本は鳥のために,2本は蝶のために」というスローガン+NGOと共同で「木材調達方針」を策定。経済メカニズムの活用。例としては認証制度。木材製品のFSCとかコーヒーのBird Friendy Coffeeとか。水産物だとMSCなど。企業の影響力をうまくつかうことが重要。企業の視点から。生物多様性は社会貢献ではなく,ビジネス上の課題。企業は科学的に妥当な目標と手法を求めている。もっと会話が必要。
- EUのYbele Hoogeveenさん。EEA(European Environmental Agency),コペンハーゲン。元は社会科学者。EEAの活動における生物多様性:State of Outlook reporting(2005年,2010年は準備中),SEBI indicator develoment,Natura2000 reporting,……。このプレゼンは,Indirect driverを説明する。人口変化,ライフスタイルの変化,消費パタン,生産/流通パタン,気候変化,空間計画といったものが,Indirect driverである。国別人口を面積として表わした地図,森林減少で,とか,他にもいろいろな地図。6th Environment Action Programme 2002-2012。4つの重点領域。生物多様性アクションプラン。Nature2000地域における種と生息地の保全とか。伊勢三河湾流域ネットワーク・今井さんからの質問:補助金支払いはヨーロッパではどう行われているか。答えるのが難しい。もう1件質問。昼食による眠気が襲ってきて集中できない。
- 次はPhilippe Le Prestreさん。カナダ・ラヴェル大学教授。indirect driversの話で,ガバナンスとinstitution,受け継いだ叡智を問う,いくつかのチャレンジ,という構成。ガバナンスは,社会システムをsteerするすべての目的ある仕組みと手段をいう。institutionは,社会科学をacrossするいくつかのstrandがある。経済学ではローカルコモンズのガバナンスをいう。政治科学ではinternational regimeの出現とインパクトをいう。institutionとはsocial practiceであるといえる。governanceとはまったく異なる。social practicesを定義するnorms, rights, rules, relationshipsのconstellation。受け継いだ英知を超えて:driverのクラスターという視点で考える必要。「共有地の悲劇」は不可避ではない。権威の集中化はその唯一の解ではない。生物多様性の問題はローカルだが解はいろいろなレベルのガバナンスで見つかる。「複雑なガバナンス」はcommonであり,ガバナンスシステムの頑健さと健全さを強調するかもしれない。複雑さがリソースの安定性を増すかもしれない。厳密なコンプライアンスはinstitutionalな効率性の前提条件ではない。科学はcooperationを進めるかもしれないし,impedeするかもしれない。権力を集中化することは国際協力の必須な条件ではない(中央システムがあることが多いが)。参加は自然資源の保全と持続的な利用を進めるかもしれないしdiscourageするかもしれない。チャンレンジの例:適応的で(学習を重視する)頑健で健全でフェアなガバナンスシステムとinstitutionを作ること。生態系とinstitutionのpoor fit。生態社会的ガバナンス/institutionを作る。水平統合:国内的に(いくつかの別々の法からの明文化)/国際的に(条約について同様に)。垂直統合と適切なレベルの介入の選択として,実践主体,マルチレベルとかマルチスケールのガバナンス,どのレベルのガバナンスがどのレベルの問題に適切なのか? どうやってポジティブな相互作用がなされるのか? impeding changeなしの生物多様性をどうやって守るのか? プライベートガバナンス(認証プログラムなど)をどうやってコントロールするか,どうやって互換性をもたせ,民主的にし,他の側面(社会正義とか)にも答えられるようにするか? CBDとSCBDの役割を定義し,それらを強化すること。地域的にあるいはレジーム横断的なルールや原則の間のいさかいや矛盾を管理すること:ローカルグループは保全より社会正義を強調するかもしれない,等々。オオカミの群れのイラストで"My question"を述べて終わり。
- スウェーデン・ストックホルム大学のThomas Elmqvist教授。public perceptionと理解。アクションのためのインセンティブが大事。戦略的ゴールAについて,publicに届くには。世界は街になっていく,というThe Economistの表紙。東アジアは急速に都市化しているところの1つ。どうして都市とローカルガバメントは保全の実施に重要か。世界の自然保全地域の25%は年から17 km圏内にあり,10年でそれは15 kmになる。(Macdonald 2009)。都市が浸食していくことが危機にひんしている生息環境を急速に変換していく。都市化は動物相と植物相の均質化上昇の原動力ともいえる。都市生物多様性サミット2010,COP-MOP5,COP10が名古屋で24-26 Oct. 2010に行われる。都市の生物多様性のシンガポールインデックス。都市の生物多様性指標を開発する理由。各国政府やローカルオーソリティをサポート。評価の進展を助ける。生物多様性について11の指標。生態系サービスについて5の指標(淡水サービス,木が影を作る効果,リクリエーションと教育サービス,都市の公園や保全地域,教育目的の訪問回数とか。ガバナンスと管理の9つの指標:バジェットとかいろいろ。UKの重点地域について,長期的な変化と2000年以降の変化の事例。指標をテストする。名古屋のCOP-10へのロードマップ。次のステップは? 以下の諸点:ローカルターゲットを開発する,市民を巻き込む方法や視覚化の方法の開発,生態系サービスへの支払いのスキームを検証する,他の持続可能性指標による補足,designationの基礎としての指標。
- 質問が出ないので早く終わりすぎ。30分休憩をとって,15:30からパネルディスカッションにする。
- パネルディスカッション。ChairはDr. David Cooper(CBD事務局長)。第1に(……聞き逃した)。第2にサイエンスコミュニティがこの問題をどのように同定しているか。第3に都市の生物多様性の指標についてのサイエンスコミュニティの議論。このパネルディスカッションでは,まず各パネリストからメインの問題を挙げてもらい,次いで議論。
- 矢原さんと足立さん。すべての人に生物多様性の価値に気付いてもらう。protectよりconserveの方がいい。その方が企業の人に参加してもらえる。市民一人一人が取り組める課題として,live together with natureを挙げた。第2のターゲットについては,no net lossというゴールに向かって生物多様性保全についてあらゆる手段をとるべしということ。第3のターゲットについていえば,"Subsidies harmful to biodiversity are eliminated."だが,"harmful"という表現が曖昧なのは気になるがコメントなし。第4のターゲットについては,ecological limitsが何かというのは問題になるし,"the limit of natural reproduction"の方がいいのでは? 全体についての補足としては,日本やヨーロッパでは人口減少+自然を使わなくなったことによる問題が起こってきている。途上国では森林減少とか。それらが貿易を通じて関連しているというのが典型的あり方。しかし中国のように途上国でも都市への人口集中が起こって,農村部の過疎化が起こっている。「開発するな」ではなく,一定の開発は許容するが,人口が都市に集中したときに生物多様性が回復可能なような長期的ビジョンを先進国と途上国が共有することが必要。
- Ybele Hoogeveen。4つのターゲットについては,(1)すべての人が生物多様性の価値を知り,それを守るためにどんなステップがとれるか。Biodiversity value is scale and sstakeholder dependent.(2)生物多様性の価値はすべての国に(政策と戦略)よって,そしてprivate sectorによって認識され反映される。生物多様性保存は一方向ではない。Many options with different trade-offs exist.(3)生物多様性に有害なsubsidyは排除される。This requires an explicit and supported biodiversity target.(4)政府とすべてのレベルのstakeholderは効率を上げ無駄を減らし生態学的限界の中での資源利用を維持するための持続可能なプランを実施する。The latter requires accepted thresholds and a spatially explicit strategy.
- Philippe Le Prestre。全般に。どのようにして生物多様性が発展に貢献するのか。構造的手段にもっと注意が必要。生態系とinstitutionのpb fitが未解決。4つのターゲットについては,例えばターゲット2は曖昧すぎ多くを望みすぎ,など。
- Thomas Elmqvistは,ターゲット4の2020年までに……という項について,どうやってlimitを決めるのか? 我々はどうやってglobalからlocal scaleにスケールダウンできるのか? を問題提起。
- フロアから。環境政策をやっている跡見学園女子大の宮崎さん。indirect driverの中で,コントロール可能なものはコントロールすべきではないか。ターゲット2でno net lossを国際的に広げていくことが大事だろう。Philippeが答えた。
- 次はGovernmentのimplicitなターゲットの話。種の絶滅,種の損失。難しい。explicitなターゲットを作るべき。Chairmanが答えた。Ybeleが続いて発言。Chairmanが答えて,ターゲット2とターゲット3の違いを語った。
- Philippeから3点コメント。Chairmanが答え,明日の話のターゲットになるだろうとか。
- フロアからの質問続き。ecological limitsについて。Thomas,Ybeleの順で回答。Chairmanが補足。
- 韓国からの女性の質問。Philippeが回答。
- インドネシアのBelinda氏から。valueについて語る時の問題。potentialなのか,現実的価値なのか。Ananthaがフロア後ろから回答。次いで,フロアから今日最後のコメント。
- 最後に,パネリスト各人から一言ずつコメント。Thomas,Philippe,Ybele,矢原さん,足立さんの順。矢原さんは市民をターゲットにした時は市民に分かりやすく,企業をターゲットにしたときは企業に分かりやすくすることが大事。その意味では,まだいまのターゲット表現は抽象的すぎる。多様性の価値を経験によって知ることの方が,知識を学ぶことより容易なので,そういう提案をした。足立さんは,企業を説得するためのポイントとして,具体的であり現実的であること。気候変動とのアナロジーでいうと,同時に始まったのだけれども,気候変動の方が進んでいるようにみえる。気候変動の方がターゲットが明確(プラス2度のような)。10度でなくて2度ということが大事。そういう意味で,今わかっている,科学的に言えることを,できるだけ具体的に言うことが大事。不確実性のなかで結論していくことが経済活動でも必要なわけで,そういうアプローチが必要。シナジーの重要性もあるが,どのターゲットが相対的に重要なのかをきちんと見極めることが大事。一番重要なターゲットからやると効果的ではないか。
- Chairの結語は,具体的目標が大事というのはたしかであり,具体的な空間をイメージしてその中でやっていくことも大事と述べ,パネリストと,フロアからコメントしてくれた人へのお礼,参加者へのお礼を述べて1日目は終わり。明日は9:00開始予定。
- 基調講演から。予定通り9:00開始。パリ第11大学,Paul Leadley教授により,GBD3(Global Biodiversity Outlook 3)について。主に生物多様性へのインパクトについて喋る。生物多様性への地球規模の変化のインパクトによって種の絶滅が加速していること。広まった危機,"tipping point"につながるフィードバックの強化と時間遅れのある効果による生態系変化があること。(もう1点あったがメモできず)。
- 種の絶滅。陸上生物の種の絶滅の予測。バックグラウンドの速度に比べて,現在の絶滅速度はどの種でも速いが,哺乳動物や鳥に比べて爬虫類や両生類でより速い。
- 気候変化だけでは説明できない。不確実性について科学者と政策担当者の話し合いが必須。強力な予防原則アプローチ(?)になりうる。
- species abundanceの変化。海のシナリオ。食物網を漁業がダウンさせる。クラゲばかり残る。食物網の上位にある魚が捕獲され,下位のものが残る。Marine Trophic Indexが低下する。トローリングを減らすシナリオによる予測では2030年頃から上昇する。何もしないと3.4弱から3.2くらい(?)に低下する(注:縦軸の範囲が3から3.5くらいの折れ線グラフだったので,変化が強調されていたと思う)。大きな魚の数は世界的に減っている。グローバルモデル研究は少ないので予測は不確実。海の漁業がダメになってしまうリスクはディベートされるべき。
- ハビタットの損失。Wise et al. 2009による予測では,農耕効率を上げ,保全を強化し,生物燃料を制限すれば世界の森林面積は増える。しかしその逆だと森林減少は進み,とくに2035年あたりから激減する。450万平方キロから150万平方キロくらいに15年間で1/3になる。達成は難しいがハビタットを残すことは可能。
- 種とbiomeの分布のシフト。極地方のバイオームのシフト。温暖化が進むと極地方のバイオームが広がるが進まなければ広がらない。気候変化がフランスのbeech(ブナ)が分布している範囲を狭める。絶滅はしないが分布域が減る。2つのモデル研究でどちらでも狭くなる。このシフトは,現在の観察と古生物学的記録と定性的には一致している。
- "Tipping point" キーとなる場所。世界中にいくつもあるが2つ取り上げて説明する。アマゾン森林ティッピングポイント。火災と森林減少。雨は短い豪雨で乾季があるので,伐採して火入れすると灌木林になるか,または農地とか放牧地として草原化する。灌木林では保水力がないので局地的気候が変わる。もっと広く言えばCO2濃度も変わるのでグローバルな気候変化にも影響する。生態系サービスにも影響する。このまま森林伐採が進むと,アマゾン流域の降水量が減り,炭素貯蔵量も減る。20-40%の森林が切られ2-4度気温が上がると熱帯降雨林は死滅することが多くのモデル研究で示されている。第2のティッピングポイントはサンゴ礁。bleachingが起こっている(色鮮やかなサンゴに比べて白いサンゴだけの写真はショッキング)。オーシャンの酸性化の影響がある。二酸化炭素が溶けこんで酸性化し,21世紀半ばまでにhard coralがリーフを形成できなくなるというocean chemistryのモデルが出ている。いいニュースは,サンゴが適応すること。2つの異なる温暖化シナリオで,サンゴが適応しないと2050年までにほぼ全部白くなる(reef cellの割合が上昇する)。しかし適応があればリーフはできる。
- 多様性を守るシナリオ。このままだと多様性は減っていくが,即時強力なアクションをすれば逆転させられる。1つは,発展のゴールと保全を結び付けること(あと2つ,保護地域の重要性も含めてあったがメモできず)。
- 時間がオーバーしたので質疑なしでセッション1へ。
- セッション1の最初のスピーカーは,Margaret Palmer教授。淡水生態系の生物多様性。人は飲料水も含めていろいろな意味で淡水生態系に依存しているけれども,他の生態系よりも急速に多様性が失われている。生態学的プロセスも損なわれている。水の流量,riparian(水辺の植物)も減っている。しかし最も顕著な損失はハビタットである。どうやってこれらを防ぐか?
- 保全=protected areasを作ることは,最良の科学に基づくオプションである。しかし常にできるわけではない。
- 次は我々が生態系に与えるインパクトを減らすことである。水の使いすぎを止めることとか,汚染を減らすこと,湿地などクリティカルなところを守ること。
- 次は,生態系復元?(ecosystem restoration)。荒れた川の土手を土で補修し植生が回復するようにするとか。
- 次は,生態学的にデザインされた解を発展させること。ミティゲーション。望ましいサービスとして窒素やsedimentsが増えないような水の質の維持など(例えば沈砂池のようなものを作るということか?)。
- 技術的な解。通常高価で,他の問題を引き起こすが,重要になることがある。例。ダム管理も歴史的レジームにあっていれば必要。
- 流域管理計画:空間管理計画として。チェサピーク湾流域の例。流域プランを開発するには多くのリソースが使える。科学は生態系サービスを守らねばならない。しかし保護と人類のニーズのバランスを取ることの重要性はあまり理解されていない。Coupled policy & science processが必要。政策立案と科学はコラボレーションしなくては(まったく同感だけれども,浅川ダムとか八ッ場ダムとか考えたら,日本の政策は科学より面子とかの方が優先されている気がしてならない)。
- 結論。淡水生態系へのプレッシャーを減らすには? インパクトを減らし,流域計画を立て,政策と科学がコラボレーションすること。
- フロアから質問。淡水漁業のインパクトについて。境界について。計画をマネージすることについてもう少し詳しく。clean water actの下でのwetland no net loss policyをどう評価する? 必ずしもno net lossは求められていなくて,高度なcomplianceが求められている。
- 日本の生物多様性総合評価(JBO)にみる直接的要因(driver)について,中静透教授(東北大)。5月10日に最終版がリリースされる。目次。背景。目的はGBOと同じで,日本版にしただけ。状況を広く認知してもらうことと,利害関係者に判断材料を提供すること。評価の枠組み:損失の要因,状態,対策を整理し,それらの切り口から指標を設定して評価。前提としては,日本全体のスケールでの指標を開発。1950年代後半以降の変化を対象とした。生物多様性の危機4つ。昨日の話にあったものと同じ。生態系の6区分:森林,農地,都市,陸水,海洋・沿岸,島嶼。開発した指標は全部で30.そのために検討したパラメータは全部で100以上。危機の指標(第1の危機の指標は,生態系の開発・改変,野生動物の直接的利用,水域の富栄養化,絶滅危惧種の減少要因,第2の危機の指標は,……),6つの生態系の状態の指標,対策に関する指標(第1〜第3,間接要因への対策)に分かれる。
- 我が国の社会経済状況の推移という背景のもとで考える必要。この50年間の変化。陸域における生態系の規模等。生物分類群ごとの絶滅危惧種の減少要因。どの群でも開発が最大要因だが,それ以外の要因は群によって効いているものが異なる。外来種の侵入と定着。アレチウリ,アライグマ,オオクチバスなど。
- 評価アイコンを開発。弱い,中程度,強い,非常に強いの4段階を白,黄色,オレンジ,赤で,長期的傾向は矢印の向きで。本来の生態系に比べると,6種類のどの生態系でも生物多様性の損失は赤。1950年代に比べると,森林はオレンジで横ばい。農地はオレンジで下向き,年は黄色で横ばい,陸水,海洋・沿岸,島嶼は,赤で下向き。第1の危機と第3の危機の影響が大きい。
- 保護地域の面積の推移。エコファーマー数の推移。生きている動物の輸入数も1990年代後半をピークとして減少。対策も不十分。
- 全体のまとめ。生物多様性の損失はすべての生態系に及び,今も続いている。とくに陸水,沿岸・海洋,島嶼で大。要因としては開発・改変の影響力が最大だが,新たな損失速度はやや緩和。対策は一定の効果を上げたが,間接要因として社会経済変化の影響が大きく不十分。
- 2010年以降の対策。再生技術,グランドデザインとしての生態系ネットワーク,海域の保全,地域の合意形成による生物資源の利用促進,二次林の自然林への積極的移行,広域的な観点からの鳥獣の個体数管理,外来生物の監視・定着防止体制の強化,モニタリング具体性の強化,自らの地域の生物多様性のあり方について地域社会での合意形成など。
- 要因・状態・対策はネットワーク。DPSIR Network。直接・間接要因が相互作用。行動も大切だが,生物多様性が保全・持続的に利用されることが重要。
- フロアから質問。インドネシアの人。SATOYAMAの低栄養について説明を求む。かつては人間と農業・水産業は調和された形で営まれ生物多様性が保全されてきたけれども,やり方が変わってきた。雑木林や水田のやり方が変わり,絶滅危惧種の30-40%がそこにいる。復活ということではなく,新たな調和を求める。
- 韓国の人。人が適切に利用することによって保全されてきた生態系について。
- 日本人の若い人。この総合評価は日本政府としての公式見解か? 委員会名で出る。いろいろな議論があって,各省庁と調整した上で全部納得してもらって出すというのが当初目標だったが,途中で変わって,委員会名ということになった。もちろん内容には責任を持つが政府公式見解ではない。
- 国際機関の方だったと思う。biofuelについての考えを聞きたい。日本では作物と競合するのはあまりなく,木質,あるいは工業利用の残渣が多い。再生可能資源だけを使ってエネルギーをまかなっているローカルな市町村はあるので,里山biofuelを生かしつつ持続的なものを
- Anantha。JBOのコンセプチュアルフレームワークを聞きたい。ヒトの福祉とのトレードオフについてどう考えるか。フレームワーク採用の理由は分析のしやすさで,生態系サービスを考えた時のトレードオフは最初は考えていなかった。今後は検討する。
- 最後のDPSIR評価と解釈について参考になったが,遺伝子組み換え作物とか菌類のような微生物,クジラ・イルカ・マグロなどの適正な判断について,この報告書から読み取れるのか? そういう報告書にはなっていない(すべてのデータがまだ入っていないので)。本来ならそういう報告書にすべきと思う,という回答。
- ここで30分の休憩に入った。
- このセッション最後の講演。ASEAN生物多様性センター長Rodrigo U Fuentesさん。東南アジアでの生物多様性の現状と,変化への直接要因について。また,どうやってそのインパクトを減らすかについて。
- 世界の陸地の3%を占めるにすぎないが,IUCNの評価では動植物種の18%を占める。
- 国別一人当たりGDP(PPPベース)の2000年〜2008年変化。シンガポールが急伸してブルネイに迫る。他の国は相対的に低い。一人当たり森林面積はベトナムが飛びぬけて高いが激減中。2006年〜2007年はやや上向き。
- 直接要因とは何か。ハビタットの変化,気候変動,外来種の侵入,過剰な開発(over-exploitation),汚染など。
- ハビタットの変化としての森林減少。自然資源がグローバルな消費拡大につれて開発され輸出されることによる影響など。ハビタットの分断化,dipterocarpsの繁殖成功低下,エルニーニョの影響による洪水増加,気温上昇,……。気候変化は多くの種の絶滅につながる。森林から農地への転換が何をもたらすか。
- 開発過剰:農業。水田における米の生産高はベトナムがトップで上昇中(カンボジアやラオスも)。オイルパームはインドネシア,マレーシア,タイで上昇中。ココナツ生産はインドネシアとフィリピンで多いが,それほど増加はしてない。
- マングローブ林のエビや魚の養殖池への転換。魚や水産無脊椎動物の生産。
- RIGHTシグナルを送ること。工業や市場をガイドしてよりよい実践へ。低インパクトのツーリズムとか,開発における最小ハビタット改変とか,レギュレーションのデザインの改善とか。
- 窒素利用の効率を上げ,湿原を保全し,過剰な窒素をフィルターし取り除く能力を上昇させる。
- 要求側の,科学に基づく政策:穀物を生物燃料につかう政策を変える。function-basedな保護地域の保全を確立する。研究支援。
- 幻想や神話をdispelすること。科学と生態系サービスを政策決定の基礎として考慮すること。持続可能な農業生物多様性。持続可能な林業。持続可能な漁業。
- 生態系ベースの管理の推進。個々の種の保護から生態系保全へ。
- 持続不可能なストックの消費を減らすこと。coral troutの稚魚,フカヒレ,等々。いろいろな魚の養殖。
- 最後にwww.aseanbiodiversity.orgというアドレスを示して終了。
- 続いてパネルディスカッション。ChairはCSIR-Environmentek(南アフリカ)のProf. Robert Scholes。生物多様性損失の直接要因についての対策。まず間接要因と直接要因の区別をして,概念的なフレームワークを示して,用語を整理して始める。5分ずつ短いプレゼンをしてもらう。
- Eva SpehnというDIVERSITAS Global Mountain Biodiversity Assessmentとスイスバーゼル大学に所属している人から。山岳部では気候変化の影響が最大。土地利用変化の影響もある。資源とサービスの現実の評価が必要。人々の気づきの強化,知識の移転,shed管理のような生態系サービスや景観保全にカネを払うとかいったことにより,ローカルコミュニティのエンパワメントも(これは,その持続が難しいのが問題だと思う)。
- Lijbert Brussarrd教授。オランダのワゲニンゲン大学。SC-DIVERSITAS。ターゲット11として,2020年までに少なくとも陸域と海域で15%を保護地域にする。ターゲット13として,2020年までに農業生態系と関連した野生生物における作物と家畜の遺伝的多様性を改善するとか。
- CSIROのMark Lonsdaleさん。ターゲット9で,2020年までにIASの導入と確立のパスウェイ(国際貿易を示唆?)がコントロールされ,確立したIASが同定され,prioritiseされ,コントロールされ,さもなくば消滅されねばならない。コントロールや消滅は多くの国にとっては大きなチャレンジ。インディケータとしては,国としてのIAS政策をもっており国の数とか,国際合意を締結している国の数とか,国ごとのIASの数(スケールファクタと発見率を考慮する必要)とか,IASにより,レッドリストで状態がシフトしている在来種の数,といったものがあげられる。
- Chairから質問。淡水生態系についての質問。陸域における湿地とかの存在でわかるように1つの括りではなく複数に分けて考えるべきでは? Margaretが回答したが,メモできず。Chairから中静さんへの質問は,世界に適用するのにサブセット,拡大セットのどちらがいいか? 難しい。両方の側面があるとしかいいようがない。Chairからの最後の質問は,ターゲット8のサンゴ礁について。ASEANの人が回答。
- フロアからの質問。松田さんから。ターゲット6について。2015年までに,マリンエコシステム全体についてインパクトを50%減らすという目標は適切か? それぞれの魚種について漁獲圧を減らすならわかるが。1967年からずっとシロナガスクジラは禁漁されているが増えていない。マグロも世代時間が長いので,禁漁しても現存量は増えない。Chairが前半について回答。中静さんの回答では,2015年までに50%というのは難しいことには同意。degraded forestの基準がいろいろな意味で設定困難。合意形成も難しい。
- フロアからのコメント。漁師は農民にカネを払うべきとか(? メモとれず)。別の人の質問。3つの異なった水準について。どの種が本当に危機にひんしているかという水準など。Mark Lonsdaleが回答。最後の質問。no net lossは本来は開発についてのコントロール手段として有効と思うが,米国湿地保全という目標達成のために政策的には有効ではないか? Margaretさんが答えて曰く,バランシングアクトとしてはno net lossはいい戦略だが,ミティゲーションには? ……と面白そうな議論が続いていたが,集中力が切れてしまってフォローできず。午後仕切り直す。
- 13:30まで昼食休憩。
- 午後のセッションは定刻に開始。
- SATOYAMAイニシアティブについての武内和彦さんの講演から。CBDとSATOYAMA景観について。自然共生社会として提示できるもの。SATOYAMA景観の特徴。モザイク。ヒトの活動によって自然が維持されていること。ヒトによる擾乱がユニークな生物多様性を維持してきたこと。社会=生態的な生産景観が直面している挑戦。工業化,都市化などによる変化。日本の例としての里山と里海。マルチディシプリナリーな統合評価が必要。ステイクホールダーも多数。新しい管理主体を確立する必要。里山景観を再構築する。道の駅の直販風景の写真か? 地産地消(produce locally, consume locally)がコミュニティベースで必要。新しいコモンズ概念を作る。新しい地域的な包括的な管理主体が必要。オーガニックライスということで付加価値がつく。世界中にSATOYAMAと似たような概念がある。共通戦略を立てられるかも→SATOYAMA Initiativeへつながる。Global no net lossの提案。結語までいって予定を4分超過した。
- フロアからコメント。最初のは聞き逃した。2番目は跡見の先生。SATOYAMAバンキング構想。IPCCのようなわかりやすいスローガンが欲しい。しかし集中力が不足してしまい,フォローしきれず。
- 次の講演者は,Robert Scholes。南アフリカ科学産業技術研究所。短い歴史。1850年に止められた大火災は森林資源の半分を破壊した。野生生物の群れは1888年までにdeplete。水は,もっとも乾いている月には不足する地域もある。エコシステムサービスとしての水。上流の集水域はほぼすべて守られている。ユーカリなど成長が早い樹種が植林されている。streamflowが300 mm/y減少。新しいWater Act (1995)で水利用制限。水のために働くこと。生物多様性と土地利用。南アフリカの生物多様性の損失1900-2000年をプロットすると,GDPが高いほど生物多様性のintactness indexが低い,非線型の関係がみえる。薪のニーズと生産の図をみると,南アフリカの一部で重度の欠乏が起こっている。土壌は栄養が欠乏するようになってきた。タンパク(というか,アミノ酸ということか)がとくに欠乏。HDIを横軸にとり,縦軸にEcological Footprint Indexを縦軸にとってアフリカ各国のデータをプロットすると非線型だが右上がりの関係性がみえる。結語。生物多様性と生態系を開発の犠牲とかみることは非生産的で,生態系サービスはヒトの福祉を改善する手段となる。フロアからの質問1人目。どの辺が南アフリカ特異か? 2人目。HDIを横軸に取ったうグラフについて。0.8がマジックナンバー。3人目はAnantha。質問でなくコメントだった。
- 次のスピーカーは,Daniel P. Faith。オーストラリア博物館。システマティックな保全計画というタイトル。その役割は,生物多様性保全と他の社会ニーズをバランスさせる空間計画アプローチ。PNGの例。緑色は保全計画があるところ。赤はロギングがされているところ(?)。系統的な保全計画の役割。生物多様性と生態系サービス。適切でない多様性保全戦略について大きなペナルティを科すとか。フロアからの質問1番目はスケールの問題について(?),質問2番目はフォローできず。3番目は矢原さんから,現実の保全戦略ではコストを考えなくてはいけないが,その点はどうか? opportunity costを考えている。オーストラリアでは土地所有者に支払われる。他のopportunity costと同じ方法で計算できる。
- ここから30分の休憩で,その後にパネルディスカッションの予定。
- セッション3のパネルディスカッション。生物多様性と生態系サービスをセーフガードしレストアするための直接行動というテーマ。司会はAnantha。まず各パネラー5分ずつ喋ってもらう。
- まずはSandra Diaz教授。コルドバ大学アルゼンチン。ターゲット15について。C sequestration(炭素循環?)における生物多様性の役割を強調する。陸域生態系における炭素循環。どれくらい? どれくらい速く,どれくらい長く? どれくらい信頼できる? どれくらいのコスト(環境コスト,社会コスト)? 敗者と勝者は? 防御が存在する。レストアが劣化する。注意深く新しいデザインを作らねば。
- 横浜国立大学の松田さん。ターゲット11へのコメント。18ページ〜。クリティカルエコシステムの順番が違うんじゃないか。川,熱帯林,サンゴ礁,海岸湿地,peatland,湖,sea-grass hed,seamountと山という順で。次に,Marine Trophic Indexが出ているが,正しくないのではないか。マグロを食べないと下がる。下げた方がいいのではないか。日本の場合,1800年頃にMTIが下がっている。これはイワシをたくさん撮ったから。その後もイワシを取りつづけているのは乱獲。50年前に比べて,日本はMTIが減っていないし漁獲も減っていない。とすると日本は優秀な漁業をしていることになる。エコロジカルフットプリントの小さな漁業をしよう。つまり,栄養段階の低い魚(イワシとか)を獲ろうということ。日本は上位捕食者をたくさん食べている。マグロの代わりにイワシを食べればエコロジカルフットプリントは数十分の一になるはず。ターゲット11で,national, regionalに加えて,community-も入れてほしい。ターゲット12ではCITESでカバーできないところをCBDでやると。太平洋クロマグロを明記すべき。ターゲット14は最大持続生産量(MSY)という概念が出てくるが,これは生態系管理が出てくる前の考え方。CBDの目標としては,トータルエコロジカルサービスのワイズユーズのようなことを考えるべき。
- 次はワゲニンゲン大学のLijbert Brussard教授。ターゲット8について。栄養素の過剰投入による汚染を避ける。栄養素利用の効率を上げる。ターゲット15について。一酸化二窒素1分子=メタン4分子=二酸化炭素296分子に相当。ターゲット8-11-13-14をターゲット7に入れて,持続可能にマネージするということで。
- オーストラリア博物館のDan Faith博士。ターゲット11.パーセントターゲットはカラカス行動計画などに戻っている。パーセントターゲットには限界があることはよくわかっている。生物多様性保全にとって価値が低い場所を守ることでもパーセントターゲットは満たされるかもしれないとか,biomeやクラスの定義に依存しているとか,もし90%が失われていたら15%の目標は不適切だとか。実際的な指標を反映するべき。ターゲット12については,2つのコメントがあった(が,バッテリー交換していたため,メモとれず)。
- 東京大学の武内和彦教授。気候変動条約との関連。とくに途上国にとっては組み合わせて考えるべき。2点目はタイムスパン。10年先の未来だけをみて行動するのでいいのか? 2010年目標は短期過ぎた。まず中長期の(2050年)あるべき姿を描き,そこからbackcastingして2020年にどこまでいくべきかを議論しなくては。第3に,先進国と途上国の関係性。より協調すべき。途上国の食糧生産,バイオ燃料の生産が先進国のために使われるということは地球生態系の問題であり,エコシステムガバナンスとでも呼ぶべき新たなガバナンス。2015年に国連ミレニアム開発目標が既に達成困難になっている。生物多様性の目標もこれと関連して議論されるべき。
- 最後にCSIRのRobert Scholes教授。自然資本の効果を明示的に考える。開発オプションの選択がよりバランスがとれるようになる。ブランケット保護主義よりもワイズユーズは頑健な哲学。ウィンウィンは理想だけれども,それが無理な場合は「悪くない」も価値がある。
- Chairから質問。Lijbertさんへ。ターゲットが相互依存している。1つのターゲットが達成されないときに他のターゲットはどうなるのか。次の質問。武内教授に。SATOYAMAを例にして2020年目標の発展について新しいインディケータが作れるか? Lijbertさんの回答。農業はターゲットに貢献できる。気候変動が負の影響をもたらすときに農業の役割は非常に大きい。武内教授の回答。本来はオンサイトで営まれていた資源をオフサイトに依存してしまったことが現在の危機。化石燃料からバイオマスへというのはオンサイトの資源に戻すということ。低炭素社会と資源循環型社会,自然共生社会を一体に考えて目標設定していくのが日本の21世紀環境立国戦略。2020年だと25%削減が日本の目標。これは高い目標ではないが大変。2050年には80%削減となっていて,これは本当の意味で低炭素社会。2020年時点で今とまったく違う持続可能な里山というのは提案してもいいが無理。むしろ2050年に実現できるようなビジョンを立て,2020年にはそこに至るためにどこまでやっておくかが大事。従来,日本の会社はCSRでやっていたが,この目標からするとこれではダメ。木材については,役所が国際材しか使わないといえばいい。そういう視点で考えれば新しい指標は出てくる。
- フロアからは? Sandraさんへの質問。森林でもなんでもいいので,南北のコンフリクトについて。回答はtrade-offとsynergyの2つの道があり,種によって違うのでネゴシエーションが大事,というようなことだった(と思う)。Danさんからの発言。生物多様性でsynergyが難しいこともあるんでは。Sandraが補足して,さっき言ったことは全部炭素循環についてのこと,ということで落着。次の質問。武内さんへ。日本の森林が残っているのは東南アジアの森林資源を使っているからという議論があるが,生態系サービスをどれだけ外から取り込んでいるのかを示すような指標を考えられないか? 武内さんの回答。自分は指標開発にはかかわっていないので直接は回答できないが,里山については外部への依存度は調べているので,地域的依存性の指標は作れるだろう。先週,名古屋でGCOEの議論をしたとき,ワイツゼッカー氏が言っていたのは,これまでの技術開発は人減らしにつながっていた。里山では人減らしの必要はない。技術開発が新たな雇用を生むように(シルバー人材活用みたいなもの?) それも目標として考えられるとおぼろげながら考えている。次の質問は難しかった。2050年に自然共生社会ができるとしてどういう将来像(?) Lijbertさん曰く,究極の答えはない。農業について生態学的集約化する。どうやって食料生産する? 松田さん曰く,すべての解決にはならないが,食料は本来先進国と途上国で不均衡があり,その是正が大事。そのためには,エコロジカルフットプリントはいい指標。先進国のそれは地球の2〜4倍。これを1倍にするのがambitiousな目標。次の質問は人間環境大学の藤井さんという人から。biome別の評価あるいはターゲットをそれぞれに作ってもらうか推進してもらうような表現を組みこめないか? それぞれの主体者にそれをしてもらうようなことを進めるような表現。Danさん回答。現状でもそういう追加目標は可能。Chairから3択質問。科学的に弱いか,傷があるか,頑健か。順番に回答。頑健,合意できない可能性があることを危惧,?,頑健,悲観的(これしか考えていない人は極めて少数),?(話の進み方が速過ぎてフォローできず)
- 矢原さんのclosing remark。明日の非公開の会議。アジア太平洋の実行計画。同時並行で3つのワーキンググループを作って,この2日間の議論を踏まえて,明日の17時頃にはその文書ができあがってpress releaseができるだろう。5月に貢献できるようなもの+より長期的な議論にも貢献できるような,生物多様性にかかわる科学者からの発信となるはず。
- 本当のclosing remarkはMooneyさんから。科学者コミュニティが何かの影響を政策的意思決定プロセスに与えられるように期待したい。いろいろな研究者からのプレゼンがあって相互に学びあうことができたと思う。
- 今回の議論については2〜3日中に,環境省生物多様性のサイトに掲載される予定。
Written by Minato Nakazawa, Ph.D. | Notice to cite or link here | [TOP PAGE]