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1997年夏・ギデラの健康と栄養

Copyright (C) Minato NAKAZAWA, 2017. Last Update on 2017年3月17日 (金) at 03:08:13.

【19】 健診完了(1997年8月31日日曜)

31日日曜朝,何とかうまく尿検査もできた。とはいえ,前日の魚とりの興奮で夜更かししていた男の何人かは来なかったし,全体としても前年の調査よりカバー率が落ちてしまった。

諸悪の根源は大乾季(こちらの人たちはbig dryと呼ぶ)とアルクップ(アカシアの種)フィーバーである。去年からオーストラリア人のバイヤーがやってきて,植林用にアカシアの種を買ってくれるという経験をしてしまった村人たちは,それまでのサゴ作り(サゴヤシの幹を砕いて水で曝してデンプンを抽出する)や焼畑農耕での芋作りや狩猟に使っていた時間を大幅に減らして,こぞってアルクップ作業に入ってしまったのである。アルの木は村から離れたところにあるので,どの村でもキャンプ支度をしてアルの木が生えている森に行ってしまう家族が多かったのだ。聞いた話では,村によっては30,000 Kという,ここの人たちにしては破格な収入になったらしい。アカシアの種は1 kg当たり80 Kが相場なので,村全体でだが,種だけで375 kgも集めたということになる。まあフィーバーするのは理解できるがアルクップブルブル(アカシアの種を買いつけにくるオーストラリア人バイヤー。白人はブルブルと呼ばれる)が恨めしい。

13:10,すべて片付いて,Wipim行きのトラックが来るのを待ちながら,So氏の家にいたら,大塚さんが持ってきたのであろう,7月6日付けの朝日新聞が残っていた。東京湾でダイヤモンドグレース号というタンカーから油が流出した事故が気になるので,帰国したら調べねば。

トラックに乗るとき,前日獲れたワニの肉を少し貰っていった。WipimのN氏の家で炙って貰って食べたが,N氏の息子の一人が「初めて食べたが美味い」と言っていた。喜んで貰えて良かったけれども,なるほどワニはどの村でも獲れるというわけではないのだな。

N氏の話では,来年は100万キナかけてポートモレスビーから会社に来て貰い,WuroiからWipimを通ってMoreheadに至るトランスフライハイウェイを整備する計画なので,凄いことになるぞ,という。けれども,そういう話は今まで何度もあったが,実現したことはないので,たぶん今度もダメだろう。まあ,ダメ元で夢を語るのは悪いことじゃない。

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