枕草子 (My Favorite Things)

【第590回】 無能なカードへの腹立ち紛れに(2001年7月16日)

毎度頭に来るのは,ビューカードの限度額である。1ヶ月定期を買った次の月に3ヶ月定期を買おうと思うと,限度額オーバーで買えないというのは,どう考えてもおかしい。翌々月にしか引き落とさないのはビューカード側が悪いので,こちらは即日引き落としでもなんら支障はない。それが使われる対象である駅窓口が5:30には稼動しているというのに,カードセンターが朝10時からしか動かないから駅窓口では対処できないというのも,有料カードとしては異例なほどのサービスの悪さではないか。しかも,昼間でもセンターへの電話は,なかなかつながらない。大量の現金を持ち歩くのがいやだから,わざわざ会費を払ってビューカードを使っているのに,こんなに不便なのでは現金に戻ることを真剣に考えようかと思う。だいたい,もう2年半もこの高価な定期券を買い続けているのだから,限度額も何もないものだ。あれは,基本的にその額までしか信用がないということだと思うのだが,これまで2年半の新幹線通勤につぎこんできた400万円以上の額をもってしても得られない信用とは,いったい何事なのだろうか。

今日の長野駅では窓口の方が低姿勢だったので,かつての上野駅ほど腹は立たなかったが,2年前の長野駅では同じようなシチュエーションで3ヶ月定期が買えたことを思い起こすと,サービスとしては悪化している。かつては端末機の操作で限度額オーバーでも発券できたのが,今はできなくなっているとするなら(真相は不明だが),考えられることはビューカードがVISAと提携したことによって端末機の機能に制約が強くなったということだろう。別にVISA提携なんてしなくていいから(というか,定期券だけで限度額近くまで行ってしまうので,このカードではVISAの買い物などする余地がない),もう少しカード利用者の利便性を考えてくれてもいいのではないだろうか。限度額を恒常的に上げてもらえれば,双方ハッピーになるような気がするのだが,支払能力にはまったく問題がないにも関わらず何度か拒否されたことがあり,まったく頭の悪いカード運営だと思う。

10時まで待つわけにはいかないし,かといって1ヶ月定期にすると毎月1万円ほど損をするし,と暫く悩んだ。次善の策として,往路だけ切符を買って,昼間カードセンターに電話して限度額を上げてもらい,上野駅で3ヶ月定期を買うことを思いついたので,長野駅での売上げを減らすことになるのは嫌だろうから回避方法を考えてくれるかと思って,窓口の方にそう言ってみたが,「そうですね」と言われてしまっては仕方がない。そういうわけで,切符を買って,あさま2号に乗った。どうせ切符になるなら,7:02発あさま550号にも間に合っていたので,それにもまた腹がたった。

あさま2号では上田を過ぎたところで乗車券の確認と称して車掌が巡回してくるのだが,上野と長野の新幹線改札の状況をみると,ほとんど新幹線では不正乗車は不可能なように思えるので,あれも無駄だと思う。音楽を聴いたり本を読んだり眠っていたりする乗客を起こしてまで検札するのは,乗客の利便性を大いに損ねていると思う。どこかに検札の有効性についてのデータがあったら教えて欲しいと思うが,たぶん5%にも満たないだろう。それなら無くしてもいいのではないだろうか。「見直す」ことができないのだとしたら,JRという組織の硬直性は末期症状だと思う。

上野駅に着いたのは9:20頃だった。10時まで待たないとビューカードセンターが使えないので,時間つぶしに駅構内の本屋に入った。気がついたら,1万円札を差し出し,篠田節子「ゴサインタン」(双葉文庫),貫井徳郎「誘拐症候群」(双葉文庫),別枝篤彦「世界の教科書は日本をどう教えているか」(朝日文庫),清水義範「やっとかめ探偵団とゴミ袋の死体」(祥伝社文庫),向山貴彦(著)+宮山香里(絵)「童話物語(上)大きなお話の始まり」「童話物語(下)大きなお話の終わり」(幻冬舎文庫),真保裕一「密告」(講談社文庫)が入った紙袋を受け取っている自分がいた。10:00前に1階に下りて構内の「みどりの窓口」で定期を買おうとしたら,継続でない定期券は改札の外でなければ買えないと言われた。普通の切符で考えると,構内で乗り継ぎ切符を買ったら重複部分は払わなくていいはずだから,それができないということは,この切符は払い損になるのだろうと思われたが,仕方がないので中央改札のすぐ外にある「みどりの窓口」に行った。異様に人が並んでいて,5分ほど待った挙句に窓口に辿り着いた。しかし,ビューカードセンターに連絡するのも手際が悪く,さらに,こちらが長野駅での事情を説明した後なので間違えようがないにもかかわらず,いちどは1ヶ月定期を発券されたので,それを払い戻しして3ヶ月定期を発券し直すのに再びビューカードセンターに連絡するとかいう失敗のチェーンリアクションをやらかしてくれたので,並んでいる人たちから白い目を浴びせられながら,窓口で20分も待つ羽目になった。念のためと思って「来るのに使った切符は……」と尋ねてみたが,やはり払い損であった。7260円を無為に失ったことに腹が立つ。

もっとも,前にも1ヶ月定期の後に3ヶ月定期を買うときに似たような目にあったことがあったのだから,金曜か土曜にビューカードセンターに連絡しておけばよかったわけで(なかなか電話がつながらず,無駄に時間がかかるので,あまりやりたくないのだが),その点,危機意識が足りなかった自分にも非はないわけではない。しかし,これほどの不便さを利用者に強いる商売もいまどき珍しいと思う。是非改善して欲しいものである。

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オーストラリア政府観光局が出しているメールマガジンで今日届いた情報によると,オーストラリアではカフェインレスのカプチーノを「エコチーノ」と呼ぶらしい。「エコ」とは実にいろいろな手垢がついた言葉になっているので,何が「エコ」なのか良くわからないが,倹約的ということだろうか? そういえば,先週末の信濃毎日新聞で,エコ・フェミニストとかいう肩書きの長野大学助教授による参院選候補者へのインタビューが記事になっていたが,経歴をみると男女平等的な研究しかしていなくて,環境問題とは関係なさそうな人なので,このエコもなんだか意味不明である。環境倫理学でいうenvironmental justiceみたいなことをさしてエコと呼ぶのなら,件の助教授の肩書きも無意味ではないかもしれないが,それにしては羽田候補へのインタビューは実に腰砕けで情けなかった。フェミニストというのも相当に手垢のついた言葉だから,そんな肩書きをつけていること自体(本人が自称しているのか信毎がつけたのか知らないが)センスが悪いか玉虫色を狙った確信犯かどちらかだろう。なんだかなあ。

昼食後,助手会幹事の投票をするために隣の建物の3階に行った帰りに,明朝の講義で必要な液晶プロジェクタの鍵とノートパソコンを受け取りに学科事務室に寄ったら,ちょうど良いところへ,とばかりにMOドライブをノートパソコンに接続するセットアップを頼まれた。持ち帰るのも面倒だったので,その場でやってしまった。10分余計にかかった。この雑用人生をなんとかしたい。

帰りは終電。貫井徳郎「誘拐症候群」を読了。良くできた犯罪小説と思う。たしかに「必殺」の匂いがする。強いて欠点をあげるなら,結末のテンポが急すぎるか。まあこの辺は好みかもしれないが。


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