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医学情報処理演習:第13回課題の回答例

課題

survivalライブラリに入っているデータovarianは,卵巣がんに対する2種類の治療法を比較する無作為化臨床試験の結果である。Eastern Cooperative Oncology Groupの研究であり,含まれている変数は以下の通りである。

futime
生存時間または観察打ち切りまでの時間(日)
fustat
打ち切りフラグ
age
年齢(歳)
resid.ds
残留疾病の有無(1がなし,2があり)
rx
治療種類(処理群別を示す変数)
ecog.ps
ECOG能力状況(0が病気がないのとまったく同じく何の制限もなく活動できる,1が強い運動はできないが軽い家事労働やオフィスワークならできる,2が起きている時間の半分くらいは活動できる,3が半分以上ベッドか椅子にいる,4がセルフケア不能,5が死亡を意味する)

このデータから,治療種類の違いによって卵巣がんの生存時間に差が出たか,年齢と残留疾病の有無を共変量として調整して分析せよ。

回答例

プログラムは下記の通り(it13kadai-2005.Rとしてダウンロードもできる)。

require(survival)
data(ovarian)
res <- coxph(Surv(futime,fustat)~age+factor(resid.ds)+factor(rx),data=ovarian)
summary(res)
png("it13kadai-2005.png",width=480,height=360)
plot(survfit(res),xlab="time (days)",ylab="survival rate")
dev.off()

結果として,下記の出力と,右図が(ディスプレイには出てこないがpng形式画像ファイルとして)得られる。

コックス回帰による生存曲線
Call:
coxph(formula = Surv(futime, fustat) ~ age + factor(resid.ds) + 
    factor(rx), data = ovarian)

  n= 26 
                    coef exp(coef) se(coef)      z      p
age                0.129     1.137   0.0473  2.718 0.0066
factor(resid.ds)2  0.696     2.006   0.7585  0.918 0.3600
factor(rx)2       -0.849     0.428   0.6392 -1.328 0.1800

                  exp(coef) exp(-coef) lower .95 upper .95
age                   1.137      0.879     1.036      1.25
factor(resid.ds)2     2.006      0.498     0.454      8.87
factor(rx)2           0.428      2.337     0.122      1.50

Rsquare= 0.475   (max possible= 0.932 )
Likelihood ratio test= 16.8  on 3 df,   p=0.000789
Wald test            = 14.6  on 3 df,   p=0.00216
Score (logrank) test = 20.8  on 3 df,   p=0.000118

この結果から,まずLikelihood ratio testの結果をみると,p=0.000789と0.05よりずっと小さいので,このモデルはデータに適合しているといえる。Rsquareの値から,このモデル(年齢と治療種類を独立変数とするコックス回帰)によって,生存時間の約47.5%が説明されると考えられる。

次に各独立変数の効果の有意性をみると,年齢(age)は共変量として5%水準で有意に影響していて,exp(coef)が1.137なので,残留疾病の有無と治療種類が同じなら,年齢が1歳上がると平均して生存時間が1.137日伸びているといえる。

factor(resid.ds)とfactor(rx)についてはexp(coef)の95%信頼区間が1を跨いでいるので,残留疾病の有無によっても生存時間に有意差はないし,治療種類間でも生存時間に有意差はないと考えられる。効果が有意でない独立変数が含まれていても,根拠があれば機械的に変数選択をしないで,モデル全体として評価することもあることに注意されたい。


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