Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.
と書かれているのには大筋同感なのだが,マスコミの世論調査の大部分はいまやRandom Digit Dialing (RDD)なので,問題はサンプルサイズではなくて(数千のサンプルサイズがあれば,95%信頼区間は数パーセント以内に収まるはず),サンプリングの偏りである。これまでも何度か書いたように,忙しい人,昼間家にいない人,電話を持っていない人,が抜け落ちてしまう。一般母集団に比べると,RDDの対象者は,圧倒的に専業主婦,退職後の高齢者の割合が高く偏るはずであり,そういう人にメディアに操作されやすい人が多いであろうことを考えれば,RDDによる「世論調査」が自作自演になるのは自明だと思う。高野さんが暗に指摘している通り,RDDは「それなりに学問的に裏付けられた(と思われている)」だけであって,実は裏付けなどない(仮にあることになっているとしても学問的には信頼性が乏しい)。ちゃんとした教科書的な世論調査の方法論は別にあって,数年前までは新聞社でも行われていたのだ。なぜほとんど行われなくなったかといえば,たぶん大きな理由は4つある。第1にRDDという尤もらしく見える代替手法が出現したこと自体,第2にRDDの方が低コストだということ,第3にRDDの方が迅速にできるということ,第4に個人情報保護との関係で住民基本台帳などの利用が難しくなったので本当のランダムサンプリングがやりにくくなったこと,である。従って,タイムリーな目立つ見出しほど売れるというインセンティブが働くとRDDに流れやすいのは市場原理により当然であり,それが昨今の「世論調査」と称するものがRDDばかりになってきた原因だろう。この流れを逆転させたいのだが,何かいい手はないだろうか。キムタク主演のドラマとかで,RDDのダメさをアピールしてくれたりすれば有効かも? と思ったりするのだが。マスコミの世論調査は、それなりに学問的に裏付けられた(と思われている)方法によって行われるけれども、そのサンプル数は数千程度にすぎない場合が多い上に回収率が低く、また別に答えたい訳でもなくその準備もない人にいきなり質問を浴びせて無理にでも答えさせるのであって、そこで採集できるのは言わば「受動的な世論」である。しかも、前稿でも述べたように、設問の表現や配列、質問前の説明の仕方、念押し・重ね聞きなどによる無理矢理の括り方等々によってマスコミにとって都合のいいようにバイアスをかけられやすい。そういうことが仮になかったとしても、しょせん世論調査が示すのは「賛成?%、反対?%」という“量”であって、例えば「小沢続投賛成」と言っても、それぞれの思いや微妙なニュアンスは一切反映されない
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