Top

個別メモ

Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.

【第1913回】 デフォルトの便利さとflexibilityのバランス（2011年6月29日）

• たけしょうのぼやき「ぼやかないつもりのメモ」の昨日のエントリで，ggplot2を使ったグラフで色の塗り分けをする例が紹介されていたが，たぶんggplot2というパッケージはデフォルト設定である程度満足できる人のために作られているので，あれだけオプション設定をする必要があるなら，標準のplot()と低レベル作図関数を組み合わせて，次のように（作成時間10分のコード：ただしpng画像ファイルを作るように書いてあるので，画面で見たい人は，実行前に最初と最後の行をコメントアウトされたし。下のコードはその2行を除いて貼り付けた）指定する方が，却って便利なのではなかろうか。画面分割して他のグラフと組み合わせたり，他のソフトにもっていくときのflexibilityは，lattice-grid系のグラフよりも，標準作図関数の方が優れているように思う（この辺りは主観だし，自分はデフォルトで背景灰色になるのが嫌でggplot2は使っていないのだが）。ちなみにこのコードのプロット記号は元図に合わせて塗りつぶし円にしたけれども，目的次第ではpch=16のところを適当なベクトルを指定して，プロット記号も変える方が見やすいかもしれない。

  par(mar=c(5,4,1,4),cex=1.6,xpd=TRUE)
  pcol <- c("blue","darkgreen","red")
  plot(wt~mpg, data=subset(mtcars,cyl %in% c(4,8)), col=pcol[ifelse(cyl==4,1,ifelse(cyl==6,2,3))],
  pch=16, xlim=c(10,35), ylim=c(1,6), frame.plot=FALSE)
  segments(2:7*5,1,2:7*5,6,lty=2,lwd=1, col="navy")
  segments(10,1:6,35,1:6,lty=2,lwd=1, col="navy")
  legend(36,4,pch=16,col=c("red","blue"),legend=c("eight","four"))

• 作り込み過ぎるとflexibilityが失われることもあり，かといってデフォルト設定があまり親切でなく，自分でちゃんとオプション指定しないときれいなグラフにならない（pyramidは少々その気あり）のもどうだかなと思うので，そのバランスが難しいところだ。
• それにしても，新幹線の中でさえ暑い。この暑さで新前橋から自転車で大学まで行くのは辛いので，バスにしてしまうかも。
• 森山和道さんの日記の昨日付けエントリに載っていたこの判決は無茶だと思う。不幸な事故なのは確かだが，少年の個人的過失に責を負わせるのは，あまりに酷だし，ましてや親の管理責任を問うのは無茶ではなかろうか（リンク先朝日新聞記事に掲載されている弁護士のコメントは「やや酷な印象」，とマイルドだが）。八十代後半でバイクに乗ること自体，事故のハイリスクだと思うのだが，その辺は斟酌なしなのだろうか（道路交通法では運転免許について，70歳以上での更新時に高齢者講習を受けることと，75歳以上での更新時に認知機能検査を受けることを義務付けているが，免許の有効期間は71歳以上で3年間，とあり，85歳でも同様なのは長すぎるのではなかろうか。とくに自動二輪の運転には四輪よりも高い認知機能と運動能力が必要だと思うので，個人的には毎年更新くらいにしてもいいと思う。むしろ，この人がバイクに乗らなくても済むようなインフラ整備が必要だという方向へ行政のかじ取りをすべきではなかろうか）。この裁判長は，もし自分の子供が同じ状況に陥った場合，自分の賠償責任を認めるのだろうか？　もし，この判決が定着してしまったら，放課後の校庭で子供たちが遊べなくなってしまう。サッカーに限らず，野球だってありうることだし，たぶんこの事例では放課後に個人的に遊んでいて起こったのだろうけれども，仮に少年野球チームでの練習中に打ったボールとかキャッチボールで暴投したボールが道路に転がって「避けようとして転倒した」事故が起こったら……などと考えたら，保護者有志が指導している社会体育は全滅だ。親に賠償させておしまい，ではなく，安全にスポーツを楽しめるような，充分に高いフェンスを備えた運動場の整備とかを進めるべきで，その意味では，遺族が賠償を求めるのは少年個人ではなく，朝日新聞の弁護士のコメントのように学校の施設管理責任か，あるいは，むしろ市町村が十分な体育施設を提供していない責任を問うのが筋ではなかろうか。
• たけしょうからコメントを貰ったので，標準グラフ作成関数で灰色背景にするコードを書いてみた。ちょっと違うがggplot2風。
• 北大の久保さんの昨日付けのぎょーむ日誌によると，Dr. Paul Murrellの"R Graphics"は2nd Editionが出たそうで，地図作図とかも入っているそうだが，lattice＋ggplot2に多くのページが割かれているような気がするので，個人的にはあまり食指が動かない。うーん，でもやっぱり買ってしまうかも。
• 昼はとよだでランチを食べながら，見波利幸『「新型うつ」な人々』日経プレミアシリーズ，ISBN 978-4-532-26119-1（Amazon | bk1 | e-hon）を読む。著者は医師でなくコンサル業界の人だが，企業で実際にカウンセラー業務を通して多くの「新型うつ」症例に出会っているだけでなく，カウンセラーの養成などにも携わっているそうだ。途中まで読んだ印象では，多くの経験といくつかの文献から，「新型うつ」について，かなり納得のいくパースペクティブを提供してくれていると思った。従来型うつと適応障害とパーソナリティ障害という３つの病態にまたがる人を指して精神科医夏目誠氏が「現代型混合性うつ病」と呼んだ病態が「新型うつ」に対応するという指摘はもっともらしい。そのことから，新型うつの増加は，子供の遊び方やコミュニケーションの変化によって社会的スキルを身につける機会が減少したことと，かつての教育は規律を重んじ社会的なタガをはめることを目的にしていたので，ある意味ではパーソナリティが矯正される機会があったけれども，個性を重んじるゆとり教育ではパーソナリティを矯正しないので，極端なパーソナリティが成人になっても維持される人が多くなり，その人たちが厳しい社会に直面して新型うつになる可能性がある，という議論（そこまで明記していないが，ゆとり教育に触れたくだりは，たぶんそういう主旨なのだと思った）も，ある程度当たっていると思う。この現状分析に基づき，ではどうしたらいいのか，という議論が本書後半でされているようだ。復路新幹線で読了するつもり。
• 予定通り読了。パーソナリティ障害への対処が本書中盤の事例にいくつも出てきたが，これは一般化は難しいし，高度なスキルが必要なので，著者が，精神医学的な知識だけでなく，３つの領域にまたがって「新型うつ」をきちんとアセスメントできる人を各企業で育成すべきと提言しているのは，正しいと思う（ある意味セールストークかもしれないが）。本書では触れられていないが，これは，たぶんスクールカウンセラーにも必要なスキルなのではなかろうか。それだけで終わってしまうと，今「新型うつ」になっていたりなりかかっていたりする人には役に立たないが，本書の最終章で書かれていたのは，おそらく適応障害の部分でストレスへの対処法であり，こちらは万人に役に立つと思われた。曰く，(1)落ち込んだ出来事があったら紙に書き，その時自分がどう感じたかも書く，という作業を毎日最低１つ書き続けると，物事の捉え方の癖，言いかえると「認知の歪み」がわかるという「コラム法」，(2)感情は認知の仕方によって決まることを認識すること，(3)ストレス耐性を高めるためには副交感神経系の活性化が必要で，そのために，「よく眠る」「リラックスする時間をとる」「運動習慣をつける」「一日三食しっかり食べる」「思い切り笑って感情を解放する（但し怒りの感情は縄跳びを3分やって発散する）」「自然に親しむ」。これは良く言われていることで，まあ当たり前かと思うが，「新型うつ」になってしまっていたり，なりそうな人が予防的に実践することを心がけるには実行しやすい目標であろう。自分は日頃からあまりストレスを感じない人間だなあと思っていたが，図らずもこれはほぼ全部（睡眠時間は足りないが）自然に実践していることだった。総体として，実践的な良書だと思う。

▼前【1912】（疫学勉強会の日（2011年6月28日） ）　▲次【1914】（6月末日（2011年6月30日） ）　●Top

△Read/Write COMMENTS

Notice to cite or link here | [TOP PAGE]