山口県立大学 | 看護学部 | 中澤 港
疫学 (Epidemiology)
科目コード:4011200
対象学年・開講時期
3年前期(平成15年度)・水曜日8:40〜11:50
講義の目的と概要
本講義の目的は,人間集団を対象として,健康及び疾病にかかわる要因を特定し,因果関係を明らかにすることを目指す学問としての疫学を知ってもらうことである。そのため,疫学の定義と歴史を説明した後,鍵となる概念を基礎から説明し,研究方法論別に,実際の研究例も交えながら詳しく説明していく。
講義の計画と内容
- 1,2.疫学の定義と歴史,因果推論について(2003年4月16日)
- ▼疫学という学問の成り立ちを説明し,いろいろなリスク要因について説明した後,因果推論について説明する。
- ▽日本疫学会編「疫学」では1章,7章,8章,9章に相当する部分を主に講義する。
- ▽疫学における因果推論については,『統計科学のフロンティア5 多変量解析の展開 隠れた構造と因果を推理する』(岩波書店,2002)所収の,佐藤俊哉・松山裕「疫学・臨床研究における因果推論」の議論がよくまとまっていると思う。やや高度だが。
- ◎第1回講義概要
- 3,4.疫学指標とその標準化(2003年4月23日)
- ▼有病割合,罹患率,死亡率など実際に使われる疫学指標について説明し,比較のために標準化する方法についても説明する。
- ◎第2回講義概要
- 参考資料:指数関数と対数関数の大雑把な説明(PDF形式,106.7 KB)
- ☆2003年4月30日は休講です。代わりに7月23日に講義があります。☆
- 5,6.疫学研究のデザイン(2003年5月7日)
- ▼観察的疫学研究(記述疫学,地域相関研究,断面的研究,ケースコントロール研究,コホート研究)と介入研究に分け,それぞれのデザインと長所,短所について説明する。疫学研究倫理についても触れる。
- ◎第3回講義概要
- 7,8.標本抽出法,誤差やバイアスの制御(2003年5月14日)
- ▼さまざまな標本抽出法について,それぞれの長所と短所を含めて説明し,マッチングや無作為化,層化などのテクニックにより誤差やバイアスを制御する方法を説明する。
- ◎第4回講義概要
- 9,10.二次的データの分析(2003年5月21日)
- ▼既存資料の利用,疾病登録,スクリーニング,サーベイランス,メタアナリシスなど,自分で標本調査をするのではない疫学研究法のいろいろについて概説する。Evidence-Based Medicineの考え方にも触れる。
- ▼「疫学」でいえば,第11章から第14章に当たる。メタアナリシスやEBMについては「疫学」に説明がほとんどないようだが,重要なので説明する。
- ◎第5回講義概要
- 11, 12.疫学研究の展開(2003年5月28日)
- ▼分子疫学,遺伝疫学,ゲノム疫学,血清疫学,臨床疫学,環境疫学,薬剤疫学,理論疫学,栄養疫学,社会疫学といった展開について説明し,いくつかの実例を紹介する。
- ◎第6回講義概要
- ☆質問への回答と小テスト(2003年6月4日)
- ▼実習期間前に間があくので,ここで小テストをしておくことにした。電卓をもっている学生は持参して欲しい。もっていない人の分はこちらで用意する。
- 小テスト問題(PDF形式) | 回答用紙(PDF形式) | 解答例(PDF形式)
- ※上記解答例(2003年7月25日に正しいものと差し替えました)の問5の計算に誤りがありました。分母が1000+800+600+400+200=2000となっていましたが,もちろん3000なので,問5の計算結果は0.1066...となり,解答例としては,107パーミル(または0.107)となります。
- 小テストの成績評価
- ▼問5の得点が際立って低いことがわかりました。講義中で簡単にしか触れなかったためか,または回答時間が足りなかったのではないかと思います。
- 13, 14.大規模コホート研究の実際(2003年7月23日)
- ▼東京都老人総合研究所で日本各地の高齢者を対象とした大規模コホート研究に実際に携わってきた天野秀紀講師(非常勤)から,実際の大規模コホート研究がどのように行われるのかということをお話しいただく。
- 期末試験(2003年7月30日)8:40-10:10
- ▼電卓をもっていれば持参すること。小テストと70%は内容を重ねるので,小テストを完全に復習しておけば合格できるはずである。
- 期末試験問題(PDF形式) | 回答用紙(PDF形式) | 解答例(PDF形式)
- ▼期末試験と平常点から算出した(計算式:期末試験の素点に,1回の出席につき1点加算し,さらに小テストの得点の1/10を加算)成績評価は,以下の通りである。平均点が90.16,第1四分位が85.5という高得点になったが,1名だけ60点に達しなかったので,該当者は,1名の追試験対象者と同じ課題だが,再試験として9月24日(水)にレポートを提出されたい(追再試課題)。
- ▼期末試験時にお答えいただいた講義への評価結果は以下の通りである。ご協力に感謝すると同時に,今後の改善に役立てることをお約束する。なお,自由回答で,英文の資料が読めないという意見が多かったが,すぐに読んで貰うために配ったのではなく,将来勉強し直したくなったときに当たれる資料として配ったものなので,とりあえずは本棚に立てておいて貰えればと思う。
参考テキスト
- 日本疫学会(編):「疫学」南江堂, 1996:やや古いので,新しい情報を適宜web等で補う必要はあるが,疫学について広範囲にカバーされた手頃な教科書である。
- John M. Last [ed.] "A Dictionary of Epidemiology 4th Ed.", Oxford Unviersity Press, 2001:国際疫学会(International Epidemiological Association)が作った辞書である。疫学の標準的な用語定義が示されている。
- Rothman KJ and Greenland S [Eds.]: "Modern Epidemiology, 2nd Ed." Lippincott Williams & Wilkins, 1998:名著。研究者向け。
- Wassertheil-Smoller S: "Biostatistics and Epidemiology: A Primer for Health Professionals", Springer-Verlag, 1990:非常にわかりやすく書かれた優れた入門書だと思う。いろいろな概念の英語表現を知るためにも,大学院生にお薦めする。
- Rothman KJ: "Epidemiology: An Introduction", Oxford University Press, 2002(web):Rothmanが書いた新しい入門書。思想が体系的に語られているので,これも大学院生にお薦めする。
評価方法
基本的にはペーパーテスト(小テスト及び期末試験)によるが,出席点も加味する。
Correspondence to: minato@ypu.jp.
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