枕草子 (My Favorite Things)

【第119回】 sendmail更新など〜老化を説明する仮説と道交法改正についての私感

(1999年1月22日;1999年10月21日改題)

火曜日に急遽ミーティングで発表することになり,去年のNatureに出ていた,ヒトでも寿命と子ども数はトレードオフの関係にあるここも参照できるか?),という論文を紹介した。杉本・古市「老化と遺伝子」(東京化学同人, 1998)に書かれているように,老化現象の説明としての体細胞廃棄説はショウジョウバエなどでは支持するデータがいくつか出ているが,ヒトでもそれが支持されるような(傍証でしかないが)データが出たということが興味深かったのである。CD-ROMとして入手できる英国貴族の家系図から歴史人口学の手法で生存年数と子ども数の関係を調べ,70歳以上まで生きた人で子ども数が少なくなっていたことから「長生きと再生産コストのトレードオフ」という話に持っていったのは,強引ではあるがうまい着眼点である。

水曜日あたりから道路交通法改正試案が話題になっていて,何か書きたかったのだが,忙しいこともあり書かずにいた。要するにチャイルドシートの義務づけ案と運転中の携帯電話使用規制案なのだが,既に批判されているように現「試案」は穴だらけとしても,ないよりはあった方がよいと思う。チャイルドシートについては,使用期間が短いわりに金がかかるから実施困難だとか,それを補うシステムを行政が整備するようにという意見を言う人がいるようだが,それは筋が違うと思う。チャイルドシートがないと事故の時に子どもが危険だというなら,ない状態が欠陥商品なのであって,アーキテクチャとしてチャイルドシートまで含めて考えなければおかしい。つまり,製造物責任という視点からメーカの責任で必要期間貸与するシステムを作るのが筋であろう。濡れた猫を乾かそうとして電子レンジに入れるようなユーザの面倒までメーカが見ろとは言わないが,子どもを乗せるというのは最も自家用車を使う正当性が感じられる局面の一つなのだから,そこを等閑にしていてはだめだ。まあ,現在でも大きな圧力団体の一つだから,自動車業界に負担がかかるようなことは実現される可能性は低いかもしれないけれど,政府に金を使わせるということは税金を使うということだから,自動車を使わない人にまでそのコストを分担させることになるわけで,ぼくは反対である。もっとも,本気で安全を考えるなら,自動車の台数を減らし,どうしても必要な場合以外は使用させないという方が抜本的解決であると個人的には思う。以前も書いたように,道が狭いわりに自動車が多すぎるし,健康な人が都会で自家用車を常に必要とするとはどうしても思えない。ここまでラジカルに言ってしまうと自動車という運動系拡大装置を愛する人たちに許容されないだろうけれど。

さて本題である。昨日,いくつかのメーリングリストが稼働しているサーバ2号機のsendmailを8.9.2にアップグレードした。sendmailを8.8.8から8.9.2に更新する理由は,それがよりよくSPAM対策をしてくれるからである。Majordomoにはじかせるよりもsendmailの段階ではじいてしまう方が効率がよい。sendmail自体のアップグレードは難しくない。FreeBSD-2.2.5Rが動いているサーバ2号機では,去年の大晦日に公開されたsendmail-8.9.2.tar.gzsendmail.orgのトップページからダウンロードし,tar xvzfしてからsendmail-8.9.2ディレクトリに移動し,make allとするだけでコンパイルは完了する。しかし問題は,sendmail.cfが8.8.8のもののままでは使えないということである(R8V7ベースだったのがR8V8ベースになったのである)。これまで使っていたCF3.6にはR8V7までの設定しかないので,新しいCFも必要になったわけだ。例によって工業技術院のRingサーバからCF-3.7Wpl2.tar.gzをダウンロードし,tar xvzfしてからCF-3.7Wpl2ディレクトリに移動し,Stadards/sendmail-v8.defをそこにsendmail.defという名前でコピーしてきて編集し,make sendmail.cfしてからsuして/etcにコピーし,sendmail8.9.2ディレクトリに戻ってmake installすればすべて完了である。sendmil.defの編集に際しては,Gooで検索した神戸大学のこのページのインストラクションが非常に役に立った。若干バージョンが違うのだけれど,概ねここに書かれている通りにやればうまくいく。ここに記して御礼申し上げたい。

これを書いているときにNew York Academy of SciencesからTHE SCIENCESの最新号が届いた。まだちゃんと読んではいないのだが,コーネル大学人類学教室のMeredith F. SMALL教授が書いた,女性の経血をタブーとする文化に関する新しい解釈の話が面白そうだ。ミシガン大のBeverly I. Strassmann(ぼくがPenn. Stateにいたときの受入れ教官だったJames William Wood教授の仲間)の,2年前のCurrent Anthropology論文を紹介しているだけという懸念もないではないが。ついでにメモしておくと,J.C. Aviseの"The Genetic Gods"という本の広告も載っていた。これは買わねばなるまい。進化学研究者は必読かと思う。


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