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医療システム

2008年4月作成,最終更新2009年5月13日

テキスト『シンプル衛生公衆衛生学2009』第14章,pp.329-348.

1. 医療システムの国際比較


国名(数字は順位)目標到達度効率性1人当たり経費
医療水準*1平等性*2総合評価医療水準*1総合評価
日本13191013
デンマーク28212065348
スウェーデン428421237
スイス810226202
イタリア614113211
米国24321572371
英国1429241826
ニュージーランド311626804120
オマーン7259591862
キューバ3341404040118
コスタリカ404545253650
ソロモン諸島1271171082080134
シェラレオネ191186191183191183
*1 障害調整ゼロ歳平均余命による
*2 子供の生存年数の平等性による
出典:WHO "World Health Report 2000 Health Systems: Improving Performance" より,1997年の評価順位

1-1. 類型化(名称は決まったものではない)

*ヨーロッパ型福祉国家モデル
・日本の国民皆保険制度が手本にしたのはかつての英国の「ゆりかごから墓場まで」→財政破綻で軒並み崩壊(英国では,サッチャーの改革でも無料の公立病院は維持されたが医師・看護師が不足し,高度医療を受けるには長期の待ち。入院待ち患者が100万人以上。ニュージーランドでも公立病院は大都市にしか残らなかった)
・イタリアなど南欧諸国は,エスピン=アンデルセンの福祉レジーム論では家族主義的福祉国家に区分される。医療制度改革前までの日本と良く似ている。
・スウェーデン,デンマークなど北欧諸国は,エスピン=アンデルセンの福祉レジーム論では社会民主主義的福祉国家とされる。所得の再配分機能が強いので,税金を多く取ることによって比較的公平な医療が維持されている。
・スイスなど中央ヨーロッパ諸国はエスピン=アンデルセンの福祉レジーム論では保守主義的福祉国家に区分される。スイスは米国に次いでコストがかかっているので効率性はあまり良くないが,平等な医療が提供されている。
*米国型市場原理モデル
・国民健康保険がない代わりに民間保険が発達し,65歳以上高齢者・身体障害者は「メディケア」,低所得者は「メディケイド」と呼ばれる公的健康保険制度がカバー。しかし,加入している保険の種類によって病院も系列化されており,受けられる医療も制限される。かつメディケイドに入るほど低所得でなく,私費で民間保険に入れるほどの所得がない4400〜4500万人は全額自己負担
*低コスト福祉医療社会モデル
・キューバは,75〜120世帯ごとにファミリードクターが決まっていて,プライマリケアが充実していることで有名である。大学とファミリードクターに連携が確立していて,臨床研修もファミリードクターの下でも行われるため,総合医が育つ環境が維持されている。医療費について個人負担はない。米国による経済封鎖を受けているため物資が不足しているが,医薬品の独自開発や代替医療の利用など,コストをかけずに比較的良い医療が提供されている(ref.吉田太郎「世界がキューバ医療を手本にするわけ」築地書館)
・コスタリカは,完全に軍備を放棄した国なので,経済水準は高くないが軍事費にかかるはずの歳出を教育と医療に振り分けることによって,社会主義国家ではないが公立病院での診療での個人負担はなくしている。従って,誰もが料金を気にせずに必要な医療を受けられる環境になっている。ただし,待ち時間が長いなど不便もあるため,金持ちは私立病院を受診するのが普通である(丸岡泰『コスタリカの保健医療政策形成―公共部門における人的資源管理の市場主義的改革』専修大学出版, 2008)
*途上国モデル
・上の表には,途上国の例としてソロモン諸島とシェラレオネを挙げてある。経済規模が小さいため,高い水準の医療を提供することが困難だし,感染症なども多い。しかしソロモン諸島では,比較的,効率性が良い。金をかけないわりには良い医療が提供されているといえる。途上国では一般に医師が少ないため,医療提供においてナースが果たす役割が大きい。例えばソロモン諸島では木から落ちて頭部に傷を負い,血が噴出しているというような場合でも,消毒はするが麻酔もせずにナースが縫うのが普通である。医師がいる病院に連れて行くまでに何日もかかっては意味が無いので,村に住んでいるナースがかなりの治療を受け持っているのである。また,制度化されていない伝統医療が受け持つ部分も大きい。とくに先進国であれば終末期医療とか緩和ケア医療に相当する部分は,伝統医療に委ねられる場合が多く,医療コストはかからないのが普通である。

1-2. ポイント

2. 日本の医療システム

公衆衛生行政の中で,医療行政は根幹となる制度の1つである。医療行政において,なぜシステムを考える必要があるかといえば,医療には多大な資源を要するからである。必要なところに必要なだけ提供できる,効果的なシステムを構築する必要がある。もちろん,国民が疾病や傷害にならないための対策(一次予防)や疾病の早期発見・早期治療(二次予防),傷病からの社会復帰を目指したリハビリテーション(三次予防)からなる保健行政とは不可分であり,効果的な保健医療行政(福祉行政とも連携して保健医療福祉行政という捉え方もある)を推進する必要があることは言うまでもない。

医療行政が扱うのは,プライマリケア,救急医療,へき地医療,医療安全,院内感染防止,医学的リハビリテーション,健診・検診(以上はテキスト図14-1に挙げられている)だけではなく,高度医療,移植医療なども含まれるし,図14-1では保健行政に含まれている感染症対策(集団の感染状況の把握や蔓延防止のための公衆衛生的な対策は保健所業務だから,その意味ではもちろん保健行政である)も,治療的側面について考えれば,医療行政にも含まれるのは当然であろう。

医療行政は厚生労働省が所管している(余談だが,作家の海堂尊は『イノセント・ゲリラの咆哮』の中で,登場人物の1人に,厚生労働省を解体して,医師による医療庁を新設せよと語らせている。労働行政と衛生行政を1つの省にまとめてしまったことは,産業保健の推進という点からは意味があったかもしれないが,医療行政のフットワークを重くしたという欠点もあるのは一面の真理だろう)。だからといって,すべての医療システムを厚生労働省がデザインすればいいというわけにはいかない。高齢者が多い地域と若者が多い地域では,必要とされる医療資源が異なっているだろう。寒い地方と暖かい地方,中山間地と漁村,工業地帯等々,社会環境条件が異なれば,病気の種類や分布も違ってくるだろう。したがって,医療システムのデザインには階層性が必要である。

日本では,階層構造をもった医療システムのデザインは,医療圏としての3層構造の設定と,医療圏ごとの医療計画という形で実現されている。医療計画としては,医療提供施設と医療従事者をどのように配備するのかが根幹であり,その手続きを規定する法律が医療法である。

2-1. 医療法による整備

「医療法」1948年7月30日制定(最新の改正2008年5月2日,新介護労働者法に関連する部分は一部未施行)

参照:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO205.htmlまたはhttp://www.houko.com/00/01/S23/205.HTM

2-1-1. 医療提供施設

*病院
医療法第一条の五 この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
■病院数・病床数:医療施設動態調査(平成21年1月末概数)によると,病院数は8,783,病床数は1,608,949で,いずれも減少傾向。数年前まで増えていた療養病床も減少傾向(医療制度改革のため)。
医療法第二十一条 病院は、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有し、かつ、記録を備えて置かなければならない。
  1. 当該病院の有する病床の種別に応じ、厚生労働省令で定める員数の医師、歯村医師、看護師その他の従業者
  2. 各科専門の診察室
  3. 手術室
  4. 処置室
  5. 臨床検査施設
  6. エックス線装置
  7. 調剤所
  8. 給食施設
  9. 診療に関する諸記録
  10. 診療科名中に産婦人科又は産科を有する病院にあつては、分べん室及び新生児の入浴施設
  11. 療養病床を有する病院にあつては、機能訓練室
  12. その他厚生労働省令で定める施設
*地域医療支援病院
医療法第四条 国、都道府県、市町村、第42条の2第1項に規定する社会医療法人その他厚生労働大臣の定める者の開設する病院であつて、地域における医療の確保のために必要な支援に関する次に掲げる要件に該当するものは、その所在地の都道府県知事の承認を得て地域医療支援病院と称することができる。
  1. 他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供し、かつ、当該病院の建物の全部若しくは一部、設備、器械又は器具を、当該病院に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の診療、研究又は研修のために利用させるための体制が整備されていること。
  2. 救急医療を提供する能力を有すること。
  3. 地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有すること。
  4. 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
  5. 第21条第1項第2号から第8号まで及び第10号から第12号まで並びに第22条第1号及び第4号から第9号までに規定する施設を有すること。
  6. その施設の構造設備が第21条第1項及び第22条の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
2 都道府県知事は、前項の承認をするに当たつては、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴かなければならない。
3 地域医療支援病院でないものは、これに地域医療支援病院又はこれに紛らわしい名称を付けてはならない。
*特定機能病院
医療法第四条の二 病院であつて、次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができる。
  1. 高度の医療を提供する能力を有すること。
  2. 高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること。
  3. 高度の医療に関する研修を行わせる能力を有すること。
  4. その診療科名中に、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働省令で定める診療科名を有すること。
  5. 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
  6. その有する人員が第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
  7. 第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条の二第二号、第五号及び第六号に規定する施設を有すること。
  8. その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
2 厚生労働大臣は、前項の承認をするに当たつては、あらかじめ、社会保障審議会の意見を聴かなければならない。
3 特定機能病院でないものは、これに特定機能病院又はこれに紛らわしい名称を付けてはならない。
*診療所
医療法第一条の五 2 この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
医療法第十三条 患者を入院させるための施設を有する診療所の管理者は、入院患者の病状が急変した場合においても適切な治療を提供することができるよう、当該診療所の医師が速やかに診療を行う体制を確保するよう努めるとともに、他の病院又は診療所との緊密な連携を確保しておかなければならない。(平成18年に全面改正され,「同一の患者を48時間を超えて入院させることのないよう努めなければならない」という文言が無くなった)
医療法第二十一条の二 療養病床を有する診療所は、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有しなければならない。
  1. 厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、看護師及び看護の補助その他の業務の従業者
  2. 機能訓練室
  3. その他厚生労働省令で定める施設
■診療所数:「医療施設動態調査」(平成21年1月末概数)では一般診療所が99,497(うち有床は11,520),歯科診療所が67,989。有床診療所は減少傾向。この2〜3年は診療所総数はほぼ横ばい。
*介護老人保健施設に関する規定
医療法第一条の六 この法律において、「介護老人保健施設」とは、介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)の規定による介護老人保健施設をいう。
●介護保険法 第五節 介護保険施設  第二款 介護老人保健施設:(94条開設許可,95条施設の管理,96条,97条施設の基準,他):第九十六条 介護老人保健施設の開設者は、次条第三項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準に従い、要介護者の心身の状況等に応じて適切な介護保健施設サービスを提供するとともに、自らその提供する介護保健施設サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより常に介護保健施設サービスを受ける者の立場に立ってこれを提供するように努めなければならない。
 介護老人保健施設の開設者は、介護保健施設サービスを受けようとする被保険者から提示された被保険者証に、認定審査会意見が記載されているときは、当該認定審査会意見に配慮して、当該被保険者に当該介護保健施設サービスを提供するように努めなければならない。
第九十七条 介護老人保健施設は、厚生労働省令で定めるところにより、療養室、診察室、機能訓練室、談話室その他厚生労働省令で定める施設を有しなければならない。
 介護老人保健施設は、厚生労働省令で定める員数の医師、看護師、介護支援専門員及び介護その他の業務に従事する従業者を有しなければならない。
 前二項に規定するもののほか、介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準は、厚生労働大臣が定める。
 厚生労働大臣は、前項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準(介護保健施設サービスの取扱いに関する部分に限る。)を定めようとするときは、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴かなければならない。
 介護老人保健施設の開設者は、要介護者の人格を尊重するとともに、この法律又はこの法律に基づく命令を遵守し、要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならない。
(医療法の準用)第百五条 医療法第八条の二第二項 及び第九条 の規定は、介護老人保健施設の開設者について、同法第十五条第一項 及び第三項 の規定は、介護老人保健施設の管理者について、同法第三十条 の規定は、第百一条から前条までの規定に基づく処分について準用する。この場合において、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
(医療法との関係等)第百六条 介護老人保健施設は、医療法 にいう病院又は診療所ではない。ただし、医療法 及びこれに基づく命令以外の法令の規定(健康保険法 、国民健康保険法 その他の法令の政令で定める規定を除く。)において「病院」又は「診療所」とあるのは、介護老人保健施設(政令で定める法令の規定にあっては、政令で定めるものを除く。)を含むものとする。
*助産所
医療法第二条 この法律において、「助産所」とは、助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く。)を行う場所をいう。
 助産所は、妊婦、産婦又はじよく婦十人以上の入所施設を有してはならない。
医療法第十四条 助産所の管理者は、同時に十人以上の妊婦、産婦又はじよく婦を入所させてはならない。ただし、他に入院させ、又は入所させるべき適当な施設がない場合において、臨時応急のため入所させるときは、この限りでない。

2-1-2. 医療提供体制の確保

*医療圏について
○医療圏とは医療を提供する単位のことで,医療のレベルに応じて,一次医療圏,二次医療圏,三次医療圏がある。一次医療圏は住民の日常生活に密着した医療・保健・福祉サービスを提供する区域で,通常,各市区町村が一次医療圏を構成している。二次医療圏は主として入院医療の整備を図る地域的単位として設定され,1ないし数市区町村から構成されている。三次医療圏は,特殊な医療も含めて広域な医療サービスを提供する区域で,都道府県が単位となっている(テキストp.333)。
○下記に示す通り,医療法第30条によって,(1)国の基本方針,(2)都道府県ごとの医療計画を定めることが規定され,医療計画の中では(3)病床数を計画する単位となる圏域としての二次医療圏(第30条の4の2号10項)と高度医療などを提供する単位となる圏域としての三次医療圏(第30条の4の2号11項)を定めることとされている。一次医療圏については規定がないが,プライマリケアを提供する単位として考えると,日本の一次医療圏は範囲が広すぎる。二次医療圏は,ほぼ保健所管内に相当する。
医療法第5章 医療提供体制の確保
第1節:基本方針:(第30条の3)
第2節:医療計画:(第30条の4〜第30条の11)
第3節:医療従事者の確保等に関する施策等:(第30条の12〜第30条の13)
第4節:公的医療機関:(第31条〜第38条)
●医療法第三十条の三 厚生労働大臣は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保(以下「医療提供体制の確保」という。)を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。(この条項は平成18年改正で追加された)
 基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
  1. 医療提供体制の確保のため講じようとする施策の基本となるべき事項
  2. 医療提供体制の確保に関する調査及び研究に関する基本的な事項
  3. 医療提供体制の確保に係る目標に関する事項
  4. 医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携並びに医療を受ける者に対する医療機能に関する情報の提供の推進に関する基本的な事項
  5. 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保に関する基本的な事項
  6. 次条第1項に規定する医療計画の作成及び医療計画に基づく事業の実施状況の評価に関する基本的な事項
  7. その他医療提供体制の確保に関する重要事項
 厚生労働大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
医療法第三十条の四 都道府県は、基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。
 医療計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
  1. 都道府県において達成すべき第4号及び第5号の事業の目標に関する事項
  2. 第4号及び第5号の事業に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう。以下同じ。)に関する事項
  3. 医療連携体制における医療機能に関する情報の提供の推進に関する事項
  4. 生活習慣病その他の国民の健康の保持を図るために特に広範かつ継続的な医療の提供が必要と認められる疾病として厚生労働省令で定めるものの治療又は予防に係る事業に関する事項
  5. 次に掲げる医療の確保に必要な事業(以下「救急医療等確保事業」という。)に関する事項(ハに掲げる医療については、その確保が必要な場合に限る。)
    • イ.救急医療
    • ロ.災害時における医療
    • ハ.へき地の医療
    • ニ.周産期医療
    • ホ.小児医療(小児救急医療を含む。)
    • ヘ.イからホまでに掲げるもののほか、都道府県知事が当該都道府県における疾病の発生の状況等に照らして特に必要と認める医療
  6. 居宅等における医療の確保に関する事項
  7. 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保に関する事項
  8. 医療の安全の確保に関する事項
  9. 地域医療支援病院の整備の目標その他医療機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項
  10. 主として病院の病床(次号に規定する病床並びに精神病床、感染症病床及び結核病床を除く。)及び診療所の病床の整備を図るべき地域的単位として区分する区域の設定に関する事項
  11. 二以上の前号に規定する区域を併せた区域であつて、主として厚生労働省令で定める特殊な医療を提供する病院の療養病床又は一般病床であつて当該医療に係るものの整備を図るべき地域的単位としての区域の設定に関する事項
  12. 療養病床及び一般病床に係る基準病床数、精神病床に係る基準病床数、感染症病床に係る基準病床数並びに結核病床に係る基準病床数に関する事項
  13. 前各号に掲げるもののほか、医療提供体制の確保に関し必要な事項
 都道府県は、前項第2号に掲げる事項を定めるに当たつては、次に掲げる事項に配慮しなければならない。
  1. 医療連携体制の構築の具体的な方策について、前項第4号の厚生労働省令で定める疾病又は同項第5号イからヘまでに掲げる医療ごとに定めること。
  2. 医療連携体制の構築の内容が、患者が退院後においても継続的に適切な医療を受けることができることを確保するものであること。
  3. 医療連携体制の構築の内容が、医療提供施設及び居宅等において提供される保健医療サービスと福祉サービスとの連携を含むものであること。
  4. 医療連携体制が、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者、介護保険法に規定する介護サービス事業者、住民その他の地域の関係者による協議を経て構築されること。
 第2項第10号及び第11号に規定する区域の設定並びに同項第12号に規定する基準病床数に関する標準(療養病床及び一般病床に係る基準病床数に関する標準にあつては、それぞれの病床の種別に応じ算定した数の合計数を基にした標準)は、厚生労働省令で定める。
 都道府県は、第2項第12号に規定する基準病床数を定めようとする場合において、急激な人口の増加が見込まれることその他の政令で定める事情があるときは、政令で定めるところにより、同号に規定する基準病床数に関し、前項の標準によらないことができる。
 都道府県は、第 12項の規定により当該都道府県の医療計画が公示された後に、急激な人口の増加が見込まれることその他の政令で定める事情があるときは、政令で定めるところにより算定した数を、政令で定める区域の第2項第12号に規定する基準病床数とみなして、病院の開設の許可の申請その他の政令で定める申請に対する許可に係る事務を行うことができる。
 都道府県は、第 12項の規定により当該都道府県の医療計画が公示された後に、厚生労働省令で定める病床を含む病院の開設の許可の申請その他の政令で定める申請があつた場合においては、政令で定めるところにより算定した数を、政令で定める区域の第2項第12号に規定する基準病床数とみなして、当該申請に対する許可に係る事務を行うことができる。
 都道府県は、医療計画を作成するに当たつては、他の法律の規定による計画であつて医療の確保に関する事項を定めるものとの調和が保たれるようにするとともに、公衆衛生、薬事、社会福祉その他医療と密接な関連を有する施策との連携を図るように努めなければならない。
 都道府県は、医療計画を作成するに当たつて、当該都道府県の境界周辺の地域における医療の需給の実情に照らし必要があると認めるときは、関係都道府県と連絡調整を行うものとする。
10 都道府県は、医療に関する専門的科学的知見に基づいて医療計画の案を作成するため、診療又は調剤に関する学識経験者の団体の意見を聴かなければならない。
11 都道府県は、医療計画を定め、又は第30条の6の規定により医療計画を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県医療審議会及び市町村(救急業務を処理する一部事務組合及び広域連合を含む。)の意見を聴かなければならない。
12 都道府県は、医療計画を定め、又は第30条の6の規定により医療計画を変更したときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に提出するとともに、その内容を公示しなければならない。
●医療法第三十条の五 都道府県は、医療計画を作成し、又は医療計画に基づく事業を実施するために必要があると認めるときは、市町村その他の官公署、介護保険法第7条第7項に規定する医療保険者又は医療提供施設の開設者若しくは管理者に対し、当該都道府県の区域内における医療機能に関する情報その他の必要な情報の提供を求めることができる。
●医療法第三十条の六 都道府県は、少なくとも5年ごとに第30条の4第2項第1号及び第9号に定める目標の達成状況並びに同項各号(第1号及び第9号を除く。)に掲げる事項について、調査、分析及び評価を行い、必要があると認めるときは、当該都道府県の医療計画を変更するものとする。
●医療法第三十条の七 医療提供施設の開設者及び管理者は、医療計画の達成の推進に資するため、医療連携体制の構築のために必要な協力をするよう努めるものとする。
 病院又は診療所の管理者は、医療計画の達成の推進に資するため、居宅等において医療を提供し、又は福祉サービスとの連携を図りつつ、居宅等における医療の提供に関し必要な支援を行うよう努めるものとする。
 病院の開設者及び管理者は、医療計画の達成の推進に資するため、当該病院の医療業務に差し支えない限り、その建物の全部又は一部、設備、器械及び器具を当該病院に勤務しない医師、歯科医師又は薬剤師の診療、研究又は研修のために利用させるように努めるものとする。
●医療法第三十条の八 厚生労働大臣は、医療計画の作成の手法その他医療計画の作成上重要な技術的事項について、都道府県に対し、必要な助言をすることができる。
●医療法第三十条の九 国は、医療計画の達成を推進するため、都道府県に対し、予算の範囲内で、医療計画に基づく事業に要する費用の一部を補助することができる。
●医療法第三十条の十 国及び地方公共団体は、医療計画の達成を推進するため、病院又は診療所の不足している地域における病院又は診療所の整備その他必要な措置を講ずるように努めるものとする。
 国は、前項に定めるもののほか、都道府県の区域を超えた広域的な見地から必要とされる医療を提供する体制の整備に努めるものとする。
●医療法第三十条の十一 都道府県知事は、医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合には、病院若しくは診療所を開設しようとする者又は病院若しくは診療所の開設者若しくは管理者に対し、都道府県医療審議会の意見を聴いて、病院の開設若しくは病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更又は診療所の病床の設置若しくは診療所の病床数の増加に関して勧告することができる。
●医療法第三十条の十二 都道府県は、次に掲げる者の管理者その他の関係者との協議の場を設け、これらの者の協力を得て、救急医療等確保事業に係る医療従事者の確保その他当該都道府県において必要とされる医療の確保に関する事項に関し必要な施策を定め、これを公表しなければならない。(注:この項は,医療従事者の確保について平成18年改正で追加された)
  1. 特定機能病院
  2. 地域医療支援病院
  3. 第31条に規定する公的医療機関
  4. 医師法第16条の2第1項に規定する厚生労働大臣の指定する病院
  5. 診療に関する学識経験者の団体
  6. 大学その他の医療従事者の養成に関係する機関
  7. 当該都道府県知事の認定を受けた第42条の2第1項に規定する社会医療法人
  8. その他厚生労働省令で定める者
 前項各号に掲げる者の管理者その他の関係者は、同項の規定に基づき都道府県が行う協議に参画するよう都道府県から求めがあつた場合には、これに協力するよう努めなければならない。
●医療法第三十条の十三 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者は、前条第1項の規定により都道府県が定めた施策の実施に協力するよう努めなければならない。

2-2. 医療従事者について

2-2-1. 医師

医師法により,資格要件(免許について第2条から第8条,国家試験について等,第9条〜第16条で定められている),臨床研修義務,業務上の責務・義務など(先頃,発熱患者の診察を拒否した医療施設があったことについて舛添厚生労働大臣が医師法違反であるとコメントした応召義務のほか,無診察診療の禁止,カルテの記載・保存義務など)が定められている。医師数は医師法第六条3項で定められた届出に基いて,後述の歯科医師数,薬剤師数とともに「医師・歯科医師・薬剤師調査」として2年ごとに公表されている。2006年末時点での届出医師数は277,927人である(「平成18(2006)年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より「結果の概要」を参照)。増加中だが増加率は昭和期より低い。

医師法第六条 免許は、医師国家試験に合格した者の申請により、医籍に登録することによつて行う。

2 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、医師免許証を交付する。

3 医師は、厚生労働省令で定める二年ごとの年の十二月三十一日現在における氏名、住所(医業に従事する者については、更にその場所)その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年一月十五日までに、その住所地の都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届け出なければならない。

なお,医師法については,「第一条 医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」は大変重要である。

2-2-2. 歯科医師

歯科医師法により資格要件,責務・義務などが定められている。歯科医師法の法文はほぼ医師法に準ずるものとなっていて,例えば「第一条  歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」も,ほとんど医師法第一条と同じである。臨床研修も医師と同じく平成18(2006)年から必修となった。歯科医師免許も第6条に規定された歯科医籍への登録により行われる。

2-2-3. その他の医療従事専門職(テキストp.336-337)

下線を付した3つは都道府県知事の免許,ケアマネは知事の登録制,斜体は厚生労働大臣の登録制,他は厚生労働大臣の免許

薬剤師,看護師,准看護師,保健師,助産師,診療放射線技師,臨床検査技師,理学療法士(PT),作業療法士(OT),視能訓練士(ORT),言語聴覚士(ST),介護支援専門員(ケアマネージャー)栄養士,管理栄養士,調理師,臨床工学技士,救急救命士,歯科衛生士,歯科技工士,義肢装具士,あん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師,柔道整復師,精神保健福祉士(PSW)社会福祉士・介護福祉士労働衛生コンサルタント。以上の職種は,すべて法律に規定されている。

法律に規定されていない専門職として臨床心理士,医療ソーシャルワーカー(MSW),診療情報管理士,腫瘍登録士

2-3. 地域における連携

2-4. 医療制度改革(詳しくは真鍋先生による特別講義で)

■高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律:昭和57年8月17日制定,最終改正平成20年5月28日)理念は下枠内第1条〜第3条を参照。

(1)医療費適正化について「基本方針」と「適正化計画」の策定・評価

(2)特定健診(いわゆるメタボ健診)と特定保健指導の規定

(3)後期高齢者医療制度導入(75歳以上をそれまでの医療保険から離脱させて新たに広域単位で独立した医療保険を運用させる)

第1条(目的)
この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もつて国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。
第2条(基本的理念)
国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとする。
2 国民は、年齢、心身の状況等に応じ、職域若しくは地域又は家庭において、高齢期における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられるものとする。
第3条(国の責務)
国は、国民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組が円滑に実施され、高齢者医療制度(第3章に規定する前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整及び第4章に規定する後期高齢者医療制度をいう。以下同じ。)の運営が健全に行われるよう必要な各般の措置を講ずるとともに、第1条に規定する目的の達成に資するため、医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策を積極的に推進しなければならない。

■見直し

(1)「後期高齢者」という呼称への反発→通称を「長寿医療制度」とする。法律上は「後期高齢者」のまま

(2)特定健診のスクリーニング基準の国際標準とのずれ,海外からも批判。「異常」となる人が多すぎ。

2-5. 医療の情報化

流れ
*2001年「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」策定
*2003年制定(2005年施行)の個人情報保護法→2004年「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」
レセプトオンライン請求義務化と反対運動
政府の狙い
・電子化によりレセプトの管理効率化・迅速化・自動化・ペーパレス化・人為的ミス排除など
・レセプトデータを疫学調査に活用し、その結果を保健指導などに役立てることで、中長期的な医療費抑制効果を期待
・保険者が特定健診の結果と事実の分析に基づいて一層効果的な地域保健施策を立案できる
・住民や患者をより適切な受療行動へ導くことができる
神奈川県保険医協会を中心とする反対運動の主張
・医療の標準的な範囲が定められ、保険適用の範囲が制限されるので、患者の自己負担が増える
・患者の診療情報が漏れる
・患者の診療情報が医療以外の目的で使われる
・対応できない近医(かかりつけ医として機能してきた、多くは高齢の開業医)が廃業せざるを得なくなる(オンラインシステム導入には初期費用だけで100〜300万円もかかる)
参考
厚生労働省令「保険医療機関又は保険薬局に係る光ディスク等を用いた費用の請求等に関する取扱いについて」(平成18年4月10日保総発第0410001号)により義務化。
「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」(平成18年厚生労働省令第111号)第2条により改正された請求省令が平成20年4月1日に施行されたことに伴い,平成20年5月1日付けで「保険医療機関又は保険薬局に係る電子情報処理組織等を用いた費用の請求に関する取扱要領」が一部変更され診療所については期限が緩和されたが,義務化の方向は変わっていない。
日本医師会,日本歯科医師会,日本薬剤師会が共同で反対声明を出している。
「営業の自由を侵害し、情報漏洩の危険性があるほか、法律による改正ではなく、省令改正で診療報酬請求権に制限を設けるのは違憲」として、神奈川県を中心に35都府県の医師・歯科医師961人が国を相手に、省令に従う義務がないことの確認を求めて2009年1月21日、横浜地裁に提訴。
2009年5月8日厚生労働省令110号で,5月10日時点でオンライン請求できないものについて1年以内だが義務化延期が認められた。

2-6. 医療保障(テキストp.341〜)

医療保険〜国民皆保険(テキストp.342,表14-5参照)
*保険診療の充実により,基本的には誰でも受けられる:医療の高度化に伴って自由診療が増大するが,そこまでは皆保険ではカバーしきれないので,民間の保険(特約)の入る余地がある。それでも完全に等質とはいかず,医療格差が生まれる。
*上述の通り,医療制度改革の一環で大きく変わりつつある。とくに高齢者医療確保法によって75歳以上の人の医療保険を独立させ,都道府県単位の広域連合を保険者としたことによって,地域間格差が拡大する恐れがある。
*混合診療問題:例えば重粒子線治療でかかる費用を公費負担すべきなのかは難しい問題
公費医療制度(テキストp.343,表14-6参照)
*国家補償(戦傷病者特別援護法,原子爆弾被爆者援護法,予防接種法による予防接種被害の補償など),社会防衛(感染症法など),社会福祉(生活保護法による生活保護者への医療扶助など)等の目的で行われる。
*障害者自立支援法(2005)により,障害者に対する公費医療(児童福祉法による育成医療,身体障害者福祉法による更生医療,精神保健福祉法による精神医療など)は,自立支援医療と呼ばれるようになった。

2-7. 障害者福祉(テキストp.344〜)

*三障害:
身体障害,知的障害,精神障害
*近年注目されている発達障害:
自閉症(autism),学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD)等
*「害」ではない
当事者は「障碍」あるいは「障がい」という書き方を望む人が多いが,法文では「障害」
*人数
p.345の表14-7を参照。
*障害者福祉の制度を規定する法律
障害者基本法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神保健福祉法,児童福祉法,発達障害者支援法(2004年制定),障害者自立支援法(2005年制定),障害者雇用促進法,社会福祉法(p.346,表14-8参照)
*障害者基本法により,国による「障害者基本計画」(p.346,表14-9参照)の策定が義務付けられている。
*障害者自立支援法は,従来三障害別々に行われてきた福祉サービスを一元化した。自己決定権を尊重するために措置制度から支援費制度へ移行した流れを汲んでいるが,反面,零細なサービス事業者の負担が増えたり,障害者自身にとっても負担が増えたという声もある。

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